実務家弁護士の法解釈のギモン

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会社関係訴訟の被告適格(2)

2015-11-13 14:35:25 | 会社法
 まず、問題提起である。

 第三者割当による新株発行が、既存の株主の提起した新株発行無効訴訟によりその無効が確定した後、これに不服のある第三者割当を受けたとされる者が、確定した当該無効訴訟を覆すことができるか否か。

 新株発行無効訴訟の被告は会社とされていることから、第三者割当を受けた者のあずかり知らないところで無効訴訟が行われ、無効判決がなされてしまうことはいくらでも想定しうる。
 その場合、会社が稚拙な訴訟活動を行った結果として会社側が敗訴してしまうということもないわけではない。場合によっては、会社側も新株発行が無効であることはあまり争わないということもありうる。
 しかし、新株発行無効判決には対世効があるから、無効判決の結果は、否応なく第三者も従わざるを得ない。そうなると、第三者割当増資を受けたはずの者は、当然不服が生じることもありうるだろう。

 実は、数年前の判例で、この事案と同種事案の判例がある。
 それによれば、第三者割当を受けた第三者は、独立当事者参加の申立をすることによって再審原告としての適格を得るから、当該申立と同時に再審の訴えを提起することができるというのである。再審事由は、会社が適切な訴訟追行をしなかったことが、民事訴訟法338条1項3号の再審事由(必要な授権を欠いたこと)に該当しうるという。
 ところで、独立当事者参加の申立をする以上、当事者の双方または一方に対して請求を立てなければならない。この判例の事案では、参加人が株主であることの確認を求める請求を当事者双方に立てたようである。第三者割当増資の有効無効によって、当該第三者が株主と言えるか否かが決まることから、独立当事者参加における訴えの利益が認められるのである。
 このことによって、適法に独立当事者参加ができたと同時に、再審原告としての適格も獲得して再審の訴えを可能にしたのである。