消された伝統の復権

京都大学 名誉教授 本山美彦のブログ

民営化される戦争とグローバル企業(2) 広島講演より(9月24日)

2006-10-26 04:08:03 | 世界と日本の今


途上国のイニシアティブで発展を


 そしてその結果「もはや戦後ではない」と言われたのが昭和31年、つまり1956年。これはすごいことですよ。「もはや戦後ではない」と言うのは、昭和11年(1936年)の工業水準に復帰したと。世界5大工業国家の一員に復帰したと。1945年に戦争で徹底的にやられ被災地となった日本は、当時の世界最貧国であったろうと思います。これがわずか11年で戦前の5大国に復帰できたのです。


 このことのすごさを思い知らなければならないのです。つまり技術も人間も知識もあらゆるものがその国で根付き、普及しておれば、社会の発展というものは非常にスムーズに行くのだということです。逆に言えば、現在の途上国が先進国の力によって、企業によって分断されてしまっている。だから、1つの国の固まりではなくなりばらばらになって、いがみ合いをしてしまって、結局、現在の貧しさがあるのだということを理解してほしいのです。


 だから今大事なことは、はっきり言って「多国籍企業は出て行ってくれ、自分達は自分達でやるから。その代わり自分達の生活できる分野の方に、皆さんお金を払ってくれ」と言うことです。つまり紅茶だったらそれこそ「広島市内でスリランカの紅茶ショップを出さしてほしい。マーケットで売らしてほしい」ということです。これがこれからの人類が取り組むべき課題だと思います。


 何も日本人が偉そうにしてはいけないのですけれども、その時のモデルとして、あのとんでもない貧しさからわずか11年で復帰できたという日本の経験を、世界の人達に知らしむべきだと思います。しかし、先進国の企業や学者が途上国の人達に対し、俺達が教えてやるという態度を取ることはとんでもないことなのです。「ほっとってくれ」というのが、おそらく途上国が今後取り組むべきテーマになっていくはずです。私達もそれに備えてのいろいろな事を、私達の社会の中でシステムを変えていくことを模索する。私はこれが「グローバリゼーションを問う」という作業の最も大事な点だと思います。


 要するに自分達の国で作り、自分達のイニシアティブで売り、その資本は自分達に回収し、その利益は自分達の社会改造に使っていく。間違っても先進国に横取りされてはいけないのだということです。こういったことの世界的なシステムが作り出されるはずであると私は思っています。そのために悲惨な戦争から学んだのだということを是非分かってほしいと思います

 

広島で疎開と原爆を経験


 ちなみに私は広島でお話させて頂くのは非常にうれしいのです。実は私は神戸で生まれ、すぐ戦災で焼け出されまして、広島に疎開しに来ていたのです。疎開して来て、ついこの近くにおりまして、呉の広の近くなのです。そこで私は広島の原爆を見たと思っております。母親は「そんな馬鹿な、覚えているはずがない」と言うのですが。それは私がちょうど2歳位の時です。私は鮮明に覚えているつもりで、広島の原爆を本当に経験したつもりでおります。


 広島に長いこと疎開させて頂きました。疎開というのはつらかったですよ。ほんとにこう小さくなって過ごさなくてはいけなかったのですが、疎開してから神戸に引き揚げてきた時には驚きましたね。天井のない貨車で帰ったのですが、長いこと20時間位かかってやっと神戸に着いて、三ノ宮駅に降りた時には立ちすくみました。何にもなかったですね。ほんとに瓦礫の山であった。

 

国産化はグローバリゼーションの反対


 おそらくその時、私達は世界で最貧国であったと思います。それをわずか11年間で戻したのだということのすごさを分かって頂けるでしょうか。それを日本のすごさだとつまらんナショナリスト達は言うのです。私はそうではないと思います。少なくとも一つの国の一つの地域の人達が力を合わせれば、とんでもないスピードで生活水準は上がっていくと私は思っています。国産というのがキーワードだと思っています。グローバリゼーションというのはその反対なんです。それが人々をダメにしてしまっていると私は理解しているのです。


 世の中の人々と仲良くしようというときは、自分達が作った物をお互いがリーズナブルな条件で交換していくことが仲良くするということです。よそ様の国にズカズカと入り込んで行ってよそ様の労働力を使って物を作るということは、とんでもないことなんです。そういったことは間違っているんだと、基本的に考えなければいけないと思います。


民営化される戦争とグローバル企業(1) 広島講演より(9月24日)

2006-10-25 03:25:01 | 世界と日本の今

1、国産化が途上国発展の鍵


「グローバリゼーションを問う」作業とは

 今年の4月から福井県立大学に勤めています。ブログで「消された伝統の復権」というタイトルで福井日記をほとんど毎日書いています。福井の風土を織り交ぜながら歴史で消し去られた人達の権威回復を書いており、楽しい読み物だろうと思っていますので是非ご覧になってください。初めは10人程度の読者しかいなかったのですが、アクセスする方が数百人程度に増えており喜んでいます。早く1日千人を超えることを目標としているところです。

  「グローバリゼーションを問う」という時どうしてグローバリゼーションということにこだわらなければいけないのか、反対しなければいけないのかについて簡単にお話したいと思います。グローバリゼーションは「地球的規模」という意味ですが、あんまりいい言葉ではないのですね。

  分かりやすく言えば、例えば紅茶はスリランカで主に生産されるということを私達は知っている。あるいはコーヒーはジャマイカだと、天然ゴムはマレーシアだということは知っている。つまり、あらゆる特産品がそれぞれの国で作り出されていることは誰でも知っている。でも私達は、知識がそこで終わってしまうのです。もう少しきちんとお話しますと、紅茶が好きだという人が自動販売機で冷えた紅茶を買うという時、そこから一歩進めて考えてほしいのですね。この紅茶の生産地はスリランカなのに、ここの自動販売機で売られている紅茶はアサヒ飲料であり、キリンであり、あるいは伊藤園であるというように、いわゆる日本あるいは先進国の企業のブランド名で売られているのです。

  ここが大事なんですね。つまり、力の強い国によって力の弱い国々は作らされ売らされ価格も決定されている。貧しい国の人々は厳しい労働を強制され一生懸命働くけれどもそこでの資本、利益、知識といったものが全体としてみんなに行き渡らない。儲けも技術もすべて一握りの外国の大きな企業に持っていかれてしまう。こういうことがこの世の中で正しいことなのだろうかと問うことが、「グローバリゼーションを問う」という作業のことなのです。 石油はサウジアラビアあるいはクウェートでとれるとか、日本はアラブ首長国連邦からたくさんの石油を輸入していることも知っている。けれども、ガソリンスタンドに、例えばクウェートでしたら「Q8」ですが、皆さん「Q8」のガソリンスタンドを見たことがあるだろうか。作らされているのは貧しい途上国で、生産物は先進国で販売し消費している。そういったルートを握っているのが先進国の一握りの企業である。そうしたことは少なくとも神様がお許しにならないだろうという問題の立て方。これが、「グローバリゼーションを問う」という作業なのです。

  立地上の不公平を問い直す

 私達日本人は平気で外国へ行きます。1万円札を持っていきます。両替してくれるものだと決めてかかっています。私達日本の銀行は世界各地に展開しています。そして日本には非常にたくさんの人々が世界中から来ています。でも果たして日本にタイの銀行があるのか、インドネシアの銀行があるのかと考えると、日本に来ている方々の母国の銀行が入っていることはありませんよね。一部は入っておりますけれども、こういう立地上の不公平というのは誰が見ても明らかなのです。 世の中というのは紛争が起こりあらゆる戦争が起こるけれども、結果的にはそれがプラスに転じてきた。その後には必ず平等な社会ができてきた。

 つまり紛争は常に抑圧され虐げられた人々の反抗運動から起こっているのであり、その力によって権力側が譲歩していって次第に平等な社会ができてきたのです。しかし、その平等な社会ができた時に私達は生き抜いていけるのか。もし石油が完全に産油国側の力の下に服すことになった時に、石油だけに頼ってきた日本の社会が果たして現在のような大量消費社会を維持することができるのだろうか。私達は今の間にそういったことを想定して、心構えをし、社会が激変しないでソフトランディングする方法を指向していくのが文明人というものではないのか、という問題の立て方が必要です。

  国産の低技術から復興開始

 もしすべての技術が、すべての資本が、労働力が、知識が、あるいは防備が自分達の国だけで使われるとすれば、社会というのは意外に発展が早いのです。例えば、日本はアメリカに占領された。アメリカに占領されたけれども降って沸いたような幸運、隣の国の不幸を幸運と言うと失礼なようですけれど、朝鮮動乱が起こった。朝鮮動乱が起こったためアメリカはいち早く日本を復興させなければならなかった。いち早く日本を復興させて反共国家に仕立て上げなければならない時にアメリカがやったことは、日本を放置つまりほったらかすことであった。

  当時は、皆様の地元の東洋工業(現在のマツダ)とか日産とかトヨタとか、日本の自動車会社には正直言ってろくな技術がなかった。アル・カポネが活躍した暗黒の時代のアメリカの映画を観ていたら、1930年代にはすでにセル一発でエンジンがかかるような車が走っていました。日本では私が運転免許を取る頃、つまり1960年代の頃は、私達はしょっちゅう車の前に回ってエンジンをかけるためにクランクを回していました。私ぐらいの年配の方なら分かってくださると思うのですが。セル一発ではエンジンはかかりませんでした。それほど日本社の技術が低かった。名神高速道路ができた時に、私が「京都-尼崎間をノンストップで走ったんだぞ」と言った時に友人たちは嘘だと言いました。つまり、当時は日本のトヨペットなんかは路肩に車を止めて、とにかくオーバーヒートしたラジエーターを冷やしていました。しかし、外車だけはスイスイ、スイスイ走っていました。

  今の社会だったらその技術差が明らかな時には、アメリカの資本、アメリカの企業のビッグスリーが入ってきて日本で生産をするはずなんです。ところが当時の日本の置かれた状況は、朝鮮動乱で一刻も早く日本の産業を復興しなければならない時なので、アメリカのとった措置は日本に1社たりともアメリカの大企業を入れないことであった。 こういうことが非常に大事なのです。わが日本は非常に技術が低かった。でもすべて国産でやってきた。これは、アメリカと喧嘩してアメリカが入りたいのに俺達は絶対入れてやらない、というように日本政府が強い力を持っていたのではないのです。少なくともアメリカが長期戦略から考えて「アメリカの企業を入れたらだめだ。日本では日本に任せる」ということにしたのだと私は理解しています。ですから、あらゆる分野で国産が可能だったわけです。


ノーと言えない日本から、自立する日本へ――沖縄に思う 7(終)

2006-08-20 01:14:55 | 世界と日本の今

軍事と経済は不可分
  日本を従属させる日米安保


 
 五月一日の日米安保協議委員会いわゆる2プラス2で、日米両政府は米軍再編の最終合意をしました。この時の共同発表は「日米同盟は、基本的人権、自由、民主主義及び法の支配といった両国が共有する基本的な価値を促進する上で、ますます極めて重要となってきている」とうたっています。日米が基本的な価値を共有していることに注意してください。

 

 その日米同盟、すなわち日米安保条約は、第二条で「経済政策における食い違いを除くことに努め、両国の間の経済的協力を促進する」とうたっています。「食い違いを除くこと」つまり「経済の一体化」です。日米安保条約の正式の名称は「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」です。日米安保条約は軍事だけではありません。経済も政治もアメリカに従属する仕組みになっているのです。


 アメリカは「基本的な価値の共有」「経済の一体化」を盾に、市場開放、規制緩和、M&Aなど、経済面でも日本に様々な要求を押しつけることができる仕組みになっています。

 

 六〇年の安保締結交渉で、アメリカ側の責任者はクリスチャン・ハーター国務長官でした。ハーターは六二年、ケネディ政権下で新設された特別通商代表(STR)の初代代表に就任した。このSTRが一九七九年に改組されて現在の米国通商代表( USTR )になります。STR代表としてハーターは、後に『年次改革要望書』へと行き着く「日米貿易経済合同委員会」を主導しました。この合同委員会の設立趣意書には、安保条約第二条に基づいたものであることが明記されています。

 

 USTRは大統領直轄で、日本の経済政策にあれこれと注文をつけ、通商問題に関する交渉を一手に引き受けます。以前はUSTRの日本支部がありましたが今はありません。勝負がついたからです。今あるのは中国支部で、中国に通商問題でさかんに要求を突きつけています。

 

 STRの初代代表のハーターが、六〇年安保締結交渉のアメリカ側責任者だったその人でした。このことからも分かるように、米国の通商政策は軍事と不可分です。日本は軍事だけでなく、経済や政治でも、アメリカに従属する仕組みに組み込まれているのです。

 

 一部のエリート、特権的な人たちが、自分たちの私腹を肥やすために圧倒的多数の国民を貧乏に追いやる。若者たちはフリーターなど低賃金の不安定雇用に追いやられている。アメリカの志願兵と同じ構図が作られつつあるのではないかと思います。そういう若者をだましてこき使い金もうけをしている連中がいるのです。ミサイルは一基が何百億円です。日本はアメリカの指揮命令に従う米軍再編のために、三兆円を差し出します。その金に企業が群がっています。

 

 こういう話をぜひ周囲の人たちに広めてほしい。戦争体験ある年輩の人たちが、被爆体験のある長崎の人たちが、ぜひ若者にきちんと話をしてほしいと思います。

 

(完)


ノーと言えない日本から、自立する日本へ――沖縄に思う 6

2006-08-19 12:25:29 | 世界と日本の今

 前回の続き


  日米の軍事一体化

 

 イラク戦争の原因はいろいろありますが、何といっても石油資源をめぐる戦争です。国際石油資本に対抗して原油価格の決定権をとりもどそうと石油輸出国機構(OPEC)を作ったのはイラクのサダム・フセインです。そのフセインが石油の決済をドルからユーロに切り替えました。さらにサウジアラビアやインドネシアなどもこれに追随しはじめました。

 

 アメリカは膨大な貿易赤字を抱え、それが年々急増しています。それにもかかわらず、ドルが世界で君臨している最大の理由は三つあります。一つは世界の貿易の決済がドルで行われていること。二つ目は英語が世界の公用語として使われていること。三つ目は圧倒的なアメリカの軍事力です。だから、石油の決済をドルからユーロへ切り替えることは、ドルの世界支配に対する挑戦です。アメリカはフセインの行動を許せなかった。これがイラク戦争の原因の一つです。

 

 アメリカは大量破壊兵器を口実にイラク戦争に突入しました。それがウソだったことがばれたわけですが、イラク戦争を強行しました。しかし、イラク戦争は泥沼化し、有志同盟からポーランド、スペインなどが次々に脱落しました。頼みとしていたイタリアのベルルスコーニ政権も、選挙で負けました。イギリスのブレア政権の支持率も下がりっぱなしです。次の選挙で負けることは確実です。他方で、中国、ロシア、フランス、ドイツ、インドがアメリカのやり方に反対しています。中国、ロシアを中心とする上海協力機構などを通じて、反米戦線が構築されつつあります。

 

 こういう状態で、アメリカの友だちはいなくなりました。日本しかいないのです。とにかく日本をつかんでおかなければならない。米軍再編は、そういう背景があって出てきたのだと思います。

 

 アメリカがいう「不安定の弧」とは北東アジアから中央アジア、そして中東にいたる地域です。中央アジアで米軍基地を作ろうとしたが失敗しました。結局、イージス艦や空軍の力に頼るしかない。自衛隊の役割をもっと拡大する。現在のように沖縄に大量の米兵を貼り付けておくのは危ないから、海兵隊の司令部はグアムまで後退させる。その費用は日本に負担させ、グアムからローテーションで世界に対応する。極東やインド洋など主要な地域にはイージス艦を配置しておいて、いざという場合には、グアムから沖縄へ、グアムから岩国へという具合に臨戦態勢をとる。

 

 米軍再編の重要な特徴は、日米の軍事一体化です。日本の自衛隊は常に米軍の指揮系統に従わなければならなくなる。最近、ウィニーというソフトによって、防衛庁のデータが流出しました。佐世保での机上演習の内容です。国名は出していませんが、アメリカは緑色、日本は青色、中国が黄色、北朝鮮は茶色、韓国は紫色となっていました。シナリオは、中国と北朝鮮が結託して日本の領海を侵犯するというものです。場所はS列島(尖閣列島)。中国と北朝鮮の漁船が、日本の巡視船に体当たりする事態が発生。まず何をするか。「緑色の国(アメリカ)に従え」です。次は「中央即応集団司令部は各基地に指令を出して先制攻撃せよ」です。中央即応集団司令部というのは、米軍再編によって、自衛隊が新たに編成してキャンプ座間に同居させる部隊です。つまり、日本の自衛隊は、何かあれば「まずアメリカの指揮命令に従う」ということになっているのです。他国の軍隊の指揮命令に従うことを進める日本の政治とは何なのか。日本の自衛隊員がはたして米軍の指揮命令に従うだろうか。現場段階での反発が起きるのではないかと思います。

 

 これからは情報収集がますます重視されます。アメリカ国家安全保障局が運営するエシュロンは、世界中にはりめぐらされた通信傍受システムで、電話やインターネットなどの情報を盗聴傍受しています。アメリカの世界戦略の中で、敵国と友好国を分かたず情報を収集しており、日本政府、日本企業も監視の対象とされています。日本に関する情報収集の対象は主に経済分野と言われています。三沢に傍受施設がありますが、さらに新たな施設を作ろうとしています。キャンプ座間ではないかと思います。すでに盗聴法ができていますから違反でもない。さらに「共謀罪法」が準備されています。冗談話でも「そうだ」と同意すれば共謀罪が成立します。


 

以下次号


ノーと言えない日本から、自立する日本へ――沖縄に思う 5

2006-08-18 20:29:47 | 世界と日本の今

  株式交換によるM&A

 

 「いい品物をやすく売ればもうかる」というのはウソです。実際は宣伝力なども含めた力です。本当の意味で自由競争が行われているわけではありません。現実にもうかるのは、企業を商品のごとく売買するM&A(企業の合併・買収)です。特に許し難いのは株式交換による合併・買収です。自分の会社の株価(時価総額)が相手企業の株価(時価総額)より高ければ、一銭も払わずに、株式交換で相手企業を乗っ取ることができるのです。一時、ライブドアの株の時価総額がNTTの時価総額を上回り、ホリエモンは「時代の寵児」として持ち上げられました。

 

 株式交換は九九年の商法改正で可能となり、M&Aの手段として使われるようになりました。ただし、外国企業には認めていませんでした。しかし、アメリカの要求に従い、〇三年から条件つきで外国企業にM&Aを認めました。〇七年からは全面解禁となります。具体的には、アメリカ企業の日本子会社が、親会社の株と日本企業の株を交換することによって、合併・買収できるのです。いわゆる三角合併です。現金で買収することもできます

 

 さらにM&Aをしやすくするために、会社を分割して切り売りすることも自由化されました。それで、ダイエー本体から福岡ドームを切り離すことが可能になり、福岡ドームはコロニー・キャピタルに分割買収されました。

 

 そのうち、日本のメディア、製薬会社などが、軒並み買収されることになります。銀行もねらわれます。「日本の銀行が株の持合う制度はおかしい」と批判され、銀行は自己資本以上に関連会社の株を保有できなくなりました。〇四年三月のことです。銀行は持ち株を手放さなければならず、安定株主を失い、M&Aに対する抵抗力が弱まります。アメリカ企業によるM&Aの完全自由化を迫っている時にです。そのタイミングの良さに、怒りを感じませんか。

 

 私は最近『売られ続ける日本、買い漁るアメリカ』という本を出しましたが、アメリカに買い漁られる日本にしていく政治家とは何なんだろうか、と憤りを感じます。

 

 以下次号


ノーと言えない日本から、自立する日本へ――沖縄に思う 4

2006-08-17 11:33:44 | 世界と日本の今
前回の続き
規制緩和・売られる医療

 アメリカの要求を実現しやすくするために、政策決定の過程も変えられました。これまでは、各省庁ごとに各界で構成される審議会が開かれ、省庁案が作られました。それが閣議で決定され、国会に提出される仕組みでした。不十分ではあれ、各界の声が反映されました。それがブッシュ・小泉になると、まず日米首脳会談で決定し、内閣府がそれをまとめ、内容ごとに各省庁に具体化させる仕組みに変わりました。

 具体的には、経済財政諮問会議によるトップダウン方式です。この経済財政諮問会議で最も大きな力をもっていたのが竹中平蔵でした。もう一つは規制改革・民間開放推進会議です。議長は宮内義彦オリックス会長、村上ファンドの最大のスポンサーです。これまでもとんでもない規制緩和を進めてきましたが、さらに刑務所の民営化や税金徴収の民営化まで計画しています。税金の徴収が民営化されれば、民間会社は四兆円で買い取って四十兆円の税金徴収に躍起となるでしょう。サラ金の取り立てのような事態も起こります。「官から民へ」の「民」とは中小零細企業のことではありません。実際は、官よりも何倍も大きな大企業に力が集中することです。その民に、上級の国家公務員が天下りする。

 特にとんでもないのは、保険分野の規制緩和、医療の民営化です。最近のテレビは、アメリカの保険会社のコマーシャルばかりやっています。アリコジャパンアメリカンホーム・ダイレクトも、世界最大の保険会社AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)のグループです。日本の生命保険会社は見る影もない。これには裏があります。一九九六年の日米保険協定です。

 保険には三つの分野があります。第一分野は終身保険などの生命保険、第二分野は自動車や火災などの損害保険、第三分野はガン保険、医療保険、障害保険です。

政府は外資が参入しやすいように、保険分野の大幅な規制緩和を行い、さらに生命保険と損害保険の相互参入も約束しました。そして、何ということか、今後の成長が見込まれる第三分野については、外資と日本の中小保険会社の進出だけを認め、日本の大手保険会社(子会社を含む)や簡保の進出を禁止すると約束したのです。規制緩和という新たな規制です。このような日本政府を売国奴と言わずして何と言うべきでしょうか。

 日本の医療制度のすぐれたところは国民皆保険制度で、すべての国民がなんらかの公的健康保険への加入が義務づけられていることです。

 誰でも同じレベルの医療サービスが受けられ、しかも収入の少ない人は保険料が安く、収入が高い人は保険料が高い。さらに医療への株式会社参入を認めず、財力によって医療へのアクセスが不平等になる混合診療を禁止しています。国民の命と健康を守るために、日本では「医療機関は金もうけをしてはいけない」というのがモットーです。その結果、日本は医療費が世界で最も低く、しかも平均寿命が世界で最も長い国になっています。

 しかし、外資の医療保険会社にとって、公的な健康保険は金もうけのじゃまになります。政府は国家財政の赤字を理由に、医療制度を次々と改悪し、保険料引き上げ・給付引き下げで、国民の不安感を増幅してきました。民間の医療保険に入っておかないと、公的な健康保険だけでは心配だ。そんな不安を意図的にあおり、多くの国民が外資の医療保険に加入する構図をつくっています。

 さらに、規制改革・民間開放推進会議は、規制緩和の名で混合診療の解禁を主張してきました。構造特区第一号として認定された神戸の先端医療産業特区で、混合診療をはじめようという動きがあります。これに神戸市医師会が反対し、厚労省も反対しました。ところが経済財政諮問会議は、厚労省に反対するなとくぎをさしました。政府は、国の財政が苦しいので健康保険制度をなし崩しにしたい。ほとんどの公的医療機関は赤字なので、民営化してもうかるようにしたい。政府の医療改革の方向は、「医療の民営化」です。

 李啓充という人がいます。ハーバード大学医学部助教授も務めた人で、アメリカに住んでおり、日米双方の医療制度をよく知っています。彼は日本政府がアメリカをモデルに日本の医療制度を変えようとしていることに警鐘をならし、「医療は市場経済になじまない、民営化してはいけない」と訴えています。

 アメリカには日本のような国民皆保険の公的健康保険制度はなく、国民が加入するのは任意の民間医療保険です。医療保険は金もうけですから、病気の経験がある人は保険料が高くなり、あるいは医療保険に入れてもらえません。保険料に応じて受ける医療サービスも異なり、安い保険料の人は限られた医療しか受けられません。映画「ジョンQ」はその一例です。前述したように国民の一六%、四千万人が保険料を払えず、医療保険に入っていません。盲腸の手術が百万円もします。最高の医療を受けられるのは、高い保険料を払った金持ちだけです。「医療は金しだい」というのがアメリカで、貧乏人にとっては地獄です。

 医療費が世界で最も低く、最も長寿の、世界に冠たる医療制度を、医療費が最も高く、寿命が短いアメリカの医療制度に変えようとするのは許し難いことです。これが小泉政権の「医療改革」の中身です。

以下次号

ノーと言えない日本から、自立する日本へ――沖縄に思う 3

2006-08-16 15:36:50 | 世界と日本の今

 前回の続き

  金融自由化の陰謀

 

 素人つまり大衆相手の商売はもうかります。一生に一度の買い物といわれる住宅など、素人相手の消費財はとてももうかります。しかし、プロ相手の商売はもうかりません。たとえば製鉄や造船などは、巨大な図体の割にはもうかりません。顧客がトヨタなどのプロだからです。トヨタは世界中の鉄の価格を調査し、最低価格でしか買わない。そこそこのもうけしか許さない。しかし、なくてはならない産業です。

 

 長期の投資を必要とするこのような産業のための特別な銀行が、日本長期信用銀行日本興業銀行日本債券信用銀行でした。無記名にすることで、金持ちに長期の債券を買ってもらい、二十年とか三十年という長期の資金を、重厚長大の産業にまわしてきました。他方で、中小企業向けの融資には、地域密着型の信用組合や信用金庫があり、その監督は地元市町村にまかせました。最も力の強い都市銀行には一年以上の定期預金は認めないという具合に、それぞれの企業がバランスよく成長できるように、金融機関のすみ分けがありました。金融機関は一つも倒産しませんでした。第一勧銀富士銀行は世界一たくさんの預金を集め、一流銀行でした。

 

 ところが、アメリカが日本の金融市場でもうけるため、金融自由化を迫ってきた。バランスのとれたすみ分けは「護送船団」と批判された。自己資本比率の低い日本の銀行をねらい、金融機関の自己資本比率は八%以上というBIS規が決められた。銀行は「貸し渋り」「貸しはがし」に走り、中小零細企業は倒産に追い込まれた。「預金は借金だ」と言われ、預金をたくさん集めた銀行は三流銀行ということになった。

 

 もうからない産業に融資してきた長期信用銀行が、真っ先に血祭りに上げられた。破たんした長銀には政府の金が八兆円も投入され、負債が整理された。アメリカ政府の斡旋を受けた米投資会社リップルウッドが、それをわずか十億円で買った。しかも、長銀の債権が不良債権になれば、政府が弁償すると約束した。それが現在の新生銀行です。新生銀行はそごうなど多くの企業を倒産(不良債権化)させ、政府の弁償でぼろもうけした。十億円の元手で二千二百億円の利益を手にした。まさに「ハゲタカ・ファンド」です。

 

 日本長期信用銀行の破たんに始まって、二十一もあった都市銀行がわずか三つになりました。信用金庫、信用組合は多くが破たんさせられ、市町村から国の監督に移されました。銀行や信用金庫などへの不安をあおる世論操作によって、預金は郵便貯金に流れました。その郵便貯金をアメリカの金融会社が使えるように郵政民営化が行われました。これこそ陰謀だと思います。


ノーと言えない日本から、自立する日本へ――沖縄に思う 2

2006-08-13 16:48:32 | 世界と日本の今
前回の続きより

戦争は金もうけ

 象徴的な話をします。

 私は九・一一テロを陰謀ではないかと疑っています。なぜ、ペンタゴンに突入したボーイング機の残骸が、いまだに発見されていないのか。飛行機の残骸が見つかってないのに、なぜ乗っていた「テロリスト」のパスポートだけが、紙でてきているのに燃えもせずに出てくるのか。世界貿易センタービルが一瞬で解体したのは熱で溶けたからだというのに、なぜペンタゴンの建物は溶けなかったのか。陰謀だという確証はありませんが、疑うべき状況がたくさんあります。

 また、九・一一の直前に、父ブッシュカーライル社のアジア担当責任者として、ビンラディン一族を集めて投資をすすめていました。「カーライル社に先行投資すればもうかる」とでも言ってたのでしょう。ビンラディン一族は中近東の石油利権とゼネコンを握る大富豪で、アメリカ南部に住んでいました。カーライル社は、軍事産業に投資する金融会社です。軍事産業を統括する企業としてアメリカで最大級で、ブッシュの他にカールーチやワインバーガーなどの元国防長官が役員に名をつらねています。そしてテロが起こり、子ブッシュが犯人はオサマ・ビンラディンだと発表しました。当然、ビンラディン一族を拘束して取り調べるのが常識です。それなのに、チェイニー副大統領の命令で、ビンラディン一族をただちにリヤドへ逃がしました。これは一体どういうことなのか。

 もう一つ。関西にはすでに二つの空港があるのに、神戸空港ができました。採算がとれるはずもないのになぜできたのか。神戸空港のある神戸市は神戸医療産業都市で、世界最先端の再生医療が行われ、衛星中継で米スタンフォード大学とつながっている。この神戸医療産業都市をつくったのはアメリカのベクテル社です。ベクテル社は原子力発電、石油関係、防衛・宇宙、建設、医療産業などあらゆる分野を手がけている巨大企業で、CIA長官や国務長官を輩出し、ブッシュ大統領の一大スポンサーです。湾岸戦争後のクゥエート復興やコソボ紛争後の復興事業、イラク戦争で燃えた油田の消火を請け負った会社で、アラブでは「死の商人」と呼ばれています。将来、台湾海峡で問題が起こった場合、負傷した米兵を飛行機で運びこみ、治療することを想定しているのではないのか。神戸再生医療都市に、ベクテル社による軍事と医療の結びつきを感じてなりません。

 戦争は金もうけです。背後で莫大な金が動いています。アメリカのGDPは日本の三倍ですが、軍事費は日本の十二倍です。それほど莫大な金がペンタゴンに集まる。その金にありつこうと、ペンタゴンを中心に利益共同体ができあがっているわけです。一握りのエリートや企業の金もうけのために、圧倒的多数の人々が犠牲になっていいのでしょうか。

以下次号

ノーと言えない日本から、自立する日本へ――沖縄に思う 1

2006-08-12 09:46:13 | 世界と日本の今
 本日から「福井日記」、「古代ギリシャ哲学」とは別に、久々の連載を掲載します。なお、連続して読まれたい方は「世界と日本の今」のカテゴリーをクリックしてください。-編集部

貧しさが戦争に駆り立てる

 とんでもない金持ちもいないし、とんでもない貧乏人もいないのが豊かな社会です。貧しい国ほど、少数のとんでもない金持ちが栄耀栄華を誇り、圧倒的多数の人々が貧困に苦しんでいる。

 戦前の日本は、ものすごい豪邸がある一方で、庶民はろくな家に住んでいなかった。圧倒的な人々が貧しかった。特に農村では大地主が栄耀栄華を誇るかげで、小作人たちは極貧の生活にあえぎ、娘たちは遊郭に売られ、次男三男は軍隊に入るしかなかった。
 志願兵の圧倒的多数は東北など貧しい農家の出身でした。彼らは妹たちが遊郭に売られているときに、東京の金融資本が栄養栄華を極めているのを目にして、五・一五事件二・二六事件に走った。彼らは「打倒、資本主義」でした。中国を占領すれば貧しさから脱却できると、権力側に利用され、侵略戦争に駆り立てられました。

 国民を戦争に駆り立てたのは理屈ではありません。国家のために軍隊に入ったのではなく、飯が食えるから軍隊に入ったのです。理屈や思想教育はその後です。

 戦後、日本を占領したアメリカが行った改革は、第一が農地改革です。農地を解放し、小作人に農地を与えた。第二が教育改革です。金持ちの子どもや少数のエリートしか入れない旧制中学を廃止して、中学までを義務教育とし、教育費を無料にした。第三が労働組合や市民団体の自由化です。日本が再び、アメリカに対抗するような軍国主義となるのを許さない。それがアメリカの占領政策でした。

 現在のアメリカは徴兵制ではなく志願兵です。しかも、米兵のほとんどが中南米の出身者や黒人、つまり貧しい人たちです。彼らが軍隊に志願するのは大学に入るための奨学金、推薦を受けるためであり、アメリカの市民権を得るためです。貧しさから脱出するためです。イラクで戦争に参加する恐怖や人間としての悲しみに耐え、生きながらえてアメリカに帰って後の生活の保障を選択したのです。貧しさが若者たちを戦争に駆り立てているのです。

 アメリカには、戦前の日本と同じような戦争の構造があります。ごく少数のとんでもないエリートと圧倒的多数の非エリートが存在している社会、これが今のアメリカです。億万長者のビル・ゲイツは彼一人で、アメリカの全労働者の収入の半分を持っています。アメリカの労働者の圧倒的多数は、この二十年間、給料がまったく上がっていません。それどころか、日本のような健康保険制度がないので、医療保険に入ることができない人たちが一七%、四千万人もいます。「ジョンQ」という映画がありました。主人公はリストラで医療保険が高額の医療に適用されず、最愛の息子が心臓病の手術を受けることができない。そこで病院を占拠するという映画です。

 アメリカの権力は、アメリカ人を豊かにするのではなくて、少数のエリートだけが世界の富を独り占めするのに奉仕している。そのために軍隊の強化が必要になる。作り出された貧しさが若者を軍隊に駆り立てる。軍隊はこのように構造的に作り出されているのです。

 以下次号

本山美彦 福井日記 06 村上ファンドで思うこと

2006-06-07 14:47:04 | 世界と日本の今
46歳にしては稚拙な、のっぺりとした顔。知性の片鱗を感じさせない顔。なんとかモンと双璧。最近、つまらぬ卑しい顔の人が増えてきたね。元同僚の中にも卑しい顔が増えてきました。権力志向、稼ぎ志向。人間関係が浅く、粘膜で人間が辛うじてつながっているのでしょうね。規制緩和という新たな金儲けに邁進する構造改革旗振りたち。全員、無機質のは虫類的顔をしている。こんな卑しい連中などいない社会で生きていこうよ。
 本山美彦。平成18年6月7日、村上ファンドに思う。