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經(たて)もなく 緯(ぬき)も定めず をとめらが
織れる黄葉(もみじ)に 霜な降りそね
=巻8-1512 大津皇子=
どれを縦糸どれが横糸ということもなく少女が織り上げたような、この美しいもみじを枯らせる霜よ、どうか降らないでくれ。という意味。
山の紅葉を、乙女たちが織る布に見立てて詠んだもので、紅葉の息を呑むような美しさを表現している。
この歌は宴席で詠んだ歌といわれているが、斎宮にいる同母姉の大来皇女に想いを馳せて詠んだものという解釈もある。
身辺に暗雲が降りかかって、その霜よ降らないでくれ、と念じているともとれる。
霜(しも)を詠んだ歌で有名な志貴皇子の歌、
葦辺行く 鴨の羽交ひに 霜降りて
寒き夕は 大和し思ほゆ =巻1-64 →万葉アルバム
この歌は霜が降り、すなわち暗雲が降りかかってきてもじっと耐えている。
志貴皇子は閑職にじっと耐えて生涯を終えたが、その後自分の子が天皇となった。
一方大津皇子の方は謀反の罪を着せられて死罪となるのである。
霜を詠んだ後、結果として明暗が分かれたことに、壮大なドラマを感じる。
この万葉歌碑は北山之辺の道にある紅葉の名所の正暦寺にある。
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