■Ross Ryan / A Poem You Can Keep■
前回に続いて、セピア色のジャケット。 今日、取り上げてみたのはオーストラリアのシンガーソングライター、Ross Ryan のアルバムです。 Ross Ryan はアメリカ生まれですが、このアルバムを発表した 1972 年には、オーストラリアの西海岸、Perth に住んでいました。 彼曰く、『これは、僕の 6 枚目のレコードだ。 でも不幸なことにあなたが買うことのできる唯一のものだ。』とのこと。 もしかして、カンサス州からオーストラリアにたどり着く前に、自主制作でアルバムを 5 枚も発表していたのかもしれません。 その謎については最後に触れることにします。
さて、このアルバム、1970 年代前半にありがちな乾いたロックよりの SSW アルバムを予想する方も多いかと思いますが、声質も含めて近いのは、イギリスの Al Stewart じゃないかと個人的には思っています。 あるいは、Cat Stevens とか。もちろん全部が全部似ているわけではありませんが、アルバムの後半に並ぶしっとりとしたメロディとアレンジには、アメリカではなくイギリスの匂いを感じるのです。
たしかにオーストラリアのイメージを感じる「I Don’t Want To Know About It」や「Goodbye Mitchy」のような曲もあるのですが、半数くらいが音数の少ないバラード、もしくはミディアムなのです。 A 面では、アルバムを代表する名曲「Country Christine Waltz」やまさに Al Stewart にそっくりな「Worth My While」の 2 曲が光ります。 B 面は、アルバムタイトル曲の「A Poem You Can Keep」からエンディングまでの 3 曲が英国的です。 「A Poem You Can Keep」はクラシカルな趣のある上品な曲ですが、メドレー風に途切れずに次の「So Say Goodbye」へと続いていきます。 この曲も翳りのあるしんみりした曲ですが、そのムードはラストの「Last Song」へと受けつがれていきます。 この 3 曲から思い浮かべるのは、どんよりしたイギリスの空模様であって、けっして Perth に広がる青空のイメージではありません。
とりあげなかった曲のなかにも変わった曲があります。 たとえば、「Can’t Say It Hurts Me」は、ピアノがリードする二拍子。 軽快なタッチですが、B 面へのつなぎという感じですね。 クレジットはないものの、スィングするクラリネットのソロが印象的です。 陽気な曲なのですが後半は演奏がフェードアウトし、コーラスだけが浮かび上がってきます。 さらにサウンド・コラージュ的な要素も盛り込んで終わったかと思うと、静かなエピローグが待っているという凝ったアレンジになっているのですが、そこはかなり斬新に響きます。
他には、Todd Rundgren の曲名みたいな「Hello , Remember Me」 は Tony Easterman によるピアノがメランコリックに響く佳作。 Peter Martin のギターのみをバックにした繊細な小曲 「Making The Same Mistakes」も忘れてはいけません。 このように、各曲のさりげないクオリティの高さには、感心させられます。
後にオーストラリアで最も成功したシンガー・ソングライターの一人となったRoss Ryan ですが、彼のメジャー・デビューとなるこの作品を聴いていると、後の成功が納得できる内容となっています。 とはいえ、代表的な作品である次作「My Name Means Horse」をはじめ、彼のほかの作品を未聴なので、これ以上なんとも言えませんが、おそらく 1970 年代の彼の作品は買って損のないレベルなのだろうと思います。
最後に、彼の公式ページを発見しました。 すると、たしかにこのアルバムの前に 5 枚もの自主制作アルバムを発表していることが判明。 しかしジャケットが掲載されているのは「Homemovies」1 枚だけという状態。 このアルバムなんとプレス枚数がたった 90 枚だったそうです。 さらには、ファースト・シングル「Christine」にいたっては、Only 3 acetates were made. だそうです。 これには絶句ですね。 3 枚しかないレコードなど、この世に存在するのでしょうか?
■Ross Ryan / A Poem You Can Keep■
Side-1
I Don’t Want To Know About It
Empire Lady
Country Christine Waltz
Worth My Wile
Can’t Say It Hurts Me
Side-2
Hello , Remember Me
Making The Same Mistakes
Goodbye Mitchy
A Poem You Can Keep
So Say Goodbye
Last Song
Arranged by Peter Martin
Produced by Peter Dawkins
All Songs composed by Ross Ryan
Ross Ryan : vocal , acoustic guitar
Tony Easterman : piano , organ , electric piano , clavinet
Dave Ellis : bass
Doug Gallacher : drums, wind chimes
Peter Martin : acoustic and electric guitar
John Sangster : tambourine
Kenny Kitchen : Pedal Steel
Lal Kuring : cello
Terry Walker : background vocals
Mike Leyton : background vocals
Betty Lys: background vocals
Bobbi Marchini : background vocals
EMI(Australia) ST-11221
前回に続いて、セピア色のジャケット。 今日、取り上げてみたのはオーストラリアのシンガーソングライター、Ross Ryan のアルバムです。 Ross Ryan はアメリカ生まれですが、このアルバムを発表した 1972 年には、オーストラリアの西海岸、Perth に住んでいました。 彼曰く、『これは、僕の 6 枚目のレコードだ。 でも不幸なことにあなたが買うことのできる唯一のものだ。』とのこと。 もしかして、カンサス州からオーストラリアにたどり着く前に、自主制作でアルバムを 5 枚も発表していたのかもしれません。 その謎については最後に触れることにします。
さて、このアルバム、1970 年代前半にありがちな乾いたロックよりの SSW アルバムを予想する方も多いかと思いますが、声質も含めて近いのは、イギリスの Al Stewart じゃないかと個人的には思っています。 あるいは、Cat Stevens とか。もちろん全部が全部似ているわけではありませんが、アルバムの後半に並ぶしっとりとしたメロディとアレンジには、アメリカではなくイギリスの匂いを感じるのです。
たしかにオーストラリアのイメージを感じる「I Don’t Want To Know About It」や「Goodbye Mitchy」のような曲もあるのですが、半数くらいが音数の少ないバラード、もしくはミディアムなのです。 A 面では、アルバムを代表する名曲「Country Christine Waltz」やまさに Al Stewart にそっくりな「Worth My While」の 2 曲が光ります。 B 面は、アルバムタイトル曲の「A Poem You Can Keep」からエンディングまでの 3 曲が英国的です。 「A Poem You Can Keep」はクラシカルな趣のある上品な曲ですが、メドレー風に途切れずに次の「So Say Goodbye」へと続いていきます。 この曲も翳りのあるしんみりした曲ですが、そのムードはラストの「Last Song」へと受けつがれていきます。 この 3 曲から思い浮かべるのは、どんよりしたイギリスの空模様であって、けっして Perth に広がる青空のイメージではありません。
とりあげなかった曲のなかにも変わった曲があります。 たとえば、「Can’t Say It Hurts Me」は、ピアノがリードする二拍子。 軽快なタッチですが、B 面へのつなぎという感じですね。 クレジットはないものの、スィングするクラリネットのソロが印象的です。 陽気な曲なのですが後半は演奏がフェードアウトし、コーラスだけが浮かび上がってきます。 さらにサウンド・コラージュ的な要素も盛り込んで終わったかと思うと、静かなエピローグが待っているという凝ったアレンジになっているのですが、そこはかなり斬新に響きます。
他には、Todd Rundgren の曲名みたいな「Hello , Remember Me」 は Tony Easterman によるピアノがメランコリックに響く佳作。 Peter Martin のギターのみをバックにした繊細な小曲 「Making The Same Mistakes」も忘れてはいけません。 このように、各曲のさりげないクオリティの高さには、感心させられます。
後にオーストラリアで最も成功したシンガー・ソングライターの一人となったRoss Ryan ですが、彼のメジャー・デビューとなるこの作品を聴いていると、後の成功が納得できる内容となっています。 とはいえ、代表的な作品である次作「My Name Means Horse」をはじめ、彼のほかの作品を未聴なので、これ以上なんとも言えませんが、おそらく 1970 年代の彼の作品は買って損のないレベルなのだろうと思います。
最後に、彼の公式ページを発見しました。 すると、たしかにこのアルバムの前に 5 枚もの自主制作アルバムを発表していることが判明。 しかしジャケットが掲載されているのは「Homemovies」1 枚だけという状態。 このアルバムなんとプレス枚数がたった 90 枚だったそうです。 さらには、ファースト・シングル「Christine」にいたっては、Only 3 acetates were made. だそうです。 これには絶句ですね。 3 枚しかないレコードなど、この世に存在するのでしょうか?
■Ross Ryan / A Poem You Can Keep■
Side-1
I Don’t Want To Know About It
Empire Lady
Country Christine Waltz
Worth My Wile
Can’t Say It Hurts Me
Side-2
Hello , Remember Me
Making The Same Mistakes
Goodbye Mitchy
A Poem You Can Keep
So Say Goodbye
Last Song
Arranged by Peter Martin
Produced by Peter Dawkins
All Songs composed by Ross Ryan
Ross Ryan : vocal , acoustic guitar
Tony Easterman : piano , organ , electric piano , clavinet
Dave Ellis : bass
Doug Gallacher : drums, wind chimes
Peter Martin : acoustic and electric guitar
John Sangster : tambourine
Kenny Kitchen : Pedal Steel
Lal Kuring : cello
Terry Walker : background vocals
Mike Leyton : background vocals
Betty Lys: background vocals
Bobbi Marchini : background vocals
EMI(Australia) ST-11221