飛鳥への旅

飛鳥万葉を軸に、
古代から近代へと時空を越えた旅をします。
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万葉アルバム 花、すもも

2011年07月27日 | 万葉アルバム(自然編)

わが園の 李(すもも)の花か 庭に降る
はだれのいまだ 残りたるかも
    =巻19-4140 大友家持=


うちの庭が白く見えるのは、スモモの花が散っているからか、それとも、雪が残っているのだろうか。という意味。

花の白さを庭の残雪にたとえたものと思われる。

「はだれ」は、ハラハラと降る雪のこと。

大友家持が高岡の地で詠んだ歌。前年に,都に帰り,妻を伴って高岡に戻った頃の歌である。

「すもも」は、中国原産の落葉高木で、古くから日本へ渡ってきたバラ科の植物。現在は,広く果樹として栽培されている。春に白色の花が咲き、秋に果実は赤紫色または黄色に熟し酸味はあるが食用にできる。スモモの名は、「すっぱいモモ」から付けられた。



こちらの万葉歌碑は、奈良県橿原市にある万葉の森に置かれているもの(2011/11/14写す)。

万葉アルバム(奈良):山の辺、井寺池

2011年07月20日 | 万葉アルバム(奈良)

みもろは 人の守る山
本辺は 馬酔木花咲き
末辺は 椿花咲く
うらぐはし 山ぞ 泣く子守る山
   =巻13-3222 作者未詳=


三諸は(三輪山)人がみだりに立ち入ることなく、大切に守ってきている山である。麓のあたりにはあせびの花が咲いており、山頂のあたりは椿の花が咲いている。泣く子を守るように、人があれこれ気を使って、守っているこの山は、まことに美しい山だ。
という意味。

五・三・七音句で結び、古い謡い物の型を踏まえている。
「うらぐはし」、「うら」は心、「くはし」は霊妙な美しさを表す。
心にしみて美しく思われる、の意。
「泣く子」、「守る山」を強調するために置いたことば。
            -----新潮日本古典集成 万葉集-----

この万葉歌碑は山之辺の道の井寺池北岸に立っている。
この場所から三輪山を間近に望むことができる。        

万葉アルバム(関東):茨城、筑波山

2011年07月13日 | 万葉アルバム(関東)

筑波嶺(つくばね)を 外のみ見つつ ありかねて
雪消(ゆきげ)の道を なづみ来(け)るかも
   =巻03-0383 丹比真人国人=


名高い筑波の嶺をよそ目にばかり見ていられなくて、雪解けの道に足をとられながら、やっと今この頂までたどりついた、という意味。

巻3-382の「筑波の岳に登りて」の長歌に続く反歌である。 

丹比真人国人(タヒノマヒトクニヒト)とはどういう人か、出自は不明。従四下などの官位についている。遠江守(とおとうみのかみ)=静岡県の大井川の西部一帯の国司として赴任していた。橘奈良麿の乱に連座し、伊豆に流された。橘諸兄と交流があったという。
万葉時代の都人にとって遥かな東国の果てであった筑波山が、当時すでに伝説の山であり、名所でもあった。

万葉集には四首掲載されている。
飛鳥を歌った次の歌がある。
巻8-1557: 明日香川行き廻る岡の秋萩は今日降る雨に散りか過ぎなむ

この万葉歌碑は筑波山神社境内に置かれているものである。

万葉アルバム(奈良):山の辺、桧原神社

2011年07月06日 | 万葉アルバム(奈良)

いにしへの 人の植ゑけむ 杉が枝に
霞たなびく 春は来ぬらし
   =巻10-1814 柿本人麻呂=


昔の人が植えたという杉の枝に霞がたなびいます、春が来たのでしょう。という意味。

杉は間伐をして、枝打ちをしなければ大きく真っ直ぐに育たないことからわかるように、いにしえより杉の植林が行われていたのである。

「いにしえの・・」見事な杉木立を古人の植林の結果とみたてて表現している。

 この万葉歌碑は山之辺の道・茅原の桧原神社近くに立っている。

万葉アルバム 樹木、このてがしわ

2011年07月02日 | 万葉アルバム(自然編)

千葉の野の 児手柏の ほほまれど
あやに愛しみ 置きて誰が来ぬ
   =巻20-4387 大田部足人=


千葉の野の,このてがしわのようにういういしいが,なんとも痛々しくて,そのまま手を触れないで,野山を越えてはるばるやって来たよ。という意味。

この歌は、下総国千葉郡(ちばのこほり。今の千葉県千葉市あたり)の大田部足人(おおたべのたるひと)という人が詠んだ歌。天平勝宝7年(755年)2月、防人として筑紫に派遣された。好きだった女性に手も触れずに旅立ったようだ。
「ほほまれど」は「ふふまれど」の東国訛り。蕾のままであるが、の意。
「千葉の野」は現在の千葉市街をとりまく一帯の総称。

児手柏(コノテガシワ)、鑑賞用として公園や庭などに植えられるヒノキ科の常緑樹。木の高さは10~15m。葉は魚の鱗(うろこ)のように生えていて,このような葉をもつものはほかにヒノキ,クロベ,イブキ等がある。また木の葉は裏表の区別がなく,次の年には葉は緑色から褐色に変わる,さらに次の年には剥がれ落ちる。花は雄花が葉の先端につき,褐色。雌花は緑色で枝と葉の間くらいにつく。

中国北部,西部が原産で日本には江戸時代に持ち込まれたという説もあり、万葉の頃には、この樹木はなく別のものであったかもしれず、ブナ科のナラという人もいる。