音について 第2回 - ミューズの日記
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<あれも聴きたい、これも聴きたい> 音について 第2回

さて前回音は空気中を1秒間に約340m進むといいましたが、皆さんはどんな時でも音の速さは変わらないと思っていませんか。例えば水の中のことを考えてみると、音の進む速度は1秒間に約1500mとなり、時速に直すと5400キロにもなります。そしてここが重要なんですが、先ほど言った「周波数」によっても伝わる早さや伝わり方が違ってくるのです。音の伝わる速さを説明する時に「約」という言葉をつけたのはそのためです。音が皆さんの耳に到達するとき、伝わる音の周波数によってその伝わり方が全て一様ではないのです。従ってコンサートを聴きに行っても、大きな会場だと周波数の高い音から低い音まで、全て同じように音は伝わりません。そして壁や天井までの距離、そしてその材質や形状、聴衆の数やその着ている衣服などによっても反響音が大きく変化し、場所によって聞え方が大きく違ってきてしまいます。小さな会場で、しかも私達の目の前で弾いてもらうのならともかく、500人、1000人、場合によっては2000人を超えるような大きなホールともなると、聴く場所によっては低音が聴き取り難かったり、反対に高音が聴きづらかったりといったことが起こってきます。しかも高い周波数の音は音源から狭い範囲で直進しますが、低い周波数の音というのは、低くなればなるほど、水面にできた波紋のように広がりをもって伝わるという性質をもっています。これを音の「指向性」といいますが、演奏者はちゃんと弾いているのに、聴いている方には高音と低音のバランスが悪く、あまり良い演奏に聞えないというようなことを、きっと皆さんも経験されたことがあるのではないでしょうか。

元々の音に相当なパワーのあるピアノやヴァイオリン、チェロ、あるいは管楽器などでも、会場の大きさや、構造、材質といったものから受ける影響は決して少なくはありませんが、ギターほど深刻ではありません。残念ながらギターの場合は、楽器のもつパワーからいって、それらの条件はとても無視できるようなレベルではないのが正直なところです。

このように音というものは、周囲のあらゆる条件に影響されながら空気中を伝わっていくわけですから、本来であれば、ギターのようなパワーの小さい楽器の場合、あまり大きな会場で演奏を行うということに元々無理があるということになります。「ギターの音は生でないと」と言われる方がまだまだおられますが、大きな会場になればなるほど、高い音から低い音まで均一に、しかもどこに居る人にもすべて同じように伝えるということは不可能です。ギターの音が今後飛躍的に大きくなるということはあまり望めそうにありませんから、こうなると良質の拡声装置(PAあるいはSR)を使うしか方法はないのですが、そんなものの無かったはるか古、ルネッサンスやバロック、古典といった時代では、演奏者もそれぞれの楽器のもつパワーの限界をよく知っていて、お互いが音量をコントロールして合奏を楽しんでいたんでしょうね。そう考えていくと、演奏者を囲み、細大漏らさず目の当たりに音楽に浸れるミューズサロンは、ギターにとって最高の音楽環境といえますね。
内生蔵 幹(うちうぞう みき)


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