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一票の格差

1017日に最高裁判所は大法廷を開いて「平成227月の参議院議員選挙については、一票の重みに5倍の格差があり違憲である」と判決を下しました。「平成218月の衆議院議員選挙は違憲状態である」との昨年3月の最高裁判所判決よりも更に一歩踏み出した判決となりました。

最高裁判所から「衆議院議員選挙も参議院議員選挙も双方ともに違憲状態にある」と指摘されていることは大変由々しき問題です。一刻も早く国会において、対処しなければなりません。さもなければ、遅くとも来年夏までに行われる衆議院議員選挙の結果自体が無効ということにもなりかねません。判決が下されてから1年半以上放置している国会議員に猛省を促したいと思います。国会関係者の意識の改革が必要です。

衆議院議員選挙についての昨年の判決では、一票の重みが最大で2.30倍となっていることは違憲であると示され、参議院議員選挙についての今回の判決では一票の重みが最大で5.00倍となっていることが違憲であるだけではなく、憲法に規定されている参政権を有権者が享受するためには、各都道府県に1議席を配分する選挙区割りの考え方に無理があると示しています。これは、衆議院議員選挙においても、各都道府県にまず1議席を配分し、その後人口に応じた議席を割り当てるという選挙区割りの方法が違憲であると判断していることになります。

現在、衆議院では最大の千葉県第4選挙区の有権者数が496,141人、最少の高知県第3選挙区が207,668人で2.39倍の格差となっています。参議院では1議員あたりの有権者数が最大の神奈川県(定員6名)では1,225,141人、最少の鳥取県(定員2名)では242,484人で5.05倍となっています。有権者一人あたりの一票の重みがこれほど違っているのです。(東京都の参議院の定員は10名で、参議院議員の最大の定員を有する都道府県ですが、1議員あたりの有権者数では神奈川県が最大となっています。)

私が住んでおります兵庫県第1選挙区(神戸市東灘区、灘区、中央区)の人口は462,783人で、有権者数は371,237人(平成223月末現在)ですので、最少の高知県第3選挙区と比べると有権者数は1.79倍となっています。

このように、地方に厚く、都市に薄い議席の配分が、有権者の動向や意識を国会に反映してこなかった大きな原因であると私は考えています。有力議員の多くが地方選出であり、地方の声が重視される政治が長く続いてきましたが、最高裁判所判決で示されているように、有権者の声が正確に国会に届くような議席の配分が必要です。そうすることによって、私たち都市住民の声がもっと国会に伝わり、古い政治の体質が変わっていくことになるのです。国会議員の行動も、日本の政治も変わっていきます。

選挙制度のあり方については、「小選挙区制度の方が安定した2大政党制を可能にする」のか、「中選挙区制度の方が死票を減らして少数意見を反映するから良い」のか、議論が開始されています。国会のねじれと決められない政治の現状から、衆議院と参議院の二院制についても、今のままで良いのか、衆議院の優越を強めていくのか、一院制にしていくのか、議論が必要となっています。

私は衆議院議員選挙を2度しか経験していませんが、死票を減らす中選挙区制度のほうが私たち日本人には合っているように感じられます。A政党かB政党のどちらかを選択して、他方を切り捨てるという二者択一方式は狩猟民族の欧米の方には良いのかもしれませんが、地域の全員で農作業を手伝って暮らしてきた農耕民族の私たち日本人にはしっくりこないのではないでしょうか。A政党もB政党も、またC政党も当選して様々な有権者の考えを反映することが可能である、一つの選挙区で35名の議員を選出する中選挙区制度のほうが良いのではないかと考えます。

また、二院性の問題については、「衆議院の決定をそのまま承認するだけの参議院であれば不要であり、衆議院の決定に何でも反対する参議院であれば邪魔である。」といわれています。何も決められない政治の大きな原因であるねじれ国会を変えていくためにも、衆議院と参議院の役割分担を見直していくべきです。アメリカでは、上院は各州から代表を出して地方(各州)の声に配慮し、下院は国民の声を代表するために人口の変化に合わせて10年毎に定数を自動的に見直しています。このようなアメリカの上院と下院の制度を見習うことも考慮すべきです。

人口構成に合致した選挙制度に変えていかなければなりませんが、地方の声にも十分に配慮しなければならないと私は考えています。私たちの暮らしは都市だけで成り立つものではありません。私たちの日常の生活に欠かせない電力も食料も水も、地方があるからこそ都市の快適な生活が可能なのです。また、それぞれの地域にお住いの方がいるからこそ、地域が荒廃することなく、国土が成り立っているのです。人口に合わせた議席配分、衆参両院の役割分担、都市と地方の調整を、選挙制度改革では同時に進めていかなければならないのです。

不毛な対立を続ける政治には私たちみんな飽きあきし、いい加減にしてくれと思っています。このような現状が政治への不信感を高めているのです。国会で前向きの建設的な議論が戦わされるようになれば、政治への期待も戻ってくることでしょう。選挙制度のあり方も含めて、早急に議論し問題を一つひとつ解決していくことを望んでいます。国会議員が党利党略で選挙制度改革を進められないのであれば、有識者等の第三者によって制度改革を行うことが出来るように、変更していかなければならないと考えています。

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