飛鳥への旅

飛鳥万葉を軸に、
古代から近代へと時空を越えた旅をします。
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万葉アルバム(中部):長野県、千曲市戸倉 戸倉支所前歩道 春は萌え・・・

2012年12月17日 | 万葉アルバム(中部)

春は萌(も)え 夏は緑に 紅(くれなゐ)の
まだらに見ゆる 秋の山かも
   =巻10-2177 作者未詳=


 春は草木が萌え、夏は緑に、今は紅のまだらに見える秋の山だなあ。 という意味。

山が「春・夏・秋」それぞれに趣のある色に変わっていく様子を詠んだものだ。
日本の美しい四季は万葉時代も現代も変わらない。それを愛でる心も不変である。

「萌え」=春に木々がいっせいに芽吹き初める状態。
「紅のまだら」=紅葉まっさかりという状態。


戸倉支所前の歩道の歌碑とあじさいの花

 この万葉歌碑は千曲市戸倉の千曲市役所戸倉支所前の歩道に全部で4基置かれているうちのひとつ。歩道の先に千曲川にかかる大正橋がある。正面奥の高い山が伝説の舞台である姨捨山(おばすてやま)。

万葉アルバム(関東):千葉県、佐倉市 西印旛沼畔

2012年12月03日 | 万葉アルバム(関東)

潮船の 舳越(へこ)そ白波 にはしくも
負ふせたまほか 思はへなくに
   =巻20-4389 丈部直大麻呂=


 潮船の舳先を越して白波が急に来るように、にわかに命じなさるものだなあ。思いもかけなかったのに。という意味。

註に、右一首印波郡(いにはのこほり)の丈部直大麻呂(はせつかべのあたひおほまろ) とあり、地元印旛沼付近に住んでいて防人として出立するときに作ったものである。「直」という身分は防人の庶民たちをまとめる地位にあった上司である。上からの命に従わなければならない辛さが垣間見える。


 この万葉歌碑は、千葉県佐倉市西印旛沼畔(佐倉市臼井)のサイクリングロード上で、
舟戸大橋から東へ1Km程歩いたところに建っている。(写真右奥の白いのが歌碑)


歌碑の右に大麻呂の歌を解説した石盤があり、解説には以下のように記されている。
”印旛郡出身の防人(古代に唐・新羅の侵攻を防ぐために九州地方に配備された兵士で主に東国から徴発された)の歌です。万葉集は日本最古の歌集」ですが、全四千五百余の中で佐倉市周辺の出身の人の歌はこの一首だけです。そこで郷土の先人の心を伝えるために、公益信託佐倉街づくり文化振興臼井基金の助成を得て、歌碑を建立しました。
 平成四年三月 佐倉万葉の□□の会”