戦争を詠む 朝日新聞朝刊朝日歌壇より(毎週日曜日掲載)
朝日歌壇の入選歌(選者は永田和宏さん、馬場あき子さん、佐佐木幸綱さん、高野公彦さん、)より、戦争を詠んだ歌を、わんちゃんが独断で選り抜きを。
★⇒【評】☆⇒共選作
2024年6月編
<永田和宏選>
ガザに比べれば逮捕はなんでもないコロンビア大学ユダヤ人学生が(八王子市) 額田 浩文
★ガザ問題にアメリカの学生たちは真剣だが、わが国でも同様の動きが各地で広がり始めている。
「爆撃で死ぬなら家族一緒がいい」ガザの家族は一緒に寝たり(八王子市)額田 浩文
運ばれた母より胎児取り出され生まれながらに孤児となりし子(川崎市)宇藤 順子
原爆は「そりゃもう」と絶句して後を続けず逝きしヒバクシャ(アメリカ)大竹 幾久子
「戦争を知らない子供たち」は今戦争を知らない老人になりぬ(横浜市)曽原 哲
☆ラファを去る姉妹は口を一文字に結んでペットの鳥を逃がしぬ(横浜市)竹中庸之助
★ラファを去らねばならなくなった幼い姉妹。「口を一文字に結んで」に悲しくも毅然(きぜん)とした決意が見える。
「死者」なんてたやすく呼ぶなガザの子は死んだんじゃない殺されたのだ(佐野市)阿部 忠雄
砲弾を込めて背を向け耳塞ぐ幾度も兵士はそを繰り返す(岐阜県)日比野和美
<馬場あき子選>
二千人逮捕されても反戦の声高らかに米の学生(取手市)緑川 智
一望の瓦礫のほかは見えねども一万人が埋もれいるガザ(八王子市)額田 浩文
はつなつの「風通し」さるる三十三万余の哀しき原爆死没者名簿(鹿嶋市)大熊佳世子
☆満州を青酸カリ持ちて生き延びし叔母百二歳にてみまかりたまう(須賀川市)渡辺久美子
★満州は日本の敗戦とともに消滅した傀儡(かいらい)国家。多くの日本人が死を覚悟して迷走し帰国を求めた。叔母上の人生が偲ばれる。
<高野公彦選>
憲法の記念のつどいに前文を音読すれど若人はいず(磐田市 海山 綾子)
ガザの子の白黒写真と目が合いぬ葱包まれし新聞畳む(佐伯市)川西 敦子
地獄での悪魔の叫びに聞こえたりロシア兵士の万歳(ウラー)の雄たけび(五所川原市)戸沢 大二郎
戦争に学成らざりし兄あはれ孫娘をば医者にさせたり(札幌市)木下 澄子
「死鬼不夢(シオニズム)」と書いて抑える腹の虫いつまで続く残虐非道(五所川原市)戸沢 大二郎
戦争は始めるよりは止(や)めるのが難しいのだプーチン、ネタニヤフ(船橋市)佐々木美彌子
戦争をはじめる人は戦争へは行かない しなない だからやめない(萩市)石飛加名子
ラファを去る姉妹は口を一文字に結んでペットの鳥を逃がしぬ(横浜市)竹中庸之助
★140万人以上が避難し、ガザ地区最後の砦(とりで)とされてきた「ラファ」。
イスラエル軍が大規模な地上作戦を行うとして、人々は再び避難を強いられています。
一番の願いは失業することと没後七十年のキャパは言いしよ(東京都)新井よね子
★戦争を種々の視点でとらえた歌。戦場写真を撮り続けたロバート・キャパは、自分の一番の願いは失業することだ、と言った。
満州を青酸カリ持ちて生き延びし叔母百二歳にてみまかりたまう(須賀川市)渡辺久美子
【番外編】
1.京都短歌:朝日新聞朝刊 2024年7月4日
戦絶(いくさた)えぬ星の未来を思いつつ墨を濃く磨(す)る七夕の宵(宇治)山本 明子
2.俳句と遊ぶ:夏編 しんぶん赤旗日曜版2024年6月30日号
語り部の夫も往きぬ大空襲 (福岡市)安東光子
★平和を愛しバンカラだった夫が92歳で亡くなりました。寂しいです。福岡大空襲は6月19日でした。
敗戦間近の大空襲。忘れられない恐怖。戦争の恐ろしさを伝え続けた夫君。とてもチャーミングで妻に愛され続けた夫。
焼けあとを死者のあいだを父とゆく(山梨県)深澤平助
★甲府空襲の翌日のこと。
忘れないあの放送と蝉のこえ(山梨県)深澤平助
★天皇の敗戦の放送のときのこと。
死者と蝉の鳴き声と。臨場感があり、深澤さんの少年だった時の体験ですから何もいえない。
ただただ戦争はいやだと思います。
そして戦争はいまだ続いている。
爆撃や素足で走るガザの子等(大分県)山田誠子
★本当にどうして人間って戦争をやめないんでしょうね。
シーサーのにらむ炎天オスプレイ(神奈川県)岩舘康子
★遠く沖縄を思っていらっしゃる。
私たちの世代は暑くなると戦争の記憶が……。富士眞奈美
毎年、今頃我が家の庭のフジが咲いてます。花の色はピンク色。
5月に白い花が咲いてたのと同じ藤棚のフジの木にです。
フツー藤の花は下を向いて垂れて咲くのに我が家の藤は白いのもピンクのも上を向いて咲くのですよ。