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野党の審議拒否

416日(火)に平成25年度予算の衆議院本会議での採決が行われました。民主党、維新の会、みんなの党等の野党が反対討論を行ったため、夜の8時頃までかかりましたが、やっと可決して参議院に送付しました。これで515日までには本予算が成立することになり、ホッとしています。

ところで、同日、議院運営委員会が開催され、衆議院選挙区「05減」の区割り改定のための公職選挙法改正案の委員会付託が決められたのですが、野党は同委員会を欠席し、翌17日(水)午後の党首討論までの「プチ審議拒否」に入りました。その理由は、「05減では違憲状態を解消できない。抜本的改革が必要である」というものです。

確かに、「05減」法案だけでは違憲状態を解消できず、抜本的改革が必要です。しかし、昨年11月の衆議院解散直前に「次の通常国会で「05減」を成立させる」と自公民で合意をしているのですから、舌の根も乾かないうちに前言を翻す民主党のやり方はいただけません。

最高裁判所は、各都道府県に1議席を割り振る制度そのものを違憲であるとしているのですから、抜本的改正が必要ですが、その改正案の成案を得るには相当の議論と時間が必要になります。平成249月時点では有権者数が最少の高知3区は205,461人、最大の千葉4区は497,350人(2.42倍)で、私の兵庫1区では372,765人(1.81倍)となっています。有権者一人あたりの票の重みを同じにするためには、都道府県や市町村の境を越える選挙区の設定等について、議論が必要となります。 

アメリカの下院では有権者数にあわせて10年毎に選挙区の見直しをしているため、ゲリマンダー(gerrymander)といわれるようにいびつな形の選挙区ができています。日本でもこのように変形の選挙区を作ってでも一票の格差をなくすかどうかの議論が必要です。また、有権者数に応じた議席配分をすると都市部の議員数が多くなり地方選出の議員数が減少しますが、地方の声をどのようにして国政に反映させるべきかについても考えなければなりません。さらには、衆議院と参議院の二院制のあり方についても議論が必要となっています。

これらについて簡単にこの通常国会で成案が得られるはずがないにもかかわらず、抜本的改革が必要との理由で審議拒否をするやり方は、「国会審議を妨害するための反対」でしかありません。また、TV中継のある党首討論は予定通り行いたいという理由で、15時には審議拒否を取り下げるのですから、何のために審議拒否をするのかが分からなくなります。

55年体制のように野党が無責任に「何でも反対」と主張することなく、内容に応じて堂々と「是々非々」で対応するように野党各党にその対応を変えて頂き、各党が党利党略ではない大人の行動をとることによって、有権者から信頼される国会審議が行われることを願っています。

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我が国にとってのTPP

TPP(環太平洋パートーナーシップ協定)」については、TVや新聞各紙で多くの識者からの様々なご意見が述べられております。私は長く政府の一員として、国連、WTOOECD、日米、日EU等の国際交渉に参画して参りましたので、その経験も踏まえ、以下に私の考えを述べたいと思います。

 第一に、我が国の国土には資源が乏しいため、原材料を輸入し加工して輸出する貿易立国であるということを忘れてはなりません。石油・石炭・鉄鉱石・小麦・大豆・トウモロコシ・肉・魚等の資源や食料を輸入することが出来なければ、私たちの生活は一日たりとも成りたちません。また、自動車・電気製品・機械等の製品の輸出が出来なければ、私たちの豊かな暮らしは根底から崩れてしまいます。

例えば、中国がレアアースの輸出を制限したために、原材料の一部が不足して自動車、携帯電話や高度な電気製品の製造を制限せざるを得なくなりました。また、国によっては自動車等に250%の高額関税をかけており、日本からの自動車の輸出が制限されています。あるいは、日本製品の不買運動が起こっても、輸出は制限されてしまいます。輸出入が規制されれば、資源を輸入し、製品にして輸出し、その利益で生活をするという私たちの暮らしは成り立たなくなるのです。

帝国主義の各国が自国の利益ばかりを主張することにより第二次世界大戦は起こりました。その反省に立って、国際連合等の国際協調を図る仕組みが作られてきたのです。貿易の分野では、高額の関税を設定したり、不公正な取引を認めて自国の産業を保護するようなことを防ごうと、国際社会は障壁を取り除く努力を続けています。昭和23(1948)年にはGATT(関税および貿易に関する一般協定)が発足して、各国間の貿易自由化に向けての交渉が開始されました。自由貿易の促進については何度も交渉が重ねられ、昭和48(1973)年には東京ラウンドが、昭和61(1986)年にはウルグアイ・ラウンドが開始され、我が国も主要な役割を果たしてきました。平成6(1994)年にはWTO条約が調印され、翌平成7(1995)年にGATTWTOに移行し、「モノ(goods)」の輸出入だけではなく「サービス(services)」も含めて引き続き自由化交渉が続けられています。

しかし、WTOには159の加盟国があるため、交渉をまとめて包括的な国際通商ルールについて合意を得るには膨大な時間と労力が必要です。例えば、平成13(2001)年に開始された新多角的貿易交渉(ドーハ・ラウンド)は暗礁に乗り上げており、成立の見込みが立っておりません。そのため、いつ成立するか分からないWTOの交渉とは別に、一部の国や地域においてFTA(自由貿易協定)やEPA(経済連携協定)が結ばれて、自由貿易の促進が図られるようになっているのです。

 TPPもそのような協定ですが、太平洋を取り囲む北米・中米・南米、アジア、大洋州の多くの国が参加していることでWTOルールに匹敵するような重要性を持っているものです。多数の主要国が参加して取り決める国際ルールに、貿易立国である我が国が入らないという選択肢はないのです。

 第二に、交渉は原案を作成する人(国)が強いということです。なぜならば、その原案を基に修正を加えて合意を図っていくからです。銀行間のルールを決めるBIS規制(バーゼル合意)や、国際的な会計ルールを決めるIAS(国際会計基準)等は欧米が主導して骨格が決定され、我が国はそれを認めて加入するか加入しないかの選択しかありませんでした。我が国は国際ルール作りに主導的な役割を果たすことが不得手です。日本人は「決められたルールの中でどうすればうまくいくのか」を考えることは得意です。しかし、欧米人は「うまくいかないならそのルールが悪いのだから、ルールを自分たちの都合に合わせて変えれば良い。」と考えるのです。これでは喧嘩になりません。相手の土俵で戦うのではなく、自分の土俵で戦えるようにすることを考えるべきです。(柔道は日本の国技でしたが、いつの間にか欧米がルール作りを主導して、日本はその決定に従うようになっています。)

TPPに関しても、民主党政権下においては「ああでもない。こうでもない。」と小田原評定をして群盲像を評する状態のままで一向に議論が進みませんでした。本年1月の安倍・オバマの日米首脳会談では、米国が自公連立の新政権を今度は交渉するに足る政権であると考えてくれた為でしょうが、「交渉に聖域は存在する。各国の状況をふまえた合意を行う。」ことが明確にされました。これだけでも、この3年半近く進んでいなかったTPPに関する理解が大きく深まったといえます。

 315日に安倍総理が発表したように、「農業や国民皆保険制度等を絶対に守る」ためにも一日も早く交渉に入るべきです。我が国の立場、どうしても譲れない分野は何であるのかを明らかにして、我が国の国益に合致する内容のTPPにしていかなければなりません。参加が遅れた日本は既に交渉の原案を作成する立場にはありませんが、主要参加国として我が国が参加できる内容に修正していかなければなりません。

 TPPに関しては農業や国民皆保険制度等の否定的な意見が多く表明されていますが、TPPに参加する大きなメリットについて忘れてはなりません。日米の二国間交渉では米国の主張に押されて日本の主張が通らないことでも、TPPのような多国間交渉では各国と共同して主張することにより、我が国にとって有利なルール作りをすることが可能となります。また、TPPで合意が成立すれば、現在TPP交渉に参加していない中国等に対しても、先進国の基準では考えられない中国の制度を改めて国際社会が認めるルールへ変更するよう働きかけていくことが出来ます。逆に、TPPに日本だけが参加せず、中国も含めて大多数のアジア・太平洋地域の国が参加すれば、日本の主張が全く反映されないルールを受け入れざるを得なくなる可能性があるのです。

一昨年311日の東日本大震災と東電福島第一原子力発電所事故により、東北地方の製造業が大きな打撃を受けた上に放射能の風評被害により我が国の輸出は大きく減少しました。一方、原子力発電所の稼働停止により石油・石炭・LNGの輸入が増加して、日本の貿易収支は31年ぶりに赤字に転落しました。そして、昨年も今年に入ってからも引き続き赤字の状態です。このような状況が続けば、日本はどうなっていくのか、いうまでもありません。世界と貿易を行い、利益を上げて貿易収支を黒字基調にしていかなければ、暮らしていくことはできず、私たちの未来はないのです。

WTOTPPのような貿易の国際ルールに参加せず、日本だけが独自の道を進むという選択肢をとることはあり得ないのです。自由貿易社会があるからこそ、我が国の繁栄があるのです。(第二次世界大戦に突入したのは、日本に対する石油その他の物資が規制されたことが大きな背景となっています。)TPPに対するディメリットばかりを議論するのではなく、どうすればそのディメリットを克服することが出来るのか、我が国が国際社会で重要な役割を果たしていくためには何をなすべきか、国民全員で考えていくべきではないでしょうか。

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夜桜の通り抜け

今年も王子動物園の「夜桜の通り抜け」の時期がやってきました。

私の事務所がJR灘駅の北側にあり、お花見のお客様が王子動物園に向かわれる通り道に位置しているため、この時期は大勢の方が通られますし、歩道には様々な屋台が立ち並んでいます。例年46万人の方が足を運ばれると聞いていますが、私もその一人となって、他のお客様と共に事務所から王子動物園に向かいました。

警備の方が大勢立って、いつもの通路を閉鎖して一方通行にしてお客様を誘導しています。王子競技場の方から回って、動物園の入り口に着くと、ライトアップされたソメイヨシノが観覧車やキリンのオブジェとマッチして見事です。入り口の門を抜けると満開の桜が迎えてくれます。東京は先週末(330日、31日)が一番の見ごろで、そろそろ葉桜となっているのですが、例年、東京よりも神戸の方が数日開花が遅く、ちょうど今が見ごろとなっていました。

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両側に並んだ桜の枝が通路の上に張り出し、桜並木のアーチになっています。少し風が吹いてくると、桜吹雪となって花びらが舞い、お客様から歓声が上がります。片手にお酒が欲しいと思われる左党の方もいらっしゃるのでしょうが、殆どの皆様は見事な桜に見とれて満足された表情でゆっくりと歩いておられます。花冷えでコートを着ていても震えあがるような通り抜けの年も多かったのですが、今年は暖かで気持ちの良い、絶好の夜桜日和でした。

唐代の詩人劉希夷(651680?)は「年年歳歳花相似たり 歳歳年年人同じからず」とうたい、平安末期から鎌倉初期の西行(11181190)は「ねかはくは はなのもとにて 春しなん そのきさらきの 望月の比」と読んでいます。花に対する思いは人様々ですが、花の美しさに感動する心は昔も今も変わりません。通り抜けは無料ですが、桜の維持管理や警備の費用にあてるため、入り口や出口に募金箱が置かれていました。来年もまた、桜を愛でたいと思って小銭を入れました。

出口から阪急の王子公園駅に向かう通路で、「さあ、これからどこへ行こうか」と相談しているグループがいました。今日は「ハナ金」です。気持ちの良いお酒が楽しめますね。

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呑めば、都

タイトルに惹かれて『呑めば、都―居酒屋の東京―』を手に取りました。

「東京の居酒屋の紹介かな」、「たまには行ってみたいな」、「それにしても通の江戸っ子ではなく、何故外人がそのような本を書くのだろうか」と不思議に思いながら、本を開きました。

著者のマイク・モラスキーさんはアメリカ人で一橋大学社会学研究科教授。ジャズ・ピアニストで、昭和51年に日本の土を踏んで以来、アメリカにはない居酒屋・赤提灯に惹かれて毎晩のように東京探索を続けておられるようです。それも、新宿や新橋といったサラリーマンが良く立ち寄る地域からではなく、京成線の各駅停車しか停まらない葛飾区の「お花茶屋」や「立石」という、なかなか訪れるチャンスのない沿線から居酒屋探訪を始め、30年以上にわたって今も続けておられます。(一般的に西欧人のほうが日本人よりお酒に強いのですが、それにしても鉄の肝臓をお持ちの方のようです。)

ミシュランのガイドブックのようなお店の紹介かと思いきや、料理やお酒についての記述はあるものの、むしろ居酒屋という「場」に集まるお客や居酒屋の機能・役割についての記述が中心となっています。また、その居酒屋が位置する街の第二次大戦後の発展・歴史について述べられた郷土史であり、地域紹介の本なのです。

私自身大学入学以来40年以上東京で暮らしていますが、私が殆ど訪れたことのない、溝口、府中、平和島、大井町、洲崎、木場、立川、赤羽、十条、王子、国立等の地域を取り上げ、失われつつある戦後の空気・雰囲気や日本人の心について居酒屋を舞台に記述したモラスキーさんの地域文化論となっています。

固い学術書ではなく、一人でついニンマリとしながら読むような本ですので、ご興味のある方は是非ご覧下さい。

マイク・モラスキー『呑めば、都―居酒屋の東京―』筑摩書房、2012年、¥2,205

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