飛鳥への旅

飛鳥万葉を軸に、
古代から近代へと時空を越えた旅をします。
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万葉アルバム(奈良):奈良市、西方寺

2014年06月29日 | 万葉アルバム(奈良)


瓜(うり)食(は)めば 子ども思(おも)ほゆ
栗食めば まして偲(しの)はゆ
何処(いづく)より 来(きた)りしものぞ
眼交(まなかひ)に もとな懸(かか)りて
安眠(やすい)し寝(な)さぬ
   =巻5-802 山上憶良=

銀(しろかね)も 金(くがね)も玉も 何せむに
勝(まさ)れる宝 子に及(し)かめやも
   =巻5-803 山上憶良=



(巻5-802)
瓜を食べると子供のことが思われる。栗を食べるとさらにいっそう偲ばれる。いったい、子供というのはいかなる因縁によって来たものだろうか。目の先にちらついて安眠させてくれない。
(巻5-803)
銀も金も玉もなんの役に立とう。優れた宝も、子供に及ぶことなどあろうか。

お馴染みの歌である。
山上憶良は奈良時代の歌人で、遣唐使として渡唐、後に筑前守となる。「貧窮問答歌」に見られるような、人生の苦悩、社会の階級的矛盾を歌った。


万葉歌碑(表)
巻5-802:瓜食めば・・・の長歌が万葉仮名で刻まれている。 


万葉歌碑(裏)
巻5-803:銀も金も玉も・・・反歌が万葉仮名で刻まれている。

万葉学者犬養孝氏の筆による歌碑である。

この万葉歌碑は、奈良市油阪町434 にある西方寺の境内に立っている。
西方寺は、浄土宗で南都総墓所であり、境内に対面する、みてござる観音とまんだら坊がユニークな寺院でもある。

万葉アルバム(関東):群馬県、高崎市 高崎自然歩道 27地点

2014年06月22日 | 万葉アルバム(関東)


伊香保風 吹く日吹かぬ日 ありといえど
吾が恋のみし 時なかりけり
   =巻14-3422 作者未詳=



 伊香保から吹いてくる風さえ吹いて来る日もあれば、吹かぬ日もあります。でも私があなたを想う気持ちは四六時中、絶えることはありません。という意味。

「伊香保風」とは現在の赤城颪、榛名颪の空っ風のことで、上州名物空っ風は昔も吹いていたのである。「時無かりけり」は、いつと定まった時がないよ、の意。

東歌にしては方言もなく非常にわかり易い歌である。風と恋との対比が一途でおおらかさを感じさせる。


万葉歌碑篆刻
 この万葉歌碑は群馬県高崎市の高崎自然歩道、マップ27地点に建っている。

万葉アルバム(関東):群馬県、高崎市 高崎自然歩道 26地点 夕闇は・・・

2014年06月15日 | 万葉アルバム(関東)


夕闇は 道たづたづし 月待ちて
行かせ吾が背子 その間にも見ん
   =巻3-709 豊前国の娘子、大宅女=


 夕闇は路が確かではありません。月が出るのを待ってお出かけなさい。貴方。その間、貴方を見ていたいのです。という意味。

作者は豊前国(とよのみちのくちのくに)の娘子(をとめ)、大宅女(おほやけめ)。
豊前国は現在の福岡県西部から大分県北西部。大宅女は遊行女婦(うかれめ)ではないかとみられる。
大伴家持が酒宴の席で何人かの遊行女婦と交歓した歌が巻3にのっている。その中のひとつ。

「たづたづし」は「たどたどしい」。「行かせ」は行クの尊敬語イマスの命令形。


高崎自然歩道、マップ26地点付近
 この万葉歌碑は群馬県高崎市の高崎自然歩道、マップ26地点に建っている。

万葉アルバム(関西):和歌山県、和歌山市 番所庭園

2014年06月08日 | 万葉アルバム(関西)


紀伊国(きのくに)の 雑賀(さひか)の浦に 出で見れば
海人(あま)の燈火(ともしび) 波の間ゆ見ゆ
   =巻7-1194 藤原卿=


 紀伊国の雑賀の浦に出てみると、海人の灯す漁火(いさりび)が波間にチラチラと見え隠れして見えるよ。という意味。

藤原卿が誰を指すのか諸説あるが、藤原麻呂(まろ)が有力とみられる。
藤原鎌足の子どもが不比等(ふひと)、その子どもが4人おり(藤原四兄弟)、麻呂はその一人。紀伊国行幸にお供して、玉津島滞在中のある日、雑賀の浦の夜景に見入っていた。真っ暗で静寂な海のかなたに海人の灯す漁火が見えるのをじっとながめ、故郷大和への思いをも入れこめたのだろうか。


番所庭園(ばんどこていえん)
和歌山市雑賀崎の番所の鼻に番所庭園がある。
紀伊藩は海の防備見張りのため遠見番所を設けた。米国ペリーの来航を機に、庭園内にお台場が構築された。


番所庭園からの眺め<クリックで拡大>
番所庭園からは目の前に双子島(ふたごじま)、北方に加太、友が島(万葉の妹が島)、西方はるかに淡路島、南方遠くに、下津、藤白坂、名高浦と望むことができる。素晴らしい眺望を楽しむことができる場所である。


この万葉歌碑は雑賀崎の番所庭園(ばんどこていえん)に立っている。

万葉アルバム(関東):群馬県、高崎市 高崎自然歩道 25地点 上毛野・・・

2014年06月01日 | 万葉アルバム(関東)


上毛野(かみつけの) 佐野の茎立(くくたち) 折りはやし
吾は待たむゑ 今年(ことし)来(こ)ずとも
   =巻14-3406 作者未詳=


 上野(かみつけ)の佐野の、菜を折って、料理して、私は(いつまでも)待っていますわ、たとえ今年は、あなたがいらっしゃらなくても・・・。という意味。

「くく‐たち」【茎立ち】「くく」は茎の意。カブ、アブラナなどの野菜。また、薹(とう)のたった野菜。
「はやし」は、包丁で切ったりして料理すること。


<あぶら菜>
「くくたち」(万葉表記  九久多知 ):アブラナ科の菜葉菜の総称か。
茎立は、春早く薹の立ったカブやアブラナなどを言い、古代では重要な食料だった。
現在でも”あぶら菜”を”くきたち菜”として販売しているところがある。
雪解け後に伸びてくる柔らかい茎とつぼみはやわらかくボキっと折って、お浸し、和え物、煮浸しなどに利用する。


万葉歌碑篆刻<クリックで拡大>
 この万葉歌碑は群馬県高崎市の高崎自然歩道、マップ25地点に建っている。