もったいないの心~3R-リディース、リユース、リサイクル
私は公害の街、大阪市西淀川区で生まれました。昭和30年の経済白書には「もはや戦後ではない」と記述されていましたが、まだまだ戦争の傷跡が多数見受けられる時代でした。
私が物心ついた昭和30年代の生活は共同トイレ、共同炊事場のある木造二階建てのアパートがあたりまえで、白黒テレビがやっと普及し始めた頃でした。夏は百貨店へ家族揃って涼みに出かけました。冬は隙間風とたたかいながら何枚も着込み、呼ばれても炬燵から離れられずによく叱られました。自動車は憧れの対象としてながめていました。そんな時代でしたから、皆が上着もズボンもつぎがあたったお古を着ていましたし、靴下も破れた穴をつくろってはいていました。
その後日本は目覚しい高度成長を成し遂げました。今ではエアコンの効いた部屋で冬でも薄着で生活し、蛇口をひねればお湯が出てきます。トイレはシャワートイレ、個室で携帯電話をかけ、近所のスーパーへマイカーで出かけて一週間分の食料品を買って冷凍冷蔵庫で保存、パソコンでインターネット・ショッピングをする、そんな生活が当たり前になっています。
昨年2月にケニアの環境副大臣でノーベル平和賞を受賞されたワンガリ・マータイさんが来日されました。日本では古くなって利用価値のなくなったパソコンがアフリカではまだまだ使うことができるので送ってほしいと言われました。「もったいない」という日本の言葉は素晴らしいとも指摘されました。大量生産、大量消費、使い捨てに慣れている我々の生活に鋭い警鐘を鳴らされたものでした。
子供の頃にご飯を残すと「お百姓さんが汗水たらして作った大事なお米ですよ。」と叱られました。それがいつの間にか、家庭でもレストランでもみんな平気で食事を残すようになりました。日本人の生活はあまりに豊かになりすぎて物を大切にすることを忘れてしまっているように思われます。
第二次世界大戦後の1950年に27億人だった地球の人口は2000年に2倍以上の63億人に、2050年には3倍以上の90億人になると予想されています。現在の人口でも、世界中の人々が日本人と同じ生活をするには地球が2.4個分必要であると言われています。日本は少子化対策をとらねばならないように人口が減少を始めており、他の先進国における人口増加も限られています。つまりこれからの増加は途上国の人口増加です。また、途上国の生活水準も向上しますので、人口増加とも相まってエネルギー、食料、水等あらゆるものの需要が爆発的に増大していきます。
技術革新が重要であり、必要は発明の母ですから、今後のブレイクスルーを期待したいと思います。しかしながら、先行きが不透明な技術革新を期待するだけでは不十分です。まずできること、つまり資源の浪費を防ぐことから始める必要があります。
ごみを減らす「リデユース」、繰り返し使う「リユース」、資源として再利用する「リサイクル」の頭文字のRを取り出して3Rと言っていますが、この三つを実現することにより資源の消費を抑えた循環型社会に転換していくことが可能になります。欧州でチフスがはやった頃、江戸時代の日本は世界一の循環型社会でした。し尿を集めて農作物の肥料としてうまく利用して衛生状態の良い都市生活を維持していたのです。
もったいないという良い伝統を日本は持っています。国民ひとりひとりが「もったいないの心」を持つことにより循環型社会を構築し、世界をリードできるようになって欲しいと願っています。
国土交通行政... » |