6月のNHKスペシャルで放送された「密使 若泉敬 沖縄返還の代償」を見て以来、今夏から「他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス」(若泉敬著)を読んでいた。
大作であることと、元来読書スピードが遅いこともあり、2ヶ月ぐらいは読み続けた。
折りしも、核をめぐる密約があったのか、なかったのか、沖縄普天間基地移設問題、基地の在り方ということが国会でも取り沙汰された時期だっただけにテレビも注目度が高かったと思う。
しかし、私がこの本を読んで一番感じたのは、今日的な社会的背景よりも、戦後沖縄の本土復帰を実現するために表舞台に出ることもなく一国の全責任を背負って米国と折衝し、それを実現に至らせた一学者の愛国心(という表現が正しいかどうか)、事を成し遂げた後、その後の沖縄の基地の有り様に心砕き、最後には自ら命を絶った壮烈な生き様だ。
明治維新のようなこの国のカタチを定めるというあまりにも壮大、しかし主な国家的課題がシンプルであったであろう時代から時間が経ち、国家運営は内政・外交を含め複雑の一途をたどっていた中での沖縄の本土復帰を実現させるために何をなすべきかということに、文字通り命がけで当たったことに、翻って今の日本のことを考えさせられた。
全くおこがましい話だし、ここまでのスケールや抑揚がつくことはないが、自分の生き方にも大いに参考になった一冊。
ちなみに、本の題名「他策ナカリシヲ信ゼムト欲ス」は陸奥宗光の言葉だそうです。