Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Keith Sykes

2007-09-19 | SSW
■Keith Sykes / The Way That I Feel■

  G ジャンを背負い、シルクハットで決めたモノクロのジャケットだけでも名盤の匂いがしますが、1960 年代から活動している SSW の Keith Sykes のサード・アルバムはたしかに名盤といえるでしょう。 このアルバムを初めて聴いた 15 年くらい前から、その思いは変わりません。

 このアルバムをとりあげた理由は前回取り上げたPriscilla Herdman の紹介の際に、このアルバムの「The Coast Of Marseilles」のことを触れたからです。 こうなるとオリジナルを聴きたくなりますよね。 ということで、Keith Sykes について語る前に、アルバムをおさらいしておくことにします。

 オープニングを飾る「Sooner Or Later」は、ラフで力を抜いたボーカルがクールな印象。 ジャケットのイメージとぴったりなところが高得点。 「Just As Long As You Love Me」は王道のアメリカン・ロックのテイストを感じさせながらも、キャッチーなメロディーが光る曲。 おそらくは、このシングルカットされたものと思われます。 つづく「All I Wanted」も珠玉のバラード。 覚えやすいメロディーとストリングス、バックコーラスなど絶妙に絡んでくるところは、Keith Sykes のキャリアの絶頂期を感じさせます。 「They Take It」は、ややアップなロックナンバー。 こういう曲はつなぎとしての意味を果たせるか否かが重要ですが、違和感なくバトンを「The Coast Of Marseilles」に渡すことに成功しているといえるでしょう。 そして、名曲へ。 マルセイユのことを歌ったバラードですが、このオリジナルはギターとストリングスを主体に構成され、Keith Sykes の持つ無口で哀愁を帯びたイメージがそのままサウンドとシンクロして胸に伝わってきます。 まさにアルバムのハイライトです。

 B 面に移ります。 「I Feel So Good」は、「Sooner Or Later」と類似した軽いタッチの曲。 こうした曲の雰囲気出しって本当は難しいのだろうなと思いながら聴きました。 エレピのイントロが妙に新鮮に響く「Sounds Like A Hit」は、1977 年という音楽潮流の狭間にいることを印象付ける曲。 このアルバム以後のKeith Sykes の路線に最も近いナンバーとも言えます。 つづく「What’s Different About Her」も同様のアメリカン。 「Call It Love」は、アコギが前面に出るR&B風のフナンバー。 洒落たタッチの小曲に仕上がっています。 ラストの「The Last Line」は、シンプルで素朴なバラード。 ほろ酔いの身の Keith Sykes が女性コーラスに支えながら眠りにつくかのようなシーンが目に浮かびます。 名盤を締めくくるにふさわしい名曲です。

  このアルバムを久しぶりに聴いて、納得のいく作品であることを再確認しましたが、それと同時にいつものことを思ってしまいました。 そのいつものこと、とは Keith Sykes のこのアルバム以降の変化です。 彼は、Backstreet Records というマイナー・レーベルに移籍し、1979 年に「I’m Not Strange , I’m Just Like You」、1981 年に「It Don’t Hurt To Flirt」というアルバムを発表するのですが、これが駄作なのです。 駄作というと語弊があるかもしれませんが、安っぽくて田舎臭い B 級ロックンロールに退化してしまっているのです。 期待して買ったアルバムのジャケットがあまりにも豹変していたので、不安になりながらも針を落とした日のショックを思い出します。  僕はそのせいで、初期のアルバムに手を伸ばすことすらやめてしまったのです。
 しかし、冷静になって彼の名盤を聴くと、初期の 2 枚のアルバムを聴いてみたくなりました。いおずれも、Vanguard からリリースされていることから、王道のフォーキーではないかと推測しています。 

 いずれにしても、初期のフォーク、1980 年代の B 級ロックとのちょうど間、1977 年だからこそ産み落とされたのかもしれないこのアルバムを聴くと、同じミュージシャンであっても時代との兼ね合いがなければ、名作と呼ばれるアルバムは生まれないということを痛感するのです。



■Keith Sykes / The Way That I Feel■

Side-1
Sooner Or Later
Just As Long As You Love Me
All I Wanted
They Take It
The Coast Of Marseilles

Side-2
I Feel So Good
Sounds Like A Hit
What’s Different About Her
Call It Love
The Last Line

Produced by Wayne Crook , Warren Wagner
‘Just As Long As You Love Me‘Produced by Bob Reno


Strings Conducted and Arranged by Carl Marsh
‘Just As Long As You Love Me’ arranged by Jim Ed Norman

All Songs by Keith Sykes except ‘All I Wanted’ by Keith Sykes and Carl Marsh

Recorded as Shoe Productions , Memphis / Kendun Recordings ,Burbank , California

Keith Sykes : acoustic guitars and vocals
Ed Green , Roger Hawkins , Willie Hall , Butch McDade : drums
Bob Wray , Ken Woodley , James Hughert : bass
John Hug , Donnie Bayer , Robert Walden : guitar
Carl Marsh , Swain Schafer : keyboards
Warren Wagner , Joe Mulheron : percussion
Nick Vegos : english horn
Sheldon Kurkland and The Nashville Strings : strings
Rhodes-Chalmers-Rhodes , Herb Pederson , Charles Merrian : background vocals
Andy Black : lip horn

Midland International BKL1-2246