小笠原空港提言書
私が座長となっている「小笠原村における民生安定化懇談会」で、昨年から空港問題を中心に現地調査を行い、様々な課題について議論を重ねて参りましたが、昨日、森下村長に「小笠原空港滑走路の小笠原村案に対する提言書」「村民生活と自然環境の両立に関する意見」を提出しました。
小笠原村は東京都にありますが、都心から約1,000㎞離れ、竹芝桟橋から週に1便の「おがさわら丸」が唯一の足となっています。おがさわら丸は22.5ノット(時速42㎞)と旅客船としては相当な高速船ですが、それでも父島まで約25時間30分かかりますので、ジェット機が発達した現在では地球の裏側の南アメリカに飛んで行くのと同じくらい時間距離では遠い場所となっています。
父島に診療所はあるのですが、手術を要する病気等の場合には医師同伴で東京に向かわざるを得ません。村の方にとっては空港の設置が悲願となっており、村では1,200mの滑走路の空港案を計画しております。
私たちは村長の諮問により、自然環境への影響やその対策等の議論を行いました。その結果、父島洲崎地区において地形の改変等の自然環境への影響を最小限に抑える村案であれば、陸域及び海域の野生生物や生態系へ与える影響は限定され、十分に検討に値するものであるとの回答をまとめました。
また、昨年の世界自然遺産登録以降、来島者が増加していることから、小笠原村全体の環境容量を検討し、来島者の受け入れ対策を早急に講じることを求める「村民生活と自然環境の両立に関する提言」を建議しました。これまでは船で25時間以上かかるという、その不便さが小笠原への来訪者数を制限してきていたのですが、世界自然遺産に登録されると途端に観光客が急増し、環境保全がこれまで以上に難しくなるという皮肉な結果がもたらされています。折角の自然をどのようにして守っていくのかが待ったなしの課題となっているのです。
小笠原諸島は父島と母島をはじめ、硫黄島、沖の鳥島等から構成される亜熱帯の地域で、父島と母島には約2,700人が暮らしています。国会に提出されている交通基本法案はまだ審議すらされていませんが、村の方々の移動の権利(交通権)をどのように確保していくかが大きな課題です。また、日本の国土面積は小さいものの、四面を海に囲まれているので、海岸から200㎞の排他的経済水域(EEZ)の広さでは世界第6位となっており、その相当部分が小笠原諸島を中心とする半径200㎞のEEZによって占められているということも忘れてはなりません。国土と国民の生活を守ることは、国の基本的な役割です。
この検討は、昨日で私たちの手から離れ、今後は小笠原村と東京都で空港の設置等について協議が行われることになります。速やかに建設的な議論がなされ、対策が進められることを期待しています。
今日、沖縄県の慶良間地域でエコツーリズムの全体構想が認定され、美しいサンゴ礁の海域において日本で初めての立ち入り制限を含む措置が導入されることになりました。私が議員立法で成立させた「エコツーリズム推進法」「生物多様性基本法」が現実に生かされている小笠原で、環境と観光と地域経済のどれもが発展していくことを心より祈念しています。
「百聞は一見に如かず」です。皆様も是非小笠原にお出かけいただき、素晴らしい自然を堪能してください。