安全保障関連法案衆議院可決
~セルポート「永田町より一筆啓上」掲載記事より~
「安全保障関連法案衆議院可決」
今国会最大の懸案である安全保障関連法案が7月16日に衆議院本会議で可決され、参議院に送付されました。
同法案は平和安全特別委員会で既に116時間という長時間の審議を行い、これ以上審議を続けても与野党の距離が縮まる見通しが立たないことから、15日に同委員会で採決し、翌16日に本会議で可決したものです。
なぜこの法案が必要であるのか、我が国はどのような対応が求められているのか、といった我が国の安全保障に関する本質的な議論が深まらなかったことは、誠に残念であると感じています。
憲法との整合性について議論となりましたが、GHQの当初の対日方針は「軍事国家の復活を許さない。日本国民の経済上の困難と苦悩は日本の自らの行為の結果であり、連合国は復旧の負担を負わない。」という大変厳しいものであり、GHQ占領下の日本で昭和21年に制定された日本国憲法は、そのような時代背景を反映した硬性憲法となっています。
しかし、米ソ冷戦の深刻化と共に米国は対日政策を転換し、昭和25年に朝鮮戦争が勃発すると、「警察予備隊の創設、海上保安庁の増強」を指示し、同年8月には現在の陸上自衛隊の前身である警察予備隊が設置され、10月には海上保安庁が朝鮮周辺海域の掃海を行い、機雷27個を処理しました。翌昭和26年9月にサンフランシスコ講和条約と日米安全保障条約が調印され、昭和27年4月に我が国は主権を回復し、昭和29年7月に防衛庁・自衛隊が設置されました。
自衛隊の発足当初から憲法第9条との関係が議論され、違憲と考える憲法学者がいらっしゃったものの、現在では「自国の防衛(専守防衛)を行う自衛のための戦力の保持は否定されていない」との解釈が定着しました。
米ソ冷戦下において、日本は弱小国であり、安保条約による米国の傘の下で安全保障については限定的な取り組みにとどめ、経済復興に全力をあげて取り組み、昭和43年に西独を抜いて世界第2位の経済大国となりました。平成22年にGDPで中国に抜かれたものの、依然自由主義諸国で第2位の経済大国となり、日本のことだけを考えて行動するのではなく、世界の期待に応えられる行動をとることが求められるようになっています。
ところで、第二次世界大戦当時にはジェット機は殆ど存在しませんでしたが、現在では大陸間弾道ミサイルや無人飛行機によってピンポイントで敵を攻撃できるように、攻撃兵器は格段に進化しています。また、平成2年にソ連が崩壊して東西冷戦体制が終焉し、米国が依然世界一の超大国であるもののその地位が低下する一方、中国が台頭し、北朝鮮は核弾頭を保有し、アジアの緊張は高まっています。さらにISILやAQAP、ボコ・ハラム等の国家以外のテロ集団との紛争、さらには化学兵器やサイバー攻撃等、危機・有事についての態様が多様化しています。
この様に我が国を取り巻く安全保障環境が大きく変わったことが、今回法案を提出するに至った背景にあります。
この法案は、戦争を引き起こすための法案でも、徴兵制を行うための法案でもありません。阪神大震災や東日本大震災の時にも、事前の対応が十分に講じられていませんでしたが、いざという事態が発生した時のために、あらかじめ準備をしておくことが何より必要なのです。
参議院に議論の舞台は移りますが、これまでの日本の安全保障政策に対する議論が不十分であったところについて、良識の府で十分な議論をして頂きたいと期待しています。我々与党は、何よりも奢ることなく謙虚に対応することが必要です。野党の皆様には、「違憲である。けしからん。」と決めつけて反対するだけではなく、野党が政権に戻った時に、私たちの生命、財産と国土を守るにはどうすれば良いのか、我々と一緒になってお考え頂きたいと望むものです。
法律は国会で成立させれば良いというものではありません。国民の皆様に理解して頂き、支持して頂けるようにならなければ、うまく機能することは出来ません。政治に信頼を取り戻すことが、何よりも大事であると思います。政治への信頼がなければ、国民の皆様は政府・与党の説明に耳を傾けては下さいません。
国民の皆様には、我が国の安全保障について少しでも関心を持って頂ければ幸甚に存じます。衆議院のHPにアクセスして頂ければ、動画でどの党の誰がどのような発言をしているのか、ご覧頂くことができます。是非、皆様ご自身の目でご判断頂きたいと願います。