実務家弁護士の法解釈のギモン

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再逮捕

2018-12-05 10:02:15 | 時事
 金融商品取引法違反の容疑で大手自動車会社の(当時)会長が逮捕された。国際的に活躍する外国人なだけに、世界を驚かせた逮捕劇である。
 欧米諸国では、逮捕後の勾留の長さ、取り調べにおいて弁護士が立ち会う権利がないことなどが、批判の対象となっているようである。
 実は、起訴前勾留がないことや、取り調べに弁護士が立ち会えないというのは、民主主義国家であり人権を重んじる欧米諸国においては、決して普通ではないようである。この点は、日本の刑事司法の闇の部分であって、自白強要の温床になっており、えん罪の温床になっていると思う。

 ところが、予想はできたことではあるが、さらに再逮捕する方針という報道を目にした。身柄を釈放することなく、さらに別の容疑で逮捕・勾留するということである。
 諸外国はこうした日本の刑事司法をどのようにみるであろうか。再逮捕によって、日本の刑事司法に対して諸外国から厳しい批判が浴びせられそうな気がしてならない。弁護士の立場で言えば、もし諸外国からの外圧によって、日本の刑事司法の闇の部分の改善が図られることになっていくなら、怪我の功名ともいえるかもしれないが、極端に言うと、その前に、国際問題・外交問題に発展する危険はないのだろうか。刑事司法における被疑者の人権が軽んじられる日本に対し、諸外国が安んじて有能な人材を日本に送り込めるはずがないのである。

 私の感覚では、刑事司法の問題だけではなく、不法入国者・不法在留者に対する扱いなどを含め、人権感覚に最も鈍感なのが、最も人権感覚に敏感であるべき法務省であり、裁判所なのではないかという、実に皮肉な印象を持っている。それを、司法という三権分立にかかわる問題として、意識してかどうかはともかく、聖域化させてしまっているのである。

 大手自動車会社の元会長の再逮捕で、この日本の刑事司法の闇が、国際的にさらにクローズアップされるとすれば、国際問題・外交問題にまで発展するかどうかはともかく、私は、法治国家・民主主義国家である日本の刑事司法の闇が国際的にクローズアップされることが実に恥ずかしい気持ちになるのだが、検察はそのようなことは全く考えないのだろうか。