一級建築士の「住宅のヒントと秘訣」

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マンション購入のチェックポイントと高齢者の親(2)

2007年05月26日 15時30分41秒 | 住宅ノウハウ・実例
みなさん、こんにちは。ミタス一級建築士事務所の清水煬二です。

昨日の質問の、マンション購入のチェックポイントについてお話しましょう。

2007年5月25日のブログを読んでいない人は、その質問を、まずお読み下さい。

さて、このマンションは現在建設中とのことです。

中古か新築か、築年数などでもポイントは少し変わってきます。
そして今回は、高齢者が入居されるわけですから、その点も考えてお話します。

本来は、重要事項説明書を十分に理解することが必要です。ですが、これを理解して判断するには、建築士としての知識やその他の知識も必要になりますし、範囲が広くなりますので、ここではその説明はカットします。


皆さんが、マンションで一番心配になるのは、耐震性ですね。

これについては、姉歯さんの事件以来、一級建築士の信頼性が落ちました。私の見解はホームページに載せていますので、気になる方はそちらをご覧下さい。

耐震性については、皆さんが判断できるものではありません。
このチェック方法はふたつあります。ひとつは、第三者の専門家に構造計算書と施工図(コンクリート躯体と鉄筋)をチェックしてもらうことです。

ピロティなど設計上で問題のある内容など、特に中古マンションなどは、構造計算書がなくても専門家なら、ある程度のアドバイスは可能です。

本来は正式に再度計算しなければ、わかりませんから、これだと費用と時間がかなり掛かってしまいます。

構造計算のしなおしをしなくても、その書類をざっと確認するだけでも、姉歯さんのようなケースは、すぐわかります。微妙なところは、先ほどのように再計算して見比べないとわかりません。


もうひとつは、性能表示制度を適用したマンションを購入することです。これは、構造に関して設計と現場を簡単ですが、確認してくれますので、姉歯さんのような構造内容では通りません。


構造面以外で、間取りや通気性、採光、廻りの環境はご自身でチェックしてください。主観的な部分が増えるので、ここではお話しません。


戸建てにお住まいになっていたかたや、高齢者の方がマンションに入居するときに、一番気を付けて欲しいのは、実は遮音のことなのです。

建築調停やトラブルでも、マンションではこの問題は多いのです。

遮音というのは、主観的な部分もあり数値化できても、その是非は曖昧ですので、トラブルになっても一番解決しにくい分野です。

実際、マンションの音のトラブルの相談を20年以上も前から、つい最近でもこの話の相談はあります。

本来は性能表示でその遮音性能を約束してくれていれば良いのですが、性能表示を受けていても、この遮音性能は任意なので、この部分は受けていないケースが多いのです。

パンフレットには、遮音性能の良さを売りにしているマンションも多いのですが、性能表示で約束していない限り、その性能を結果として求めることが難しく、トラブルが起こっても対応してもらうのは、難しいのです。そのパンフレットの内容を信じて買ったのに、実際は遮音性能が悪いというトラブルはあります。


マンションの建築と販売は、大手だから安心というものではありません。実際の販売員は委託のケースも多く、売るためにオーバートークされてしまい、「それを信じて購入したのに…」と問題になることは珍しくありません。この場合、それを訴えても、正式な書面の約束になっていないと言った、言わないということになり対応を求めるのは難しいのです。

ですから、少なくても床(スラブ)とお隣との壁(鏡壁)のコンクリートの厚みと構造は、みなさんは確認しておくべきです。

音に関して気にする場合は、それらのコンクリートの厚みは20センチ、すなわち200ミリの厚さが、まず欲しいです。

これは、自分たちの話し声やテレビの音、生活音で文句を言われないということもありますが、ご高齢の方がお一人でお住まいの場合、隣接した世帯からの音で悩まれる方も珍しくありません。特に戸建てにお住まいで静かな環境に今までいたのであれば、なおさらです。

音に関しても性能表示を約束してくれるマンションが良いのですが、少ないですから、先ほどのコンクリートの厚みを参考にしてください。

また、この床の構造や壁の構造がどうなっているかでも、同じコンクリートの厚さでも音の響き方がかなり違います。文面では、皆さんにわかるように説明できませんし、説明しても、実際は完成してみてどうなのかという問題は付いて廻りますので、カットしておきます。


耐震性、音の問題の次に、メンテナンス性です。

賃貸なら、メンテナンスにあまり関心はないでしょうが、分譲で購入するとなるとこのメンテナンス性は、後々のコストにも大きく変わってきます。

通常、メンテナンス性というと性能表示でも配管関係のことを重視しています。
給水、給湯、ガス管が、「さや管ヘッダー方式」になっているかどうかです。
これ以外に、排水や排気がどういう経路でどのようになっているかを確認しておいて下さい。

将来、取替えやリフォームで容易に工事ができるかどうかが問題です。コンクリート部分は当然ですが、内装部分を壊すことなく、また隣接の住居に関係なく、それらの配管だけを取り替えることができることが理想です。

これ以外にも大切なメンテナンス性の要素はあります。

外壁や屋上防水の大規模修繕のときに費用が少ない方が良いですね。

そうなると、外壁はタイル張りの方が、吹きつけよりメンテナンス費用が安くて
有利です。屋上も戸建てのように屋根を掛けてあるものの方が、通常は耐久性が良くメンテナンス費用も安くなります。


もうひとつ確認したいのは、断熱性です。最上階はかなり冷暖房費用が余分にいりますが、一般階でも断熱がどのような仕様でどのレベルのものかを確認してください。これは冷暖房費だけでなく、快適性にもかなり影響しますし、工事が不良であれば結露やカビの原因になることもあります。


その他、管理組合や規定、月々の修繕費の積み立てや大規模修繕費の問題、その他については、他の評論家なども一般的に述べていますから、そちらを探して参考にして下さい。



高齢者の入居条件で、ふたつだけお話しておきましょう。

玄関の広さとローカ、トイレの入り口と入り方、洗面脱衣と浴室のスペースと入り方です。これは、将来、車椅子の使用の可能性や、介助の可能性がある場合、非常に重要です。このリフォームのご依頼や、設計のための確認立会いは多いです。
もちろん。具合が悪くなったら、すぐに施設に入るとか入院すると決めているのであればあまり関係ないかもしれませんが、以外にそうはいかないケースも多いようです。



もうひとつは、どこに段差が何センチあるかを必ず確認しておいてください。

玄関は少しあるでしょうが、トイレ、洗面・脱衣、キッチン、バルコニーが要注意です。完全に段差が無いのか、あるとすると何センチなのか。高齢者がお一人でお住まいになるにいは、これが無いほうが良いに決まっています。今は体調は良くても、近い将来問題になることがあるからです。段差があれば、これらの段差を具合が悪くなっても高齢者が問題ないのかどうかを確認して下さい。

これらに段差を手直しするには、他の床を上に上げるしかないので、そうなった場合にどうなるかも確認しておかないといけません。特に中古マンションはこの点に注意してください。




以上、新築マンションの購入ポイントで簡単に説明いたしました。

住宅評論家が書籍や雑誌で述べている様々なコメントの中には、建築の専門分野に関しては、間違いや思い違いも珍しくありません。その人が正しい建築の知識が無いのに、何かの受け売りで書かれていますので、間違ったまま何度も引用されていることがあります。注意してくださいね。

個別に問題にぶつかって質問があれば、またメールを下さい。可能な範囲でこのブログか直接にお答えしたします。




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