実務家弁護士の法解釈のギモン

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債券管理会社の訴訟追行権(2)

2016-08-10 13:43:17 | 最新判例
 事案は、会社法上の会社ではない組織(例えば海外企業や外国国家が想定され、判例の事案は外国国家である。)が社債類似の「債券」を発行した事案である。債券の発行体が、銀行との間で債券管理委託契約を締結しており、債券所持者のために債権を管理することが定められている。要するに、社債でいう社債管理者と同様の権限が、発行体との「契約」として定められているのである。そして、その契約で定められた管理内容として、債券所持者のための訴訟追行権も含まれている。
 そうしたところ、債券発行体である外国国家が当該債券について債務不履行となったので、債券管理会社が債券所持者のために訴えを提起したというものである。

 イメージからすれば、会社が社債を発行したところ、償還期限に会社が社債を償還しなかったことから、社債管理社が社債権者のためにその支払を求めて会社に訴えを提起したというのと状況は同じである。ただ、債券の発行体が会社ではないため、会社法の適用がないという点で問題が大きく、訴訟追行権について法律上の根拠のない債券管理会社が、債券発行体と債券管理会社と間の「契約」で社債管理者と同じように、第三者の利益のために契約当事者である債券発行体を相手方とする訴訟追行権を有しているのか否かが大問題なのである。