Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Dennis Michael O’Rourke

2009-09-01 | SSW
■Dennis Michael O’Rourke / Broken Crystal■

  喧嘩を売られているような酷いジャケットで現れたのは無名のシンガーソングライター Dennis Michael O’Rourke です。 この態度は何かの洒落だったのでしょう、裏面にはメンバーとにこやかに談笑する姿が収められています。
  Dennis Michael O’Rourke の唯一と思われるこの作品は 1981 年にマサチューセッツでレコーディングされたローカル・アルバム。 このジャケットでは買う気もうせてしまいますが、内容はカントリーロックを基調としながらも、切ないバラードや深みのあるミディアムも随所に散りばめられており、それらの楽曲が捨てがたい魅力を醸し出しています。 

  アルバムは典型的なカントリーロックの「On A Hot Summer Afternoon」でスタート。 バックミュージシャンの骨太で堅実なところは、Fairport Convention 周辺のリズムセクションに通じるものを感じます。 つづく「She's A Teaser」は早くもスロウなバラード。 ハーモニカと女性コーラスが、女性に翻弄される男の寂しい心情を描き出しています。 「Flowers Fools And Dreams」、「Rosie」と王道のカントリーロックが並びますが、コテコテの濃度ではないので、心地よく聴きながすことができます。 A 面ラストの「Eight Days Gone」は Tom Whiteside と二人で弾き語るバラード。 かなりビターな仕上がりですが、出来は悪くありません。

  B 面はより SSW テイストが強まります。 1 曲目の「High School Heartbreaker」は典型的なカントリーロックですが、つづく 4 曲は素晴らしい流れとなっています。 アルバムタイトルともなっているバラード「Broken Crystal」はうっすらと流れる美しいストリングスが見事で、繊細なバラードを見事に彩っています。 つづく「Fall Song」は爽快で雄大な景色を思い起こさせるミディアム。 「One Small Story」と「Ardee」はともにプライベート感あふれるこじんまりした味わいのフォーキー。 ニューイングランド周辺の良質な SSW 作品に通じるサウンドがここにはあります。
  ラストの「Love Will Do The Rest」は想像していたとおりの楽曲で、愉快な仲間たちと打ち上げをしているような気分の二拍子。 クラリネットなどの管楽器と次第に数を増していくコーラスが気持ちを昂ぶらせます。 比較的ありがちな演出ではありますが、これが過剰にならないところにセンスを感じますし、フェードアウトのなかでベースだけ残すところにも豊富なアイディアを感じさせます。

  このアルバム、実は買ってからすぐに聴かずにしばらく放置してしまっていたのですが、こうしてきちんと聴きなおしてみると、その充実した内容に改めて感心しました。 ほぼ自主制作に近い作品だと思いますが、これだけ数多くのミュージシャンが参加しているのも注目です。 このなかではっきりと記憶している名前は一つもないのですが、堅実でステディーな演奏もこのアルバムの魅力を支えており、マサチューセッツのミュージシャンの懐の深さを強く感じます。 ジャケットがこんな写真でなかったら、もっと注目され高い評価を受けていたかもしれません。 そう思うと残念ですが、このジャケットも Dennis Michael O’Rourke 本人の意志ですから仕方ないのでしょう。 運命は受け入れるしかないのです。

■Dennis Michael O’Rourke / Broken Crystal■

Side 1
On A Hot Summer Afternoon
She's A Teaser
Flowers Fools And Dreams
Rosie
Eight Days Gone

Side 2
High School Heartbreaker
Broken Crystal
Fall Song
One Small Story
Ardee
Love Will Do The Rest

Produced by Tom Phillips
Engineered by Larry Minnis
Recorded at Ivy Lane Studios, Hopkinton, Mass.

Dennis Michael O’Rourke : acoustic guitar, vocals
Tom O'Carroll : banjo
Scott Robinson : harmonica
Leo Egan : pedal steel
Larry Minnis : electric guitar
Buddy MacLellan : drums
Dean Groves : bass
Robbie O'Connell : mandolin
Pam Nickerson : backing vocals
Toni Ballard : backing vocals
Judy Glatky : backing vocals
Tom Phillips : keyboards, harmony vocals
Randy Sabien : fiddle, violin
Susan Gottschalk : fiddles, violin
Bob Stoloff : drums
Tim Wells : bass
Tom Whiteside : lead acoustic guitar
Jim Anderson : electric and acoustic guitar
Barbara Engleberg : violin
James Phineas Martin : hammer dulcimer
Peter Murray : clarinet, soprano sax
Rock Ciccarni : trombone
Peter Golden : backing vocals
Lisa Taylor : backing vocals
Orie Fontaine : backing vocals
Dennis McKinley : backing vocals
Roxanne O'Connell : backing vocals
Seamus Kennedy : backing vocals
Bob O'Keefe : backing vocals

Rhodes Records SR33


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