飛鳥への旅

飛鳥万葉を軸に、
古代から近代へと時空を越えた旅をします。
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万葉アルバム(関西):和歌山県、和歌山市 紀三井寺

2013年10月26日 | 万葉アルバム(関西)


名草(なぐさ)山に 言(こと)にしありけり 我(あ)が恋ふる
千重(ちへ)の一重(ひとへ)も 慰めなくに
   =巻7-1213 作者不詳=


 名草山は絶景だなあ、でも「なぐさ」は言葉だけだったかな、私の恋の苦しさの千の一つも慰めてくれなかったもの。という意味。

「名草」掛詞「慰」。なぐさ【慰】〔名〕人の心をなごやかに静まらせるもの。気をまぎらわせるもの。なぐさみ。なぐさめ。
「言にしありけり」:(「し」は強意の助詞)言うだけで実がない。有名無実だった。


紀三井寺
和歌の浦の絶景を望む景勝地に建っており、春は早咲の桜の名所として名高い。西国三十三所観音霊場第2番目の札所である。万葉集にも登場する名草山。和歌浦の対岸にある古くからの代表的なゆったりした山(標高230m)。金剛宝寺護国院(紀三井寺)はその名草山の中腹にある。紀三井寺の寺名のおこりは寺の境内に清浄水、楊柳水、吉祥水の三霊水があり、近江の三井寺と区別して紀三井寺とよぶようになったといわれている。

この万葉歌碑は、和歌山県和歌山市の紀三井寺、本堂前に置かれている。



紀三井寺観音堂から望む和歌の浦<クリックで拡大>



紀三井寺から車で15分程で和歌の浦に着き、振り返ると和歌の浦の東方に名草山がある。
高さは228㍍の小高い山であるが、中腹には西国三十三所第二番札所紀三井寺がある。

万葉アルバム(関東):茨城県、下妻市 大宝八幡宮/さ百合の花

2013年10月23日 | 万葉アルバム(関東)


筑波嶺の さ百合の花の 夜床にも
愛(かな)しけ妹ぞ 昼も愛しけ
   =巻20-4369 防人の歌=


筑波山の小百合の花の夜床、そこでも愛しい妻は、昼でも愛しいよ。という意味。

防人として出発した男が後に残した妻を思慕する歌。夜の床のいとしい妻を思い出し、昼は昼でいとしいと感情を高ぶらせている。大らかな愛に溢れた歌で、その夜床を筑波山に咲く百合の花のようだと回想し妻のいとしい姿を重ねている。


 この万葉歌碑は茨城県下妻市の大宝八幡宮の境内、鐘楼の正面の位置に置かれている。
同じさ百合の花の万葉歌碑が境内の別の場所にある。


万葉歌碑は次の万葉仮名で刻まれている。
  都久波祢乃 佐由流能波奈能 由等許尓母 可奈之家伊母曽 比留毛可奈之祁

裏面   建立者 茨城県下妻市下妻戌431 万葉東歌研究会長 大木昇・百合子
           揮毫  文化功労者 国文学者 犬養孝
           監修  大阪府堺万葉歌碑の会代表 沢田富美子
           平成二十二年七月二十五日






万葉アルバム(関東):茨城県、下妻市 大宝八幡宮/筑波嶺の さ百合

2013年10月06日 | 万葉アルバム(関東)


筑波嶺の さ百合の花の 夜床にも
愛(かな)しけ妹ぞ 昼も愛しけ
   =巻20-4369 防人の歌=


筑波山の小百合の花の夜床、そこでも愛しい妻は、昼でも愛しいよ。という意味。

防人として出発した男が後に残した妻を思慕する歌。夜の床のいとしい妻を思い出し、昼は昼でいとしいと感情を高ぶらせている。大らかな愛に溢れた歌で、その夜床を筑波山に咲く百合の花のようだと回想し妻のいとしい姿を重ねている。

万葉集には「かなし」という言葉が114語あり、悲哀、愛(かな)し=いとしい、懐古 、孤独、孤愁 と言った意味に使われているが、
この歌のように「愛(かな)し=いとしい」として用いられているのが一般的のようだ。

 この万葉歌碑は茨城県下妻市の大宝八幡宮境内の、
神楽殿と宝物殿のあいだに、巻9-1757/1758の万葉歌碑と共に置かれている。