実務家弁護士の法解釈のギモン

弁護士としての立場から法解釈のギモン,その他もろもろのことを書いていきます

大地震

2011-03-13 18:02:52 | 日記
東北沖で起きた大地震に被災された方々には、お見舞い申し上げます。

想像を絶する被害状況に、言葉もありません。

仙台で弁護士をしている同期の友人もいますが、大丈夫だろうか。

抵抗権・革命権

2011-03-08 11:13:38 | 時事
 司法試験受験時代に憲法の勉強をしていたときに、教科書レベルで、抵抗権や革命権が実定法上の権利か否かということが議論されていたように記憶している。なお、抵抗権と革命権の区別は、抵抗権が既存の憲法秩序を回復するための保守的なもので、革命権は既存の法秩序を打破して新しい法秩序を形成する点に違いがあると言えようか。日本国憲法制定における8月革命説という考え方も、明治憲法との連続性を認めがたいことから生じた考え方で、日本国憲法が当時既存の法秩序であったはずの明治憲法を打破した内容となっているから、8月革命説が説かれるのであろう(ただし、私はこの考え方は間違っていると思っている)。
 それはともかく、抵抗権や革命権が実定法上の権利か否かと議論されても、少なくとも日本国憲法にはこれらの権利について触れている条文は全くなく、非常にわかりにくい議論だった印象がある。

 しかし、今現在アラブ諸国で起きている反政府デモ及びこれによる政府の転覆劇を見ると、抵抗権や革命権は、集会行為の究極の姿として顕在化しているように見える。つまり、集会の自由を保障することが、ひいては抵抗権や革命権を憲法内在的に担保しているように見えるのである。もしそうだとすると、抵抗権や革命権は、日本国憲法においても担保されているといえそうである。
 しかも、現在アラブ諸国で行われている反政府デモが、抵抗権の行使なのか革命権の行使なのか、そんなことは現段階でおそらく誰にもわからない。政府転覆の前後で憲法秩序の連続があれば結果として抵抗権として把握でき、連続がなければ結果として革命権と把握するということにならざるを得ないように思え、抵抗権と革命権の違いは、理念としては区別がついても、それは結果論でしかなさそうである。

 アラブ諸国の反政府デモを見た限りの、ちょっとした感想的意見でした。

会社法上の差止請求権を保全する仮処分の効力(6)

2011-03-04 13:23:41 | 会社法
 前回述べた差止判決無視の場合を前提にして、再度仮処分無視の場合に戻るが、その場合に考慮すべきことは、差止の仮処分は満足的仮処分であると言われている点である。満足的仮処分の一つの典型例として、従業員の不当解雇の場合に給料仮払いの仮処分をする場合がある。この決定主文は、「債務者は債権者に対し、毎月いついつ限り金何円ずつを仮に支払え。」という仮払いを内容とする決定になる。そして重要な効果として、この仮処分は執行力があるということである。この仮処分が無視されて解雇した側が給料の仮払いをしない場合は、通常の民事執行法の手続きに則って強制執行が可能なのである。要するに、満足的仮処分は、決定主文に記載された内容の限りで、執行力ある確定判決と同じ執行力をもつ仮処分だということなのである。だからこそ、満足的仮処分という言い方をする。
 そして、差止の仮処分が満足的仮処分だとすると、その執行力的効果は確定判決と同じでなければおかしい。そうでなければ、満足的仮処分とは言わないと思う。したがって、差止判決が無視された場合に、株主総会決議や新株発行が無効になるとすれば、差止の仮処分が無視された場合も株主総会決議は無効であるし、新株発行は無効原因になると考えるべきなのである。
 ただし、判決の既判力の主観的範囲は当事者に限られる。したがって、重要財産の処分のように、買主という差止訴訟の当事者ではない第三者が登場するような場合、その判決の効力を第三者である買主に及ぼすことはできない。そのため、訴訟法的な効力としても当該裁判が無視されても、そのことのみを持って重要財産の処分を無効とすることは困難であるし、取引の安全を考慮すれば、差止請求権の効力の問題と考えても、やはり無効とすることには不都合があろう。

 もっと言えば、たとえ裁判外であっても差止請求権が行使された以上は、それに反する新株発行には無効原因があるという解釈も、全くあり得ないわけではないと思う。なぜなら、条文形式上、差止請求権はあくまでも純粋な実体法上の権利であって、法文上も訴訟によってのみ行使すべき権利とは書いてないからである。この点において、新株発行無効の訴えのような、いわゆる会社の組織に関する行為の無効の訴え(会社法828条)とは条文形式上かなり異なる。
 ただ、かなり異なりはするものの、会社の行為や取締役の行為を差し止めるという事柄の重大性に鑑みれば、会社の組織に関する行為の無効の訴えに準じて、訴訟や仮処分によらなければ、法的にも差止請求権を無視した場合の当該行為の効力は無効にはできないと考えざるを得ないのであろう。
 純粋な実体法的権利のような規定ぶりとなっている理由は、おそらく、差止請求権が行使された際に、会社が任意これをやたとすれば、わざわざ訴訟を提起させる理由はないからである。

 要するに私が言いたいことは、会社法上の差止請求権は、いずれも条文形式上は実体法上の権利として規定されていること、したがって、本来であれば、差止の仮処分の効力云々する前に、純粋な実体法的効力(裁判外での差止請求権の行使の効力)を最初に議論しなければいけないような気がすること、そして、差止の仮処分は満足的仮処分だと言われていること、それにもかかわらず、なぜか差止判決の効力について、少なくとも教科書レベルではあまり議論されていない点に、私は議論の不十分さを感じるのである。
 そこで、この全体像を踏まえた考えを簡単に示してみた。どうであろうか。

会社法上の差止請求権を保全する仮処分の効力(5)

2011-03-01 11:50:34 | 会社法
 差止の仮処分の効力として、会社法上の法律行為を無効とする効力を有しないと考える説は、仮処分ではなく差止の終局判決が確定したにもかかわらず、その判決を無視された場合はどのように考えるのであろうか。理論的には、仮処分の無視だけではなく差止判決無視の場合も当然想定されうるはずである。というよりも、思考順序としては、仮処分無視の効果を議論する以前に、確定判決無視の効果を議論することの方が先のはずである。

 少なくとも新株発行の差止判決が無視された場合は、学説上もさすがに新株発行は無効原因ありと考えているようである。それでは株主総会開催差止判決を無視された場合の株主総会決議はどうか。少なくとも教科書レベルではよくわからない。さらには、重要財産処分差止判決が無視された場合はどうか。
 私は、重要財産処分差止判決が無視されても、その財産処分行為は判決が無視されたことのみをもって無効となることはないと考えている。なぜなら、取引の安全も考慮せざるを得ないことは、判決の無視だろうと仮処分の無視だろうと変わらないからである。既判力が第三者(重要財産の買主)に及ばないことも、考慮すべき一つの重要な点である。
 株主総会開催差止判決が無視されて株主総会が開催され場合、私はやはり当該株主総会決議は不存在と考えざるを得ないと思われる。この点は、招集権限のない者が株主総会を開催した場合とほぼパラレルのような気がしている。

 いずれにしても、会社法の教科書レベルでは、仮処分無視の効力ばかり議論されており、差止判決無視の場合の効力について議論されていないのは、片手落ちにしか思えない。
 そして、以上の差止判決無視の場合を前提にして、再度仮処分無視の場合に戻ると、はたしてどのように考えられるか。