Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Henry Gaffney

2011-03-06 | AOR
■Henry Gaffney / Waiting For A Wind■

  昔でいう伊達男、今ならイケメン。 1970 年代の音楽シーンにおいて、その風貌のカッコよさとサウンドのお洒落さでは他の追随を許さない、と個人的には思っている存在が Henry Gaffney です。 これで売れていたらセレブの仲間入りだったのですが、そう上手く事は運ばず、レコードが売れなかったどころか、彼が残した 2 枚のアルバムがともに CD 化されていないという残念な事態となっています。
  そんな Henry Gaffney のことをふいに思い出し、ネットで調べてみたところ、昨年の 5 月にがんで亡くなっていたことを知りました。 がんとの長い闘病の果てだったそうです。 そこで、今回と次回で 1 年遅れの Henry Gaffney 追悼投稿を行うことにします。

  Henry Gaffney は生粋のニューヨーク育ちなのでしょうか。 彼の音楽のどこを切り取ってもマンハッタンの匂いがします。 世界恐慌が起こる前の 1920 年代のニューヨークはこんなに楽しかったのではないか、と思わせるような古き良き時代の残り香を漂わせるようなサウンドが、当時の名うてのセッション・ミュージシャンを従えて優雅に展開されるのです。 Kenny Rankin をよりジャズ寄りにした雰囲気というとイメージしやすいかもしれません。 いずれにしてもこのテイストは他の SSW/AOR のミュージシャンとは一線を画すところであり、Henry Gaffney の最大の個性となっています。 
  
  アルバムはどの曲も充実した仕上がりとなっているのですが、個人的には A-2 のバラード「Over My Shoulder」に尽きます。 静かでスロウな入りから、徐々に Henry Gaffney のエモーションが解き放たれていく様はあまりにも素晴らしく、形容のしようがありません。 残念なのは、フェードアウトが早く、もう少し長く味わっていたかったと思わせる点です。 それを除けば、完ぺきな楽曲となったことでしょう。 次点となる曲は、悩んだ末に「Nightmare」。 曲調は全く異なり、Anthony Jackson のベースが弾ける疾走感が心地よい楽曲ですが、当時の Steely Dan に通じるものを感じます。 Don Grolnick のエレピが夜に映えるバラード「Can I Rely On You」もビター・スウィートな味です。

  しかしながら、アルバムの大勢を締めるのは「I’m Waiting For A Wind」や「Manhattan」といったアコースティック・スウィング系の楽曲です。 同じ傾向としては「If Only The Weather Would Change」、「For Pete’s Sake (Julian Street)」そして「Happy Birthday To Ya」なども入ります。 いずれもセンスあふれる仕上がりなのですが、これらの楽曲が醸し出す絶妙に洒落たセンスを売り物に世に打って出るには、時代が 10 年早かったと思います。 西海岸を中心に音楽産業が肥大化し始める 1976 年には Henry Gaffney のサウンドは敷居が高すぎたとしか言いようがありません。 

  彼の音楽を聴くたびに、Francis Scott Fitzgerald の「The Great Gatzby」を思い出します。 彼の肖像写真が Henry Gaffney と重なって見えてしまうのです。

■Henry Gaffney / Waiting For A Wind■

Side-1
I’m Waiting For A Wind
Over My Shoulder
Manhattan
Nightmare
Can I Rely On You

Side-2
If Only The Weather Would Change
Superstar
For Pete’s Sake (Julian Street)
Seems I’m Falling
Happy Birthday To Ya

Producer : Dan Collins
Arrangements : Clark Gassman
Engineer : Jerry Barnes

Produced by Gary Klein
All songs written by Henry Gaffney
Strings and horns arranged and conducted by Charlie Calello

Henry Gaffney : acoustic guitar, piano
Anthony Jackson : bass
Elliott Randall : electric guitar
Allan Schwartzberg : drums, percussion
Gary Klein : glass harmonica
Lance Quinn : guitar
Pat Rebillot : piano, electric piano
Richard Davis : acoustic bass
John Tropea : guitar
Don Grolnick : electric piano
Dave Friedman : vibes
Joe Jorgensen : clicks
Lewis Soloff: trumpet solo
Al Dana : background voices
Lenny Roberts: background voices
Dave Buskin : background voices

RCA APL1-1548


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