またまた×2 アンヘル・ロメロ - ミューズの日記
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<あれも聴きたい、これも聴きたい> またまた×2 アンヘル・ロメロ

 アンヘル・ロメロさんが来日したので、そのアンヘルさんのちょっと前のレコードを紹介いたしまする。録音が1985年というから既に20年以上昔だけども、協奏曲が2曲。B面はご存知ヴィラ=ローボスの「ギターと小オーケストラのための協奏曲」だが、A面はというと「ラロ・シフリン」というあまり聞いたことのない作曲家のギター協奏曲が収められておりまする。(ところでこの「A面、B面」という呼び方、懐かしいなあ。最近の若いあんちゃんや娘っこは知らねぇだろうが、昔のレコードっちゅうもんには表と裏があったんよ)「ラロ」とはいってもこっちのラロ・シフリンさんは、あのヴァイオリン協奏曲「スペイン交響曲」で有名なフランス生まれの作曲家「ラロ」ではなく、映画ファンの方だったらひょっとしたらご存知かも知れないが、ハリウッドでバリバリの映画音楽の作曲家なんだねえ。(ちなみにヴァイオリンで有名な方の「ラロ」の正式名を知っとりますか?「ヴィクトール・アントワーヌ・エドゥアール・ラロ」ちゅうえりゃあ長い名前なんよ)彼の作品の中で最も有名なものといえば、彼のブルース・リーが主演したカンフー映画「燃えよドラゴン」やクリント・イーストウッド主演の「ダーティ・ハリー」、はたまたテレビ映画では「団塊の世代」のおいちゃん達だったらひところ誰でも夢中になって見た覚えのある「スパイ大作戦」のテーマ音楽があるっていえば覚えがござんしょう。

彼は1932年、アルゼンチンのブエノス・アイレスに生まれ、作曲・編曲家としてやっておったところディジー・ガレスピーに「おめぇ、こんなDo田舎でシコシコやっとらんと、こっちさこ!」とか言われてニューヨークへ連れて行かれ、それからはそのディジー・ガレスピーのジャズバンドでピアニスト兼編曲家として「おまんま」を食べ出し、その後は映画音楽の(TVも含む)作曲家としてあっちこっちから引っ張りだこの「超売れっ子」になり、そのうちそっち方面の映画には欠かせない存在になっちまったってぇわけだ。
そんなラロ・シフリンさんがどうしてクラシックのギター協奏曲なんぞを書く気になったのかは全然わかりませぬが、なにしろソリストが最近ここに頻繁に取り上げているアンヘル・ロメロさんで、指揮者が結構有名なヘスス・ロペス・コボス。その上オーケストラがロンドン交響楽団というなんとも贅沢な組み合わせ。

話は逸れるが最近のギター協奏曲もオケがすごいね。ナクソスレーベルのCDを除くとほとんどが世界一流のオケが目白押し。一頃じゃあ考げぇられねえくれぇだ。ジョン・ウィリアムスはオーマンディ指揮のフィラデルフィア管弦楽団やルイ・フレモーのフィルハーモニア管弦楽団、そしてイギリス室内管弦楽団、バレンボイム指揮ではベルリン・フィルハーモニーとも共演しておるし、ペペ・ロメロはネヴィル・マリナーのアカデミー室内管弦楽団とよく共演していることは皆さんよくご存知の通り。指揮者はいないがイェラン・セルシェルなんぞはオルフェウス室内管弦楽団やカメラータ・ベルン。ジュリアン・ブリームにいたってはジョン・エリオット・ガーディナーの指揮するモンテヴェルディ管弦楽団や、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのサイモン・ラトルの指揮したバーミンガム市交響楽団とも共演しておる。それぞれが一般のオーケストラ作品の方でおなじみのオケばっかりで、ギターも出世したもんだと嬉しい限りやんか。もっとも、むかーし昔、アンドレス・セゴヴィアが共演した「シンフォニー・オブ・ジ・エア」もあのA.トスカニーニの為に編成されたNBC交響楽団が、トスカニーニ引退後名乗っていた名称だったってことを考えりゃあやっぱりセゴヴィアさんは偉かったっちゅうことになるかなあ。

ともかく今回取り上げたアンヘル・ロメロがソロを務めるラロ・シフリンのギター協奏曲。なんとまあ珍しい曲だけども、さすが映画音楽の作曲家の手になる作品だけに、あちこちにきれいなきれいな、まさに映画の一場面を彷彿とさせるようなオケの美しい旋律がちりばめられておるんじゃが、残念ながらソロギターの担当する部分が一向に面白くもなんともないのがなんとも悲しい。かろうじて3楽章にギターのソロとしての見るべきものが見られるような気がしないでもないけども、あとは「何でギターなん?」というところばっかりで、ギター協奏曲である必要性があまり感じられない。まことに曲全体を通して「統一感」に欠けるっちゅうかなん中華・・・・。(あくまでも私の個人的な乾燥、いや、感想なんでご勘弁を)こうしてみるとあのロドリーゴのアランフェス協奏曲やテデスコの協奏曲第一番ニ長調なんかに感じる全曲に渡っての統一感っちゅうのはすごいね。オーケストラとギターとの間に密接な関係があって音楽の流れに必然性があるもんなあ。こりゃあやっぱしギター協奏曲では一流だわ。
それに比べりゃ悪いけどこのシフリンさんのコンチェルト、「器用な人がちょこちょこっと書いてみたけど・・・・」っちゅう印象がどうしても漂ってくる。それでもきれいな旋律がいっぱい出てくるので、「B級コンチェルト」としちゃあまあまあかな。

 それにしても例によって我が「アンヘル・ロメロさん」のピクニックじゃなくてテクニックはここでも冴え渡っており、写真にあるように40歳になる前くらいの若々しいさっそうとした演奏で、「胸のすくような爽快感」が存分に味わえることは間違いない。ではB面のヴィラ=ローボスはどうかっちゅうとそうやねえ、ヴィラ=ローボスさんもきっと「こんな演奏は考えてもみなかった」んじゃねえべがっちゅうような演奏っちゅうたらええか、とにかくまあ「バリバリバリバリ弾きまくり過ぎ」っちゅう感じっちゅうの?スケールもアルペジオもマシンガンのように撃ちまくるアンヘル節が炸裂だわ。カデンツァなんぞやりまくり放題。こちらとしちゃあ「あんちゃん、ちーとは情緒つうもんがあんべな?」と言いたくなるくれぇだ。やっぱしヴィラ=ローボスなんかは前にも紹介した「ローリンド・アルメイダ」のちょっと不器用さを感じさせる「ぼそぼそ」した弾き方くらいが丁度ええような気がするなあ。それにしてもこのアンヘル・ロメロさんみてぇにこんだけ弾けりゃあ何だってできるだに、なんでこう毎回毎回おんなじマシンガン撃ちまくるだかねえ?強盗が老人ホームへ押し込むのにも戦車に乗って行くみてぇな感じがするわ。もう少しかっこ良く紳士的に押し込む時だってあってもええだに。

 このレコード(LP)はある時偶然中古レコード店で見つけたもので、輸入盤なんだけども、国内盤として発売されたことがあるんかどうか記憶にない。とにかく大好きなアンヘル・ロメロさんのレコードとしちゃあ、ものすごぉ上手いけど・・・、とにかく上手いことは分かるんやけども、あんまし皆さんにお勧めできるしろものではないような気がするようなしないような・・・・。「じゃあなんでそんなもんここで紹介するんや」というお声が聞えてくるような気がするが、そこはほれ、なんじゃそのぉ、早い話が、なんだがね・・・。えーと、エート・・・・。
内生蔵 幹(うちうぞう みき)

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