このブログをご覧になっている皆さんは、ほとんどの方がご自分でギターを弾いておられる方でしょうから、楽器として見たギターのことについては、少なからず興味がおありなのではないかと思います。
ギターとの長い関わりあいの中で、多くのプロギタリストの方や製作家の方々からうかがった貴重なお話、その楽器を弾かせていただいた体験、それにプロ用の計測機器を扱うという私の仕事柄、最近何種類かの楽器の音を解析してみて確認できたことに、私自身の経験や考えをおりまぜて、今日から何回かに分け、「楽器を選ぶ上で注意しなくてはならないことは何か」、「優れたギターとはどのようなもののことをいうのか」といったことについて、お話していきたいと考えています。
しかし、お話させていただく上で、特にその音そのものに関しては、極力、具体的記述を避けるようにしました。お話が難解になるだけでなく、人の好みの問題も含んでいるため、いたずらに混乱を招くおそれがあると考えたからです。
そのあたりについては、いつかしっかりしたデータを基にお話させていただく機会もあろうかと思いますので、今回はちょっとした経験談くらいの気持ちでお読みいただければ幸いです。
<あれも聴きたい、これも聴きたい> 良い楽器とは。第1回
今までに、いろいろな方の楽器を見せていただく機会には恵まれた方だと思うが、その度にいつも気になっていることがある。
それは、それぞれの楽器の奏でる美しい音色に比べて、本当の意味での弾き易い楽器が意外と少ないということだ。
最近の楽器は大変良くできていて、粗悪な作りのものなどめったに見られなくなったが、しかし、それは、外観が美しいとか、ネックや表面板が歪んでいないとか、耐久性が良くなったなど、主に木工製品としての加工品質が良くなったに過ぎず、音楽を奏でる道具として、本当の意味で弾き易い楽器には、なかなかお目にかかることがないというのが、私の偽らざる感想だ。
やけに弦高が高く弦の張りも強くて、押さえるのにもかなりの力が必要だったり、弦長や弦幅が広く、指が届き難かったり、欲しい音量を出すのに、思いのほかパワーが必要だったりと、理由は様々だが、みな一様に弾き難いと感じるものが多いのは何故だろうか。
弦高は低ければ低いほど良いし、音量はいくら出ても出過ぎということはない。
問題は、いかに弦高が低くてもびびり難いか、そして、どれだけ大きな音が楽に出せるかということであって、びびらないけれども弦高も高いとか、力まかせに弾けば大きな音が出るというようなものは問題外なのである。
体力的にも音楽的にも、演奏者の負わなければならない負担が少ないほど良い楽器であって、弾き難い楽器を、わざわざ弾きこなそうとする必要はない。
しかも、弾き難い楽器では、左右の指や手、肘、肩などの、基本的な正しいフォームを、見付けることも、身に付けることも難しい。
また、時として良い楽器は、思いもよらない音色や表現方法を教えてくれることがある。優れた楽器は、良い教師でもあるのだ。
従って、弾き難い楽器で毎日練習するよりも、弾き易い楽器で練習した方が、遥かに上達は早い。
内生蔵 幹(うちうぞう みき)
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