飛鳥への旅

飛鳥万葉を軸に、
古代から近代へと時空を越えた旅をします。
「リンクメニュー」(分類別目次)機能付。

死者の書の旅 その8(小説「死者の書」第14-16章”蓮糸”)

2006年12月12日 | 死者の書の旅
第14章、家持と仲麻呂の対話
第15章、郎女が当麻の庵堂へ来てから約二ヶ月間の経過が描かれている。
第16章、庵堂で蓮糸作りが始まる
「皆手に手に、張り切つて発育した、蓮の茎を抱へて、廬の前に竝んだのには、常々くすりとも笑はぬ乳母(オモ)たちさへ、腹の皮をよつて切(セツ)ながつた。
郎女(イラツメ)樣。御覧(ラウ)じませ。
竪帳(タツバリ)を手でのけて、姫に見せるだけが、やつとのことであつた。
ほう――。
何が笑ふべきものか、何が憎むに値するものか、一切知らぬ上(ジヤウラフ)には、唯常と変つた皆の姿が、羨しく思はれた。
この身も、その田居とやらにおり立ちたい――。
めつさうなこと、仰せられます。
めつさうな。きまつて、誇張した顏と口との表現で答へることも、此ごろ、この小社会で行はれ出した。何から何まで縛りつけるやうな、身狹乳母(ムサノチオモ)に対する反感も、此ものまねで幾分、いり合せがつく樣な気がするのであらう。」
--------------------------------------------------
写真1:当麻寺山門
写真2:当麻寺東塔と中将姫剃髪堂
写真3:当麻寺の中将姫像
写真4:石光寺の染の井