飛鳥への旅

飛鳥万葉を軸に、
古代から近代へと時空を越えた旅をします。
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万葉アルバム(奈良):山の辺、穴師相撲神社

2011年03月28日 | 万葉アルバム(奈良)

巻向の 檜原もいまだ 雲居ねば
小松が末ゆ 沫雪流る
    =巻10-2314 柿本人麿歌集=


巻向の桧の原にまだ雲がかかっていないのに、松の枝先を沫(泡)雪が流れるように降っている。という意味。

雲も出ていないのに思いがけなく雪が降ってきた驚きと喜びをすなおに歌っている。
万葉学者・伊藤博氏は、「調べは雪の流れに融けあい表現の神秘すら感じさせる、人麻呂声調の極地」と絶賛、小説家杉本苑子さんも、「声に出して誦(ず)したい作品群中でも特に流麗な一首。このような作品には訳など無用なもの」と、最大級の賛辞を送っている。

桜井市穴師付近が巻向の地といわれている。
この万葉歌碑は穴師の兵主相撲神社に建っている。第11代・垂仁天皇(すいにん)の7年7月7日、ここで野見宿禰(のみのすくね)と当麻蹴速(たいまのけはや)が戦った国技相撲の発祥地。野見宿禰が当麻蹴速のあばら骨を踏み砕き、また腰を踏みくじいて殺してしまい、当麻蹴速の土地は没収されて野見宿禰に与えられた、と日本書紀に記されている。

万葉歌碑マップ探訪:奈良 山辺の道(桜井編) 万葉歌碑群

2011年03月21日 | 万葉歌碑マップ 探訪

(山辺の道(桜井編)地図:クリックすると拡大表示します)

 天理から続く山辺の道。桜井市に入ると巻向山・三輪山の山裾の道が続く。
大神神社に至るまで今回再訪した。(2010/12/23)
桜井市の金屋・初瀬方面の万葉故地は別のグループとし、将来訪問したいと考えている。


1.穴師 景行陵南
  味酒 三輪の山 あをによし 奈良の山の
  山の際に い隠るまで・・・
  三輪山を しかも隠すか 雲だにも
  心あらなも 隠さふべしや 巻1-17・18 額田王
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2.穴師 兵主神社・相撲神社
  巻向の 檜原もいまだ 雲居ねば
  小松が末ゆ 沫雪流る 巻10-2314 柿本人麻呂
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3.穴師 穴師坐兵主神社
  天雲に 近く光りて 鳴る神の
  見れば畏し 見ねば悲しも 巻7-1369 作者未詳
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4.穴師 堀井氏東側植込み
  ぬばたまの 夜さり来れば 巻向の
  川音高しも あらしかも疾き 巻7-1101 柿本人麻呂
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5.穴師 兵主神社南
  みもろの その山なみに 子らが手を
  巻向山は 継ぎしよろしも 巻7-1093 柿本人麻呂
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6.箸中車谷 穴師川沿い
  巻向の 山辺響みて 行く水の
  水沫のごとし 世の人我れは 巻7-1269 柿本人麻呂
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7.茅原 穴師川近く
  三輪山の 山辺真麻木綿 短木綿
  かくのみからに 長くと思ひき 巻2-157 高市皇子
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8.茅原 桧原神社近く
  いにしへの 人の植ゑけむ 杉が枝に
  霞たなびく 春は来ぬらし 巻10-1814 柿本人麻呂
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9.茅原 井寺池近く
  いにしへに ありけむ人も 我がごとか
  三輪の檜原に かざし折りけむ 巻7-1118 柿本人麻呂
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10.茅原 井寺池中央堤
  香具山は 畝傍を愛しと 耳成と 相争ひき
  神代より かくにあるらし いにしへも
  しかにあれこそ うつせみも 妻を争ふらしき 巻1-13 天智天皇
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11.茅原 井寺池北岸
  みもろは 人の守る山 本辺は
  馬酔木花咲き 末辺は 椿花咲く
  うらぐはし 山ぞ 泣く子守る山 巻13-3222 作者未詳
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12.茅原 玄賓庵近く
  山吹の 立ちよそひたる 山清水
  汲みに行かめど 道の知らなく 巻2-158 高市皇子
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13.三輪 大神神社
  味酒 三輪の山 あをによし 奈良の山の
  山の際に い隠るまで・・・
  三輪山を しかも隠すか 雲だにも
  心あらなも 隠さふべしや 巻1-17・18 額田王
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<今回未訪問歌碑>


14.箸中車谷 堀井氏宅前庭
  あしひきの 山かも高き 巻向の
  崖の小松に み雪降りくる 巻10-2313 柿本人麻呂


15.箸中車谷 堀井氏宅前畑地
  あしひきの 山川の瀬の 鳴るなへに
  弓月が岳に 雲立ちわたる 巻7-1088 柿本人麻呂


16.箸中車谷 穴師川沿い
  穴師川 川波立ちぬ 巻向の
  弓月が岳に 雲居立てるらし 巻7-1087 柿本人麻呂


17.茅原 井寺池北・桧原台地
  鳴る神の 音のみ聞きし 巻向の
  檜原の山を 今日見つるかも 巻7-1092 柿本人麻呂


18.三輪 大神神社宝物殿の右側
  味酒 三輪の社の 山照らす
  秋の黄葉の 散らまく惜しも 巻8-1517 長屋王


19.三輪 平等寺
  我が衣 色どり染めむ 味酒
  三室の山は 黄葉しにけり 巻7-1094 柿本人麻呂



万葉アルバム 花、おもいぐさ(ナンバンキセル)

2011年03月14日 | 万葉アルバム(自然編)

道の辺(へ)の 尾花が下の 思ひ草
今さらさらに 何をか思はむ
   =巻10-2270 作者不詳=


道のほとりの尾花(ススキ)の陰の思い草ではないか。今さら何を思い迷うことがありましょうか。私はあなたの愛を信じ、あなた一人を頼りに思っております。という意味。

 「思ひ草」の名は、横向きのややうつむきかげんに咲く花を、もの思いにしずむ佳人のさまに見立てたものだと思う。ススキなどの根に寄生してひっそりと咲くこの花の生態から、人知れずひとりひそかに思い悩む女の姿が浮かぶようだ。万葉集で「思ひ草」が詠まれているのはこの1首だけである。

 「思ひ草」 南蛮煙管(ナンバンキセル) ハマウツボ科 ススキなどの根にはえる。花の形がその名の通りたばこのパイプつまり煙管の雁首にあたるところが花で別名を南蛮煙管(ナンバンキセル)とも呼ばれている。

 この万葉歌碑は名古屋の東山植物園の万葉の散歩道に立っている。(2010/12/24写す)




万葉アルバム(奈良):山の辺、石上神宮外苑公園

2011年03月07日 | 万葉アルバム(奈良)

石上(いそのかみ) 布留(ふる)の神杉 神びにし
我れやさらさら 恋にあひにける
   =巻10-1927 作者不詳=


石上の布留にある神杉のように「神々しくなった私」だが、今新しい恋に出会ってしまった、という歌。

「神々しくなった私」とは、年老いてしまった男性をさすのか、あるいは神々しくなった巫女である女性をさすのか、二通り考えられると思うが、石上神宮の凛とした神杉を見上げていると、「私」とは男性だろうと確信できる。

この歌碑は天理市杣之内町の石上神宮外苑公園に建っている。