安全・安心の暮らしと下水道の整備
~日本下水道新聞掲載記事より~
台風18号と低気圧の影響で、関東や東北地方では雨が降り続き、9月10日には、鬼怒川や渋井川の堤防が決壊して市街地が浸水し、亡くなられた方7名、重軽傷者46名、避難された方5,500人以上、家屋の全壊等112棟、浸水家屋18,781棟に上る深刻な被害がもたらされました。本稿を執筆している時点(9月15日)でもなお、住宅が孤立するなど広範な地域の方々に影響が及んでいます。
幸い下水道は無事のようですが、農業集落排水の処理施設や浄化槽の曝気ポンプ等には被害が及んでおり、一日も早い生活再建のために早急に復旧することが求められおり、その対策を講じなければなりません。
中長期的には、降水量が多く、急峻な山から速いスピードで川が増水し、市街地に浸水被害が発生するという我が国の地形・気象状況に対応した、下水道整備を進める必要があります。また、これまでに整備し、老朽化が進む下水道をどのように維持・更新していくかも大きな課題となっています。
東日本大震災や阪神大震災のような大災害が発生するとその重要性を理解して頂けるのですが、普段はその有り難さをなかなか感じて頂けないのが下水道です。下水道がなくては衛生的な暮らしは成り立たないのです。ライフラインの重要な構成要素であることについて、国民の皆様に御認識を深めて頂くように努める必要があります。
8月末に国土交通省が提出した平成28年度要求では、社会資本整備総合交付金に2兆3,427億円(うち下水道分は約5,000億円)、下水道事業費等の補助に62億円を計上しています。厳しい財政状況の下、予算の削減余地がないかと厳しく査定をしてくる財務省主計局とは、既に下水道の重要性について折衝を進めております。この金額でも、全国各地からの要望を満たすことは出来ませんが、まず、この要求額を確保することが重要です。
安全・安心の暮らしを実現するために、下水道等の整備にこれからも汗を流していきたいと考えています。
豪雨災害
~セルポート「永田町より一筆啓上」掲載記事より~
「豪雨災害」
台風18号と低気圧の影響で、関東や東北地方では雨が降り続き、9月10日には、鬼怒川や渋川等の堤防が決壊して市街地が浸水し、亡くなられた方7人、重軽傷者46人、避難された方5500人以上、家屋の全壊等112棟、浸水家屋1万8781棟に上る深刻な被害がもたらされました。本稿を執筆している時点(9月15日)でもなお、住宅が孤立するなど広範な地域の方々に影響を及ぼしています。
堤防決壊前に避難指示が出されなかったという地方自治体の対応の悪さもありましたが、これだけ大きな被害となったことには2つの理由があると思います。
第一は、堤防の十分な整備がなされていなかったことです。50年に一度の災害に備えるのか、100年に一度の災害に備えるのかという議論はありますが、降水量が多く、急峻な山から速いスピードで川が増水するという我が国の地形・気象状況に対応した防災対策が必要です。「コンクリートから人へ」とのキャッチフレーズがありましたが、住民の皆様の安全・安心な生活を守るためにも堤防の整備等の社会資本整備は必要なのです。コンクリートも人も両方が大事なのです。昔から、中国では黄河の氾濫を防ぐために様々な対策がとられていたように、治山・治水は為政者の第一の仕事でした。
第二は、気候変動への対応です。雨が降ってそれが川に集まり、海に下って蒸発して雲になり、雨となって地上に戻って来るというのが水の循環です。つい先日まで夏の暑さに皆さんうんざりされていたことと思いますが、20世紀後半から地球温暖化が加速しています。地球温暖化がもたらすことは気温の上昇だけではなく、海水の温度も上昇させているのです。その結果、海面からの水蒸気の蒸発量が増大して、豪雨が増えたり、台風が大型化していると考えられます。これ以上の気温の上昇を防ぐためにも、豪雨災害を防ぐためにも、地球温暖化対策の強化が必要です。
安全・安心の暮らしの実現に向けて、国や地方公共団体は、河川の堤防、海岸の護岸・防波堤、山の土砂崩れを防ぐ土留め擁壁などの整備に力を入れて国土の強靭化に努めることが必要です。同時に、省エネルギー化、風力や地熱等の持続可能なエネルギーの利用等のあらゆる地球温暖化対策の強化に取り組まなければなりません。私達も、電気のスイッチを切ったり、車に乗らずに歩いたりと、身近な所から取り組んでいって、このかけがえのない地球を少しでも良い状態で次の世代に引き継いでいきましょう。