それでも僕はテレビを見る

社会‐人間‐テレビ‐間主観的構造

優しい国

2013-07-28 17:38:04 | ツクリバナシ
父さんによれば、日本は昔、GDPの一番を目指して頑張っていたんだって。

今はまるで時間が止まったみたいだ、と言ってる。

僕には良く分からないけれど、僕が生きているこの社会が今日よりも明日の方が進歩してるって気は全然しない。

それより良く生きるってことを、みんな考えているんだと思う。

「いつ変わったの?」と、父さんに聞くと、いつもこう返してくる。

「日本の国歌と国獣が変わった時かな。でも、それも結果に過ぎないのかもしれない。」って。

日本の国歌は昔、「君が代」って歌だったらしい。

いや、正確には今も「君が代」なんだけど、でも、もう誰も歌えないんだ。

そもそも国歌を増やすとき、「君が代」を歌える人は少なかったみたい。意味もみんなよく知らなかったんだってさ。国歌なのに?

今のメインの国歌は「優しい国」ってやつで、おじいちゃん達は「奇妙な歌だ、でも嫌いではない」って言ってる。

僕はこの歌、とても好きなんだ。だって、とってもきれいなんだから、メロディ。

なんでも、作曲者は「すぎやまこういち」って人らしい。っていうか、「ドラゴンクエストのテーマ」って曲だったんだって。

つまり元々はゲームの音楽だったんだけど、それに歌詞を付けて国歌にしたのさ。

そんな国はどこにもないって、父さんは言ってる。まあ、そうだろうね。「でも、それで良かった」とも言ってる。

一体、どっちなんだよって言うと、「戦争はもう嫌だからなぁ」と返してくる。

第一次東亜戦争っていうのがあったんだって。第二次だって言う人もいるけど、僕には良く分からない。

あの戦争は革命だったって父さんは言ってる。

何が起きても変わらなかった日本がようやく変わったんだって。

でも、父さんもお爺ちゃんからその話を聞いただけで、体験はしていないんだよ。

あの戦争で変わったのが、国歌ともうひとつ。国獣さ。

それまで国獣なんてものは、日本になかったらしいよ。

でも、遂に決めることになって、それで「トトロ」になったのさ。

トトロは平和の象徴だって。

なんでも、空想上の動物でもいいらしんだ、国獣は。シンガポールだってマーライオンだし。

首都も何もかも戦争で変わっちゃったらしいんだけど、この国獣と国家が新しい日本を象徴しているって父さんは言ってるよ。