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横断歩道橋のバリアフリー化

 平成10年、私が運輸省消費者行政課長の時に50億円の予算を獲得してスタートした駅にエレベーター・エスカレーターを設置するバリアフリーはまたたく間に広がりました。平成12年には交通バリアフリー法を成立させ、新たに作る駅や空港ターミナル等にはバリアフリー化を義務づけ、「バリアフリー」は誰でもが知る言葉となりました。

 駅の中のバリアフリーは相当進展しましたので、今度は駅を中心に街全体にバリアフリーを広げようと、交通バリアフリー法とハートビル法を合体させたバリアフリー新法を作るため、今度は議員の立場で自民党バリアフリー議連の事務局長として関係者間の調整を行い、平成18年に成立させました。

 街のバリアフリー化というのは、駅の改札口を出ると歩道の敷石がガタガタしていてつまずき易くなっていたり、歩道が車道との関係で波を打つように高低差があったり、駅前に放置自転車が多く歩き難かったりする状況を改善していくことです。

 その中でも一番大きな課題は横断歩道橋の問題です。昭和30年代、道路の整備、日本のモータリゼーションの発展と共に道路交通事故が急速に増加しました。交通事故を防ぐ観点から交通信号を増やすと共に横断歩道橋の設置が始まりました。私も小学生の頃、小学校の横に設置された横断歩道橋の渡り初めに皆で出かけた思い出があります。戦後の復興、経済成長を重視していた当時は横断歩道橋が人のためにも車のためにも最先端の政策であったのかもしれません。しかしながら横断歩道橋は車優先の時代のものであって、高齢者が増加した現在、見直されるべきものです。特にスロープのない横断歩道橋ではお年寄りがカートを引いて日常の買い物に行くのに大変です。毎日の買い物も2日に一度にしようかと、横断歩道橋のことを考えるだけでおっくうになってしまいます。また、赤ちゃんや小さいお子さん連れのお母さんにとっても、ベビーカーを折りたたんでの階段の上り下りは外に出かける気持ちをなえさせてしまいます。

 車優先であった道路行政、都市行政を人間中心のものに変えて行かなければなりません。横断歩道橋を撤去して、信号と横断歩道に転換していくべきです。道路交通量が多くて、どうしても横断歩道橋を撤去できない場合には、横断歩道橋にエレベーター・エスカレーターをつけるバリアフリー化の工事をしていくべきだと考えます。バリアフリー新法の対象となる一日あたり5000人以上の乗降客がいる鉄道駅は全国で約2801駅なので、これらの駅全部のバリアフリー化を目指して平成10年からとりかかっているのですが、それでも現在63%の進捗率です。ところが横断歩道橋となると全国で1万1373ヶ所あり、全てのバリアフリー化は困難です。そのため、各地域で重点的に取り組む所を決めて整備を進めていくことにしています。

例えば、神戸市東灘区の阪神深江駅南側の国道43号線深江交差点にある大きな横断歩道橋については、大型トラックの交通量が多いため、横断歩道の設置は道路交通管理者側から困難であるとの回答があり、深江地域の自治会の皆様と私がねばり強い交渉を重ねた結果、エレベーターが設置されることとなりました。平成21年度末までの完成を目指して、現在設計その他の準備を進めているところです。

 道路をはじめ、公共事業についてはもう7年以上毎年予算の削減が続いています。また、その使い道についても大きな批判にさらされています。正すべきところは正すべきであると思いますが、幹線道路の整備やバリアフリー化のように国民にとって必要な工事についてはストップすることなく続けていくべきです。

 道路財源の一般財源化についてこれから国会で議論が進められていきますが、納税者である国民が何を必要としているかを十分に踏まえて議論をすべきですし、そして、その中には少子高齢化社会を迎えた日本にとっては横断歩道橋のバリアフリー化等、暮らし易い環境を整えることが重要であるという視点を忘れてはならないと考えています。

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観光庁の発足とエコツーリズム

 今年10月1日に観光関係者にとって永年の念願でありました観光庁が発足致します。

 日本における観光行政は、昭和5年に鉄道省国際観光局として外国人の訪日観光振興を目的に設置されたことにより始まりましたが、昭和43年の各省一局削減により運輸省観光局は運輸省大臣官房観光部へと格下げになりました。昭和59年に運輸省国際運輸・観光局として局の名称に観光の文字が復活するものの、平成3年には再び運輸省運輸政策局観光部となり、平成13年に国土交通省が発足した際にも総合政策局観光部となって殆ど変更はありませんでした。

 産業行政を重視し、観光行政については軽視するという戦後復興、経済成長至上主義が改められたのは、平成15年に小泉総理直轄の観光立国懇談会が設置され「ようこそジャパン!」キャンペーンが始まり、重厚長大産業ではないソフト産業の観光に目を向けられてからです。

 平成16年には観光部を局長級の総合観光政策審議官とすると共に、4課2参事官体制に組織強化しました。我々も尽力した観光立国推進基本法が平成18年12月に議員立法で成立し、これによりやっと昨年夏の予算要求で、国土交通省は観光庁を要求することを決意し、今年10月の観光庁発足に至ったものです。

 外国ではギリシア観光省、フランス政府観光局等、国を挙げて観光に取り組んでいることから、これまで我が国の観光行政は「日本は貿易でもうけているせいか、観光に力を入れていませんね!」と言われ肩身の狭い思いをしていましたが、これでやっと諸外国と肩を並べることができるようになったと嬉しく思います。

 さて、これ迄の観光行政は宿泊施設や交通機関といったハードの整備に重点を置いてきましたが、これからの観光振興になくてはならないものはお客様にどのようにして楽しんで頂くかというソフトの充実です。

 国土交通省では観光カリスマを選定して観光分野で第一人者の方々にそのノウハウを各地に伝えて頂く等ソフトを重視してきています。しかしながら、ハードの整備と違いソフトの分野はその地域その地域で状況が異なりますので、日本全国同じという答えはありません。試行錯誤を繰り返しながら、その地域独自のオンリーワンの観光を産み出していって頂く必要があります。

 ところで、昨年6月に私が中心となって議員立法化したエコツーリズム推進法が今年4月に施行され、この6月6日に基本方針が閣議決定されました。エコツーリズムは里地里山等これ迄の観光地ではなかった地域でも都市と地域の交流、地域の振興、環境への認識を深めるソフト重視の観光です。オ-ストラリアやニュージーランドでは観光の30%を占める程人気のある分野になっています。エコツーリズムの様なこれ迄にない新しい分野の観光も活用して我が国の観光振興に役立てて頂ければと考えます。

 10月の観光庁の発足によって、これまでとかく縦割りだった行政の壁を破って、日本の観光が発展していくことを心より願っています。

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食料自給率の向上

 世界の食料需給は、この一年で、これまでの生産過剰・緩和傾向から一変して逼迫し、食料価格が高騰しました。この背景には、中国・インドをはじめとする途上国の経済発展に伴う需要増、バイオ燃料の需要、気候変動などとともに投資資金の流入があげられます。生産国によっては自国民への食料確保を優先するため輸出規制を行い、その結果途上国によっては食糧を求める暴動が起こる深刻な事態となっています。

 このため、我が国は5月に横浜で第4回アフリカ開発会議(TICAD Ⅳ)を主催し、アフリカ諸国に対する支援を表明しました。また、7月の洞爺湖サミットでも本来想定されていなかったこの食糧問題が取り上げられ、先進国としての途上国に対する支援が合意されました。

1リットル180円台にまで上がったガソリン程ではありませんが、穀物の輸入価格も上昇し、その結果、パンやうどん、バター、チーズ等の店頭価格も上がっていることは皆様日々感じておられるとおりです。値段が上がっても必要とする食料を確保出来るうちは良いのですが、いつまでも安い価格で欲しいだけ食料を輸入することが出来るとは限りません。今後の途上国を中心とする世界の人口増加、途上国の経済発展を考慮すると、今の段階から我が国においても食料の確保に努めなければなりません。

 現在の日本の食料自給率はたった40%です。6割の食糧を輸入に依存しているにも関わらず、日本では家庭において廃棄される食料が年間1070万トン(一人当たり84kg)にも上っています。我々が子どもの頃は、ごはんを残すと「お百姓さんが汗水たらして作ったお米ですから一粒残さず食べなさい。」と親に叱られました。また、以前はごはんが主食でおかずは少なく、ごはんをおかわりしたものですが、今では沢山のおかずでお腹がいっぱいになり、ごはんは少しだけというように大きく食生活が変わり、家庭でも外でも食事を残して当たり前になってきています。

 食べ物に困らない豊かな食生活になったことは戦後の経済成長のおかげですが、食料の生産・流通に関わる多くの関係者の皆様に対する感謝の心を忘れがちではないでしょうか。「もったいないという心」「食べものを大事にして無駄にしない。」という観点から、我々の日常のライフスタイルを見直していく必要があるのではないかと思います。

 アメリカやフランスは先進国ですが、実は大農業国で、更に食料を輸出している国なのです。日本の食料自給率40%というのは先進国の中でも格段に低く、せめて50%に迄引き上げていく必要があります。

 昨年末、冷凍ギョウザ問題等で食の安全に対する関心は高まってきています。野菜、果物の残留農薬、遺伝子組み換え作物、肉や魚の化学物質の存在等、これ迄以上に消費者の食品を見る目が厳しくなり、低農薬や有機栽培の野菜、果物は高くても売れる様になってきました。

 食の安全安心、さらに食の安全保障の観点からも、日本の農業、漁業関係者の方への期待は高まっています。若者が農業、漁業に従事したいと思うような魅力ある職域にしていく必要がありますし、諸外国との競争もあります。大変厳しい環境ですが、市民の皆様に安全、安心な食を安定して提供して行けるよう、また、食料自給率の向上に努めて行きたいと考えています。

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下水道でバスが走る

 皆様がご家庭の蛇口から飲まれる水が上水といわれるのに対して、ご家庭の台所や風呂、トイレから出される生活排水を下水といい、臭い、汚いというイメージを持たれていると思います。我々が衛生的で快適な日常生活を送ることができるのは、上水道と下水道が完備しているからで、世界中ではまだまだ衛生的ではない水を汲みに行かなくてはならない地域や、汚水がたれ流しで病気が蔓延している地域があります。

 さて、ご家庭や企業から流し出された排水は、下水道を通って下水処理場に集められ、浮遊物や固形物を沈殿させ、空気を入れて汚れの成分を微生物で分解し、最後に消毒をして魚が住めるきれいな水にして海や川へ戻します。この様な処理場のひとつが神戸市東灘区にある東水環境センターなのですが、ここには他の処理場にはない日本で唯一の設備があります。それは汚泥処理をする時に発生するメタンガスを高純度化し、精製する設備なのです。

 汚水は様々な段階の処理を経てきれいな水にして海や川に戻すのですが、その過程で下水として流される水に含まれる野菜くずや紙、便等の様々な固形物や汚れの成分を分離した「汚泥」といわれる物質が発生します。(これが臭いといわれる悪臭の原因なのです。)大量に発生するこの汚泥の処理が大変で、最初は水分を減らして埋めていたのですが、最近では焼却をして灰にしたものを歩道のブロックを作る材料にしたりして、上手に活用するようになっています。この汚泥処理の際に発生するメタン等のガスを、神戸市の東水環境センターでは自動車を走らせる燃料として利用できる施設を作りました。

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 ここには汚泥を一定温度に保ってメタンガスを発生させる高さ約30mの卵型の設備と不純物を取り除いてメタンガスだけを分離する設備があります。

 さらにこのメタンガスをバス等の圧縮天然ガス(CNG)自動車に注入するバイオガスステーションを設けています。今年四月にこの設備が動き出して以来「こうべバイオガス」として神戸市交通局のCNGバスや神戸市が保有するCNGで走る道路パトロールカーやゴミ収集車等毎日30~40台の自動車に注入しています。

 CNGバスは屋根の上にラクダのこぶの様な形のガスボンベを乗せたバスで、普通のバスの様に軽油で走るのではなく、こうべバイオガス等の圧縮天然ガスを燃料とするバスで、排気がクリーンで、脱石油、省エネルギーの観点からも地球温暖化防止の観点からも優れたバスです。東灘区内を走っているCNGバスの燃料の一部は市民の皆様が流しておられる下水から燃料を取り出しているのです。排気ガスも臭くありませんので、是非、東灘区内を走るCNGバスに乗ってみて下さい。

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タクシーの規制緩和

 7月に入ってからタクシー行政の規制緩和の見直しの方針が出されて、新聞等でも是か否か良く取り上げられるようになりました。否とするものは、一旦規制緩和したものを規制緩和に逆行する参入規制を今頃何故行うのかというご批判です。

 この問題を考える際に忘れてはならないことは、タクシーを始めとする運輸サービスには、他の業種と大きく異なる特徴があるということです。それは保管することができる品物ではない、お客様が必要とする時にいつでも利用できる状態にしておかなければならない運輸サービスだということです。

 例えば、早朝や深夜にタクシーを使うこともあれば、急に雨が降ってきてタクシーが必要になることもあるでしょう。郊外の駅でバスがなくなった後の時間に家まで利用されることもあるでしょう。地域住民にとって不可欠な公共交通サービスであるタクシーは、出来る限りこの様な様々なお客様のご要望に応えられるように配車しなければなりません。

 また、清潔な車輌であること、短い乗車距離でも気持ちの良い返事が返ってくること、地理を良く理解していて行き先を告げたら確実にお客様をご案内すること、そして何と言っても安心して乗れる運転でなければなりません。

 外国でタクシーに乗られた方にはご理解頂けると思いますが、日本のタクシーは国際的にみても高い水準にありますし、汚いとか、いくらとられるか分からないとか、怖いとか心配して乗る必要のない現在のサービス水準を維持していく必要があると私は考えています。

 ロンドンのタクシーはロンドン市内の隅々まで良く地理を理解していなければならないので、その試験に合格するのは大変であると有名ですが、ロンドンでもニューヨークでも厳しい試験やタクシーの数を制限して、そのサービス水準を維持しているのです。

 ところが、日本では6年前にタクシーの規制緩和を行い、その結果、車両数は8%増えました。利用者にとっては、いつでも乗れるということは有り難いのですが、タクシー全体の売り上げは約2%減少し、タクシー1台当たりの売り上げは逆に約4%減少してしまいました。

 タクシーの運転手さんの平均収入は今や年間約340万円となり、日本人の平均収入の約6割にとどまっています。地元神戸のタクシー運転手さんからは「いくら頑張っても、生活保護と同程度の収入しかないんや!」と悲鳴が上がっています。

 現状では、会社が倒産して職を失われた方や年金収入等タクシー以外の収入のある方しかタクシー運転手に応募して来られません。「タクシーの運転手になろう」と若人が思うような状態にしていかなければ、タクシーの将来はありません。

 自由競争を導入することは、一般論としては良いのですが、一部の人だけが勝ち残って、その他多勢の人が敗れてしまう社会にしてはならないと考えます。市場原理による自由競争を至上命題とするのではなく、ストック(保管)できないというタクシーの特性を良く理解して、利用者、タクシーの運転手さん、タクシー会社が共存共栄できるように公共交通機関としてのタクシーのあり方を見直していく必要があると考えます。

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