実務家弁護士の法解釈のギモン

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債権法改正-請負人の担保責任(1)

2015-10-01 13:06:25 | 債権各論
 債権法の改正により、売主の担保責任の規定が大幅に改正されるのに併せて、請負人の担保責任の規定もかなり変わると言っていい。ただし、その見た目の条文改正は、売主の担保責任と請負人の担保責任とでは、だいぶ趣が異なる。

 従前、請負人の担保責任の規定は、634条以下に規定が存在し、その解釈については難しい議論が存在していた。それが、債権法改正案では、請負人の担保責任を積極的に定める規定は削除されてしまうことになったのである。ところが、請負人の担保責任の制限に関する規定は残る。この制限に関する規定は、一定の場合に担保責任が発生しないことと、期間制限からなる。したがって、当然、請負人は一定の担保責任を負うことが当然の前提となっているのである。
 つまり、請負のところでの規定では、担保責任を積極的に認める規定がなくなるにもかかわらず、担保責任の存在を前提として、それを制限する規定だけが存在するような、一見すると理解しにくい条文構造となるのである。

 「要綱仮案」の段階では、現行の民法634条を改正して、請負の目的物が契約不適合であった場合には、注文者は相当の期間を定めて修補請求できるという規定を設けることになっていた。これが、請負人の担保責任に関する積極的規定にする予定だったはずである。しかし、実際の改正案では、この種の規定さえ設けられず、民法634条は担保責任とは全く関係のない条文と化してしまう。

 これは一体どういうことか。