Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Beth Scalet

2009-09-23 | SSW
■Beth Scalet / It’s A Living…■

  時にはリリカルに、時にはブルージーに…と表現される女性シンガーソングライター、Beth Scalet が 1981 年に発表したデビューアルバム。 公式サイトによると、彼女はこの「It’s A Living…」を含めて計 6 枚のオリジナル・アルバムをリリースしています。 20 数年で 6 枚とは寡作なミュージシャンですが、そのなかには、「Beth Loves Bob」という Bob Dylan のカバー集もあったりするので、自作自演のアルバムはかなり貴重なものかもしれません。
  Beth Scalet の活動拠点はミズーリ州カンザス・シティ。 デビュー以来、この地を離れずに地道な音楽活動を続けているようです。 このデビュー作は 1 曲を除いて全曲が彼女のオリジナル。 それまで書きためてきた楽曲から選ばれたものだけに、クオリティの高い曲が並んでいます。 「Another Love Song」はややかすれたBeth Scaletのボーカルが力強いフォークロック。 透明感がありながら、ハスキーさを感じる彼女の独特のボーカルは、つづく「Does It Always Come Down」のようなバラードでも存在感あふれるもの。 ハイな気分のアップ・ナンバー「Lose Your Money」は正直、彼女のボーカルには似合わず残念ですが、「In The Daylight」では哀愁あふれるバラードに戻り、安心させられます。 この曲は素朴なメロディーが繰り返されるだけなのですが、そこにエモーショナルな歌唱が加わり、何ともいえない深みを感じさせる名演です。 つづく「(Have You Seen) Phillipa」も流れを汲んだバラード。 秋の夜長にフィットした優雅な時間が過ぎてゆきます。

  B 面に入りましょう。 「Dance To You Blues」はシングルカットするならばこの曲という親しみやすい曲。 そのカップリングにはさらにキャッチーな「Get Me Out Of Love」がお似合いですが、おそらくシングル盤は存在しないでしょう。 海の見える土地への憧れはないのかと疑問に思う「(Don’t Want To Live In) California」は、彼女の真骨頂ともいえるミディアム・バラード。 ライブでもないのに、アルバムの終盤に近づくに連れてハスキー度が増すように感じるのは不思議です。 きっと彼女の声に慣れてきて、自然と好みの成分を聞き分けるようになるからなのでしょう。 「Missing You」はジャジーなテイストが強く、Norah Jones の「Don’t Know Why」を聴いてるような錯覚に陥ります。 ラストは唯一の非オリジナル。 その曲はProcol Harumの「蒼い影」でした。 現代はもちろん「A Whiter Shade Of Pale」ですが、ここで聴けるアレンジは有名なオルガンのメロディーがイントロでは封印され、間奏部だけとなっています。 しかもアコースティック・ギターの音色が主体となっていて、かなり落ち着いた出来となっています。ここにも彼女の持つジャジーな側面が存分に表れており、けして歌い上げないボーカルにも好感が持てます。 ただ、惜しいのは中途半端なフェードアウトです。 これはアルバムのラストなだけに丁寧に作って欲しかったところでしょう。

  こうして Beth Scalet のアルバムをおさらいしてみましたが、ジャケットで余裕の笑顔を浮かべる女性の写真を見れば、ある程度予想できる範囲のボーカルとサウンドだということに気付きました。 レーベル名も「わかるさレコード(Wakarusa Records)」という名前ですので、もっと早く気付けよ、ということでしょうか。 オチになっていませんね。

■Beth Scalet / It’s A Living…■

Side 1
Another Love Song
Does It Always Come Down
Lose Your Money
In The Daylight
(Have You Seen) Phillipa

Side 2
Dance To You Blues
Get Me Out Of Love
(Don’t Want To Live In) California
Missing You
A Whiter Shade Of Pale

Produced by Beth Scalet
Assisted by Chris Bauer and Caren Prideaux
Words and music by Beth Scalet except ‘A Whiter Shade Of Pale’ by Keith Reid and Gary Brooker

Beth Scalet : lead vocals, acoustic guitars, harmonica
Kathy Buehler : harmony vocals
Stuart Doores : drums
Jim Paschetto : electric guitars, banjo, bass
Randy Pratt : organ
Caren Prideaux : synthesizer, harmony vocals
Pete Wyman : bass

Special thanks to Carol Comer

Wakarusa Records WR5181


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