【ただいま読書中】

おかだ 外郎という乱読家です。mixiに書いている読書日記を、こちらにも出しています。

金遣い

2012-03-30 18:19:07 | Weblog

 資本主義社会では「金持ち」が“尊敬”されます。だけどそのお金を死蔵されてしまうのは資本主義でも何主義でも、社会にとって良いことではありません。お金は「使ってナンボ」ですから。だから、社会の価値観として、(大量の金を所有しているだけの)「金持ち」ではなくて(大量の金を継続的に使う)「金遣い」の方を“尊敬”する、としたら、尊敬を得る人にとっても社会にとってもよいのではないでしょうか。昔の日本には高額納税者の番付がありましたが、それと同様に「1年間でこんなに消費した」の番付を発表して、そのトップは皆でほめたたえると、そのうち使った金の一部は“回りもの”としてこちらの懐に入ってくるかもしれません。逆に、大量に死蔵する人間は皆で軽蔑しましょう。「そんなの江戸っ子の風上にもおけねえ」……というのは、江戸っ子以外に対してはどう言えばいいのかな?

【ただいま読書中】『ノーチラス号北極潜航記/大西洋横断一番乗り』ウィリアム・アンダーソン/チャールズ・リンドバーグ 著、 偕成社、1970年、430円

 急にノーチラス号の北極潜航の記録を読みたくなったのですが、とりあえず図書館にあったのはこの本だけだったので、子供向けであることには目をつぶって借りてきました。
 1958年、世界初の原子力潜水艦ノーチラス号は「日光作戦」を開始しました。北極海を潜航して通過してイギリスまで、という冒険です。
 北極海の航路は、まずはイギリスが、スペインやポルトガルに対抗するために16世紀頃から開拓を始めていました。東洋を目指して、北西航路(アメリカ大陸の北を通過)と北東航路(シベリアの北を通過)への挑戦が続きましたが、ことごとく失敗。ついでオランダが挑戦しますがこれも失敗続き。ついに北東航路に成功したのは1878年スウェーデンのノルデンショルド(地質学者)によってでした。探検家たちはこんどは北極点に注目します。何人もの挑戦が続き(死者もたくさん出て)1909年アメリカの軍人ペアリーがついに北極点到達を果たします。1926年5月9日アメリカのバードが飛行機で北極点を通過、その3日後に飛行船でノルウェーのアムンゼンが北極横断に成功。1937年にはソ連のシュミットが飛行機で北極点に到達後、4人の越冬隊員を氷島に残します。彼らはそれから274日間漂流しながら研究を続けました。
 では、潜水艦は? 1931年、ヒューバート・ウィルキンスが、アメリカ海軍払い下げの老朽潜水艦「ノーチラス号」で北極横断に挑戦しました。バッテリーに定期的に充電する必要のあるディーゼル機関ですよね。浮上をする必要があるため、結局氷で船体が損傷し、探険は失敗しています。
 シアトルを出港した原子力潜水艦ノーチラス号は、深度が浅いベーリング海峡で分厚い氷に行く手を阻まれます。西がだめなら東から、とアラスカ寄りに転進。しかしそこも“ドア”は閉まっていました。アンダーソン艦長は決断します。引っ返そう、と。ノーチラス号は一度ハワイの真珠湾に戻って出直すことにします。
 そこで「茶番」が。秘密保持のため、赤道付近からやって来たことにしたのです。そこで乗組員は皆「いやあ、暑かったなあ」などと言い合います。艦内はエアコン完備なのにね。
 さあ、再チャレンジです。今回は航空偵察で氷の状態を確認してから北極圏に突入しますが、またも群氷がノーチラス号の行く手を遮ります。レーダーとソナーとテレビカメラを活用しつつ、ノーチラス号は行ったり来たりで航路を探します。しかしついに深い海へ。巡航深度は130m。ここなら水面から20mも垂れ下がっているつららのような氷も届きません。
 ノーチラス号は20ノットで快調に真北を目指します。最後に浮上してからはや62時間。ついにノーチラス号は北極点を通過しました。それは、潜水艦として初の成功であり、116人もの人間がいっぺんに北極点に存在した、という点でも初の“成功”でした。ちなみにそこの水深は4400mだったそうです。さて、次の作戦は「横断」です。目指すはグリーンランド。やっと氷の切れ目が見つかって浮上したノーチラス号は歴史的なたった3語の電報を打ちます。「ノーチラス号 北緯 90度」と。
 大した冒険ですが、私にとっては、潜水艦の名前が「ノーチラス号」であること、それだけでも十分です。『海底二万マイル』を再読したくなってきました。