飛鳥への旅

飛鳥万葉を軸に、
古代から近代へと時空を越えた旅をします。
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万葉アルバム(関東):茨城県、下妻市 糸繰川堤防

2014年07月27日 | 万葉アルバム(関東)


新治(にひばり)の 鳥羽の淡海(あふみ)も
秋風に 白波立ちぬ
筑波嶺(つくはね)に 登りて見れば
   =巻9-1757 東歌=


(大意) 草枕の旅の憂いを慰めてくれるかと、筑波嶺に登りって見ると、ススキの穂が散る師付の田居を雁が来て寒々と鳴いていた。新治の鳥羽の湖も、秋風に白波が立っていた。筑波嶺のよい景色を見ていたら、長い日々思い悩み重ねてきた憂いが止んでいた。

「新治」は、常陸国の郡名で、茨城県真壁郡・下妻市、西茨城郡西部の地。筑波山の西北方。しかし、ここでは、新しく土地を開墾した田の意をいう。沼地であったのを田んぼに開拓したのだろう。
「鳥羽の淡海」は、筑波山の西麓にあった湖。小貝川近くの沼地を鳥羽の淡海というらしい。

 この歌碑は巻9-1757 長歌から抜粋した一部をのせている。以下に巻9-1757 長歌全文を記す。
 
筑波山(つくはのやま)に登れる歌一首 并せて短歌
 草枕(くさまくら) 旅の憂(うれ)へを
 慰(なぐさ)もる 事もありやと
 筑波嶺(つくはね)に 登りて見れば
 尾花散る 師付(しづく)の田居(たゐ)に
 雁(かり)がねも 寒く来(き)鳴きぬ
 新治(にひばり)の 鳥羽の淡海(あふみ)も
 秋風に 白波立ちぬ
 筑波嶺の よけくを見れば
 長き日(け)に 思ひ積み来(こ)し
 憂へは息(や)みぬ


下妻市比毛の小貝川付近から眺めた筑波山


この万葉歌碑は下妻市比毛・糸繰川堤防に立っている。


歌碑<クリックで拡大>

万葉アルバム(関東):群馬県、高崎市 高崎自然歩道 新2地点

2014年07月20日 | 万葉アルバム(関東)


巌(いわほ)ろの 岨(そひ)の若松(わかまつ) 限りとや
君が来まさぬ 心(うら)もとなくも
   =巻14-3495 作者未詳=



 (大きな岩の重なる断崖に生える若松のように)これを限りと、貴方はいらっしゃらないのでしょうか。私は待ち遠しく思っています。という意味。

「巌(いはほ)」は大きな岩、又は、伊香保の訛り説も。
「岨(そひ)」は急斜面。
「君が来まさぬ」は、君+格助詞ガ+来(ク)の連用形+尊敬の補助動詞マスの未然形+打消しのズの連体形。
「心(うら)もとなくも」は、待ち遠しいことに。


<クリックで拡大>

 この万葉歌碑は群馬県高崎市の高崎自然歩道、マップ新2地点:高崎自然歩道の終盤、金井沢川の小橋渡って川沿いに、すこし行ったところに建っている。
マップ新1地点から続く歌碑5点は、この地に放置され倒れていたものを、最近になって整備して設置されたものだという。入手した高崎自然歩道マップ上には歌碑の案内が示されておらず、私が見つけてマップ上に新1地点から新5地点として記した。

   →高崎自然歩道マップはこちらのブログを参照

万葉アルバム(奈良):奈良市、佐保川・夢窓庵 千鳥鳴く・・・

2014年07月13日 | 万葉アルバム(奈良)


千鳥鳴く 佐保の河門(かわと)の 清き瀬を
馬うち渡し 何時(いつ)か通はむ
   =巻4-715 大伴家持=


 千鳥の鳴く佐保川の渡しの清らかな瀬を、馬を渡して、私はいつか通うことだろう。という意味。

現代の佐保川は街中を流れるコンクリートで護岸工事された河川だが、万葉の当時は清冽な浅瀬の多い川であり、川に沿って柳の並木が続き、千鳥や蛙(かわず)の声が絶えなかったことが、万葉の歌から想像される。

大伴家持の祖父にあたる安麻呂は、平城京遷都と共に佐保に宅地を与えられ、佐保大納言と称された。その佐保大伴家を引き継いだ家持は、平城京が放棄される晩年の頃まで、この佐保の地に住み続けたといわれている。


万葉歌碑<クリックで拡大>
この万葉歌碑は、奈良市法蓮町の佐保川の河辺に店を構える日本料理夢窓庵の入口に立っている。
この辺りからは旧家の立ち並ぶ法蓮町で万葉の時代には貴族の邸宅があったところ。大伴一族の邸宅もこの近くにあったようだ。


万葉アルバム(関東):群馬県、高崎市 高崎自然歩道 新1地点

2014年07月06日 | 万葉アルバム(関東)


一嶺(ひとね)ろに 言はるものから 青嶺(あおね)ろに 
いさよふ雲の 寄そり妻はも
   =巻14-3512 作者未詳=



 あの娘とは一つ山の仲だと、世間は言っているものの、いざ俺と寝ろと云ったら、青い嶺にいさよう雲のようにためらっている娘、あの寄そり妻よ。という意味。

「一嶺ろ」:「嶺」に「寝」の意をにおわす。
「青嶺ろに」:「我を寝ろ」の意をかける。
「寄そり妻」:世間の人が噂で自分とくっつけてしまっている妻。
「はも」:眼前にないものを思いやる詠嘆。
       <新潮日本古典集成より>


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 この万葉歌碑は群馬県高崎市の高崎自然歩道、マップ新1地点:小橋の上に建っている。(高崎自然歩道の終盤、金井沢川にぶつかる地点、金井沢川にかかる小橋をすこし上ったところ)
マップ新1地点から続く歌碑5点は、この地に放置され倒れていたものを、最近になって整備して設置されたものだという。入手した高崎自然歩道マップ上には歌碑の案内が示されておらず、私が見つけてマップ上に新1地点から新5地点として記した。

   →高崎自然歩道マップはこちらのブログを参照