葛木御歳神社の御歳神は祈年祭の主祭神として、朝廷での祈年祭で第一番目に名が読み上げられた神様です。祈年祭はその年の五穀豊穣を祈る祭りで、秋の収穫祭である新嘗祭と共に朝廷で最も大切にされた祭りです。ここ御歳神社にも全国で唯一白猪、白馬、白鶏が献じられて大変篤く尊宗されていました。
すごい歴史のある神社だなあと思いました。でも何も不思議に思いませんでした。私の神職としての最初の師と仰ぐ先生より教えていただくまでは。。。
「白猪」ってなんだと思う?…そういえば白い猪など見た事がありません。なんとその答えが「貞観儀式」という平安時代書物に記されているのです。「貞観儀式」(巻第一・祈年祭)に「其日卯四刻、…所司辨備庶事、神祇官陳幣物於斎院、京職貢白鶏一雙、近江国豚一頭、〈月次不貢鶏・豚〉」と見える「豚」が「白猪」に相当するのではというのです。
豚って野生にはいませんよね。と云うことは養殖していたのか?養殖なら、何のために?豚は使役に使いませんね。神様へのお供え物でもありますが、御歳神さまへ供える為だけに養殖と考えるよりは、人々も口にしていたと考えたほうが自然です。4つ足の動物も食べていたのでしょうか?YESのようです。あちこちの文献をみると奈良・平安時代まではかなり肉食もされていたようです。仏教が入るにつれて徐々に禁じられていくようです。案外私たちの認識は怪しいものです。
そうするとさらに疑問が湧いてきます。「古語拾遺」には御歳神さまが、農民が牛肉を食べた事に怒って田にいなごを放って枯らしたとあります(その後怒りが解けて豊作になるのですが)。(由緒のページを参照してくださいね。)さっと読むと肉食に対する怒りだと思うのですが、もし、肉食が普通に行われていたのなら、別の理由があるはずです。ただ、ここでは牛の肉で、農耕に関係するのでちょっと複雑です。さらに、その後、神様が牛の肉を供えなさいと仰るのでさらに複雑です。そこが深い謎であり、研究者の間でも様々に議論されているようです。皆様はどう思われますか?
歴史を紐解くのはおもしろいなあと思います。白猪に注意を払わなければ気が付かないことも、ちょっとした発見でどんどん膨らんでいきます。疑問に思ったことをまた調べると、また新たな疑問が生まれます。とにかく知ることは楽しいですね。そうやって昔の人がどんな考え、世界観を持って神祭りを行っていたのかまでわかるといいなあと思っています。
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