■Ron Baumber / China Doll■
2006 年最後にご紹介するアルバムです。 このブログを開設したのが今年の 3月ですから、よく継続できているなあと自分でも関心してしまいます。 そういえば、今年のお正月に「今年の誓い」的なものを立てたのですが、まともに実現しているのはこのブログくらいかもしれません。
さて、この Ron Baumber はカナダが生んだメロウな SSW アルバムの名盤として、割と古くから有名な作品。 僕のレコードラックの左隅にある大事なレコードばかりを収納しているコーナーから取り出してきました。 黒い背景に浮かんだ精悍な表情が印象的で一度みたら忘れられないジャケットですが、今ではなかなか入手困難になってしまっています。 アルバムは 1976 年に発表されており、さすがに僕はリアルタイム派のリスナーではありません。 1990 年代初頭に、Tony Kosinec の Columbia 盤が日本で初 CD 化されたときに、渚十吾さんが解説を書かれたのですが、そこに Tony Kosinec の参加しているアルバムとして Ron Baumber の名前が記されていました。 それを頼りに海外通販で探して入手したのが、この「China Doll」です。 渚十吾さんは、Tony Kosinec への愛情あふれるその解説で、Tony Kosinec が参加しているミュージシャンとして、Ron 以外に Tim Curry や Don Jewitt の名前を挙げていました。 Tim Curry はともかく、Don Jewitt もいずれこのブログで取り上げたいと思っています。
話をこのアルバムに戻しましょう。 いま、このブログを書きながらレコードの針は今日 2回目の A面ラストのあたりをトレース中。 静かな夜更けにこんなに似合うアルバムも珍しいなと思いながら、キーボードを叩いています。 アルバムは Jonathan Goldsmith の弾くエレピがメロウな「Dana’s Song」で幕を開けます。 この曲の持つさりげないセンスとムーディーなサウンドをどのように表現すればいいのでしょう。 メランコリックなサックスのソロには打ちひしがれてしまいます。 続く「Little By Little」も遠慮がちでいてステディーな演奏をバックに、憂いを帯びた Ron Baumber のボーカルの渋さが際立ちます。 続くはエレピ主体のミディアム・バラード「I Know It’s Right」ですが、この曲も非の打ち所がありません。 こんな曲は、ウィスキーのロックを飲みながら聴くと最高ですね。 「East Of The Rockies」はギターを中心としたサウンドで、このアルバムの中ではもっともフォーク色の強いものとなっています。 郷愁あふれるハーモニカのせいかもしれません。 A 面ラストの「Keep It On The Tracks」は、サビの繰り返しが耳に残るアルバムのなかではポップ指向を感じる作品です。
B 面に移りましょう。 1 曲目の「Duncan And The Devil」は、いきなり Max Middleton かと錯覚するようなファンキーなエレピのイントロに驚きます。 この曲はラストの終わり方まで、英国産の通好みの名グループ「Hummingbird」の影響をモロに受けているに違いありません。 これは、おそらくエレピの Jonathan Goldsmith の指向でしょう。 つづく「Picture Of A Lady」もまたメロウ。 雰囲気的には Steve Eaton のセカンドあたりに収録されていてもおかしくないような内容です。 まさにプレ AOR の良さが凝縮されています。 アルバムタイトル曲「China Doll」も同様の傾向ですが、エレピと女性コーラスのセンスに脱帽です。 ピアノ中心のしっとりしたバラード「Like A Falling Sparrow」は、Bill Findlay なる人物の作品。 ラストの「Lullaby」はおとなしく目立たない曲ですが、レコーディング段階からこの曲をラストにすることが意識されて作られた感じがします。
結局、1 日で 3回も聴いてしまいましたが、やはりこのアルバムは数多いカナダ産のアルバムの中でも最高峰の部類に入る作品だという認識を新たにしました。 そもそもは、Tony Kosinec をキーワードに辿り着いたアルバムなのですが、そんな事はすっかり忘れてしまいます。 聴いていても、Tony Kosinec がどの曲にコーラス参加しているのか、ということは分かりませんし、何度も聴くうちにそれは余計な詮索であることに気がつくのです。
残念ながら、Ron Baumber が残した作品は、この「China Doll」だけのようです。 そして、Ixtlan Records のレコードもこのアルバムの他に見かけたことはありません。 来年あたりにまさかの世界初 CD 化なんていう初夢みたいなニュースが舞い込んでくることを期待しながら、このレコードをまたラックの「大事コーナー」に戻すことにしましょう。
では、みなさん良いお年を。
■Ron Baumber / China Doll■
Side-1
Dana’s Song
Little By Little
I Know It’s Right
East Of The Rockies
Keep It On The Tracks
Side-2
Duncan And The Devil
Picture Of A Lady
China Doll
Like A Falling Sparrow
Lullaby
Produced by Kerry Crawford , Jonathan Goldsmith , Ron Baumber
Recorded at Thunder Sound , Toronto , Ontario , Sept.Oct.Nov.Dec.1975
All songs written by Ron Baumber except ‘Falling Sparrow’ by Bill Findlay
Ron Baumber : lead vocals , acoustic guitar , electric guitar
Kerry Crawford : acoustic guitar , electric guitar
Jonathan Goldsmith : piano , Rhodes , Arp and Elka Synthesizers
Bob Disale : percussion
Dave Nicol : bass
Richard Horbatiuk : bass on ‘Falling Sparrow’ and ‘Lullaby’
Lance Bennett : harmonica
Ben Mink : mandolin , violin
Bruce Pennycook: saxophone
Sandra Pim , Joanne McKay , Carol Hansen , Tony Kosinec , Kerry Crawford , Ron Baumber : background vocals
Ixtlan Records ILN-1001
2006 年最後にご紹介するアルバムです。 このブログを開設したのが今年の 3月ですから、よく継続できているなあと自分でも関心してしまいます。 そういえば、今年のお正月に「今年の誓い」的なものを立てたのですが、まともに実現しているのはこのブログくらいかもしれません。
さて、この Ron Baumber はカナダが生んだメロウな SSW アルバムの名盤として、割と古くから有名な作品。 僕のレコードラックの左隅にある大事なレコードばかりを収納しているコーナーから取り出してきました。 黒い背景に浮かんだ精悍な表情が印象的で一度みたら忘れられないジャケットですが、今ではなかなか入手困難になってしまっています。 アルバムは 1976 年に発表されており、さすがに僕はリアルタイム派のリスナーではありません。 1990 年代初頭に、Tony Kosinec の Columbia 盤が日本で初 CD 化されたときに、渚十吾さんが解説を書かれたのですが、そこに Tony Kosinec の参加しているアルバムとして Ron Baumber の名前が記されていました。 それを頼りに海外通販で探して入手したのが、この「China Doll」です。 渚十吾さんは、Tony Kosinec への愛情あふれるその解説で、Tony Kosinec が参加しているミュージシャンとして、Ron 以外に Tim Curry や Don Jewitt の名前を挙げていました。 Tim Curry はともかく、Don Jewitt もいずれこのブログで取り上げたいと思っています。
話をこのアルバムに戻しましょう。 いま、このブログを書きながらレコードの針は今日 2回目の A面ラストのあたりをトレース中。 静かな夜更けにこんなに似合うアルバムも珍しいなと思いながら、キーボードを叩いています。 アルバムは Jonathan Goldsmith の弾くエレピがメロウな「Dana’s Song」で幕を開けます。 この曲の持つさりげないセンスとムーディーなサウンドをどのように表現すればいいのでしょう。 メランコリックなサックスのソロには打ちひしがれてしまいます。 続く「Little By Little」も遠慮がちでいてステディーな演奏をバックに、憂いを帯びた Ron Baumber のボーカルの渋さが際立ちます。 続くはエレピ主体のミディアム・バラード「I Know It’s Right」ですが、この曲も非の打ち所がありません。 こんな曲は、ウィスキーのロックを飲みながら聴くと最高ですね。 「East Of The Rockies」はギターを中心としたサウンドで、このアルバムの中ではもっともフォーク色の強いものとなっています。 郷愁あふれるハーモニカのせいかもしれません。 A 面ラストの「Keep It On The Tracks」は、サビの繰り返しが耳に残るアルバムのなかではポップ指向を感じる作品です。
B 面に移りましょう。 1 曲目の「Duncan And The Devil」は、いきなり Max Middleton かと錯覚するようなファンキーなエレピのイントロに驚きます。 この曲はラストの終わり方まで、英国産の通好みの名グループ「Hummingbird」の影響をモロに受けているに違いありません。 これは、おそらくエレピの Jonathan Goldsmith の指向でしょう。 つづく「Picture Of A Lady」もまたメロウ。 雰囲気的には Steve Eaton のセカンドあたりに収録されていてもおかしくないような内容です。 まさにプレ AOR の良さが凝縮されています。 アルバムタイトル曲「China Doll」も同様の傾向ですが、エレピと女性コーラスのセンスに脱帽です。 ピアノ中心のしっとりしたバラード「Like A Falling Sparrow」は、Bill Findlay なる人物の作品。 ラストの「Lullaby」はおとなしく目立たない曲ですが、レコーディング段階からこの曲をラストにすることが意識されて作られた感じがします。
結局、1 日で 3回も聴いてしまいましたが、やはりこのアルバムは数多いカナダ産のアルバムの中でも最高峰の部類に入る作品だという認識を新たにしました。 そもそもは、Tony Kosinec をキーワードに辿り着いたアルバムなのですが、そんな事はすっかり忘れてしまいます。 聴いていても、Tony Kosinec がどの曲にコーラス参加しているのか、ということは分かりませんし、何度も聴くうちにそれは余計な詮索であることに気がつくのです。
残念ながら、Ron Baumber が残した作品は、この「China Doll」だけのようです。 そして、Ixtlan Records のレコードもこのアルバムの他に見かけたことはありません。 来年あたりにまさかの世界初 CD 化なんていう初夢みたいなニュースが舞い込んでくることを期待しながら、このレコードをまたラックの「大事コーナー」に戻すことにしましょう。
では、みなさん良いお年を。
■Ron Baumber / China Doll■
Side-1
Dana’s Song
Little By Little
I Know It’s Right
East Of The Rockies
Keep It On The Tracks
Side-2
Duncan And The Devil
Picture Of A Lady
China Doll
Like A Falling Sparrow
Lullaby
Produced by Kerry Crawford , Jonathan Goldsmith , Ron Baumber
Recorded at Thunder Sound , Toronto , Ontario , Sept.Oct.Nov.Dec.1975
All songs written by Ron Baumber except ‘Falling Sparrow’ by Bill Findlay
Ron Baumber : lead vocals , acoustic guitar , electric guitar
Kerry Crawford : acoustic guitar , electric guitar
Jonathan Goldsmith : piano , Rhodes , Arp and Elka Synthesizers
Bob Disale : percussion
Dave Nicol : bass
Richard Horbatiuk : bass on ‘Falling Sparrow’ and ‘Lullaby’
Lance Bennett : harmonica
Ben Mink : mandolin , violin
Bruce Pennycook: saxophone
Sandra Pim , Joanne McKay , Carol Hansen , Tony Kosinec , Kerry Crawford , Ron Baumber : background vocals
Ixtlan Records ILN-1001