Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Bob Kamm

2008-09-15 | SSW
■Bob Kamm / Sandbox Kingdom■

  秋に似合う弾き語りの作品をピックアップしました。 1979 年に Bob Kamm が発表したソロ・アルバムです。 1980年になろうかという時代背景とは全く無縁の音楽がここには閉じ込められています。 しかもレコーディングはカリフォルニアということで、世の中とか隔絶していたかのような内容に驚きすら覚えます。
 そのサウンドは Bob Kamm のギター1本による弾き語りなのですが、そのギターにはブルース感もなく、カントリー風味もなく、どちらかというとクラシックギターに近い奏法です。 繊細なアルペジオを主体としたシンプルなサウンドが全編を貫き、新聞でも読みながら BGM として聴きたいような内容です。

  SSW ファンにとって、やや残念なのは彼の声質とボーカルスタイルかもしれません。 この手のサウンドであれば、もう少し線の細い声のほうが似合ったと思うのですが、あまり個性的な声ではありません。 ボーカル・スタイルもリーディングに近いもので、際立ったこの手のサウンドには適していないようにも思えます。 さらには、親しみやすいメロディーが散りばめられているわけでもないので、収録時間より長く感じてしまうタイプのアルバムかもしれません。 と、ここまで辛口な表現が並びましたが、かといって全くの駄作ということではなく、統一されたモノクロの風景、抑制されたエモーション、そして徹底的に方法論を変えない楽曲群などは一定の評価をすることができると思います。

  アルバムの中では、「First Love」、「Road Ode To An Autumn Poppy」、「Epitaph For The Sons Of Shem」といった曲が個人的にはお薦めの曲になります。 どの曲もテンポを含めて似た曲が多いなか、「Education : Four Stories Tall And Short」という曲は4つのテーマに分かれた短編集のような味わい。 唯一のアップテンポとなる「The Mariner」はパーカッションなどいれば、もっと高揚感を演出できると思います。 ラストの「Sunday Dreamer」もさりげない小曲で後味を良くしています。

  Bob Kamm の音楽に接するときに感じる独特の違和感はどこにあるのかを調べてみたところ、その要因ともいえるものがわかりました。 実は(というよりやはり)彼の本業は音楽ではなかったのです。
  ネットで検索すると彼は Kamm Consulting という会社を興し、コンサルティング業を営んでいることがわかりました。 Amazon によると「The Superman Syndrome」や「Real Fatherhood」というリーダーシップや教育論と思われる著書を残しているほか、「Real Fatherhood」に関しては同名の CD を発表していることもわかりました。

  このブログで紹介したシンガーソングライターの多くが、ビジネスの世界に転進し成功を収めていますが、Bob Kamm もその一人だったのです。 このアルバムで聴かれる知性的な香りは、彼の多様な才能の一片だったということなのでしょう。 多くのミュージシャンが音楽の世界を断念し、新たな道を選んでいったのとは異なり、Bob Kamm はそもそも詩人としての創作活動から始まり、著述業・音楽そしてコンサルティングへと活動領域を広げていったようです。 その一方で、彼の創作の原点に近いものを封じ込めたはずのこのアルバムは、見向きもされないままに風化しそうな気配です。



■Bob Kamm / Sandbox Kingdom■

Side-1
First Love
Maya
Fall
Love Song Of A Local Stranger
Danny

Side-2
Education : Four Stories Tall And Short
Road Ode To An Autumn Poppy
Epitagh For The Sons Of Shem
The Mariner
Sunday Dreamer

Produced by Swoobah
Recorded at Sutton Sound Studio , Atascadero , California
All Songs by Robert H. Kamm 1979

Swoobah KM4210


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