Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Jimmie Haskell

2007-05-27 | Soft Rock
■Jimmie Haskell / California ‘99■

 自分にとって、ストリングス・アレンジの名手といえば、アメリカは Nick DeCaro 、イギリスでは Paul Buckmaster になります。 そのくらいこの 2人の存在感は際立っていました。 もちろん、手法や個性は全く異なりますが、この 2人がクレジットに名を連ねていれば、そのレコードの購入確率は一気に上昇したものです。
 そんな Nick DeCaro にも劣らない名手といえば、この Jimmie Haskell でしょう。 彼が参加したアルバムは、おそらく Nick DeCaro の倍ちかくではないかと思います。

 さて、そんな裏方の Jimmie Haskell が自身のアルバムを残していたのが、今日とりあげるこの作品。 1999 年のカリフォルニアを想像した架空のコンセプトアルバムとでも言える異色のアルバムです。 1971 年に ABC/Dunhill からリリースされました。

 アルバムはこれから始まる物語の幕開けを感じさせるタイトル通りの序曲「Overture」でスタート。 電子的にコラージュしたナレーションが聞こえたら「Appopopoulishberg」です。 その前衛的な感覚はドイツの Faustみたいですが、曲は中盤からはアコーディオンなどや弦楽器を主体としたポルカ調のダンスミュージックへと変容していきます。 そしてまたナレーションということで、このアルバムは各曲の間に必ずナレーションがあって、これが物語を進めてくうえでの必要な情報が語られるという構成であることがわかります。 3 曲目は The Band の名曲のカバー「The Night They Drove Old Dixie Down」です。 Jimmy Witherspoon のリードボーカルに、Clydie King などの重厚な女性コーラスが重なってくるアレンジですが、なかなか風格のある出来に仕上がっています。 続いては The Millennium の名曲「To Claudia on Thursday」。 Mamas & Papas の Denny Doherty がボーカルをとるこの曲もオリジナルに忠実なアレンジとなっています。 それはともかく、1971 年に The Band と The Millennium の代表曲のカバーが並んで収録されているという珍事がこのアルバムでは実際に起こっており、ここが前半の最大の聴き所であることは間違いありません。

 初めて B面を聴いたときのショックは今でも忘れられません。 何しろ、The Millennium のアルバムの冒頭を飾るあの「Prelude」がほぼ忠実に再現されているのです。 何かの間違いかと思うほど、あのハープシコードの音色やまったりしたリズムセクションの感じなど The Millenniumとそっくりに聴こえます。 それは、もしかしてサンプリングなのかと思うほどです。
 つづく「Jessica Stone」と「California Fairy Tale」は、なんと Joe Walsh がボーカルをとっています。  やや甲高いネコ声が特徴の Joe Walsh を起用した理由は不明ですが、彼だけが 2曲歌わせてもらっていることになりますね。 アルバムは、例によってナレーションに挟まれながら個々の曲が微妙に終末感を匂わせながら進んでいきます。 そしてラストは、The Who の Tommy に収録されていた「Underture」のカバーです。 Jimmie Haskell と The Who の接点は意外ではありますが、彼が Tommy のようなコンセプト・アルバムに興味を抱いていたことは想像できますね。

 Jimmie Haskell の描いた 1999 年のカリフォルニアはどんな世界だったのでしょうか。 見開きでレコード 6枚分にも広がる特殊ジャケットには、年表らしきものが書かれています。 1997 年には、Washington D.C がカリフォルニアの「Black Capital」となり、カリフォルニア州にある San Clemente がカリフォルニアの「New White Capital」となるという記載を見ると、差別表現ではないかと心配になってしまいます。 
 いずれにしても、聴き取れないナレーションや理解できなかったストーリーの謎がもう少しで解明されるかもしれません。 というのも、この珍盤が、ついに世界初 CD 化されることになっているのです。 これはかなりの快挙ですね。 しかも、この 6枚分に広がるジャケットも再現しているということですので、かなりの力の入れようです。 個人的には、音楽の説明よりもストーリーの解説を期待したいのですが難しいかなあ。

 

■Jimmie Haskell / California ‘99■

Side-1
Overture
Appopopoulishberg
The Night They Drove Old Dixie Down  (J.R. Robertson)
To Claudia on Thursday (Joey Stec & Michael Fennelly)

Side-2
Prelude (D Rhodes & R.Edgar)
Jessica Stone  (Bill Szymczyk & John Wondering)
California Fairy Tale (Jimmie Haskell , Bill Szymczyk & Joe Walsh)
Barbara
Underture (Peter Townshend)

Conducted by Arranged by and One-half of all songs by Jimmie Haskell
Produced and Engineered by Bill Szymczyk at the Record Plant

Guest Singer in order of Appearance
Jimmy Witherspoon , Joe Walsh , Denny Doherty , Bid Wanda and the Wombats , Merry Clayton , Clydie King

Keyboards : Larry Knechtel , Paul Harris , Lincoln Mayorga
Guitar : Louie Shelton , Neil Le Vang , Howard Roberts , Al Vescovo , Luis Sevadjia , Mike deasy , Dennis Budimir
Bass ; Lyle Ritz , Bryan Garofalo
Percussion ; Jim Keltner , Earl Palmer , Russ Kunkel , Bill Szymczyk , Emil Richards Gene Estes
Vocals : Carol Lombard , Sally Stevens , Susie McCune , Jerry Whitman , Tom Kenny , Mitch Gordon , gene Morford , Andra Willis , Venetta Fields , Maxine Willard , Merry Clayton , Clydie King

ABC / Dunhill ABCX 728


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1 コメント

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サントラ好き! (fulmas)
2010-04-23 09:58:43
R・ニューマンの「ラグタイム」V・D・パークスの「ポパイ」と思い出しながら古いレコード聴き漁っていたらJ・ハスケルの「カリフォルニア ’99」を思い出し奥にしまってあったアナログ盤を引っ張り出してでっかいジャケを広げました、J・ウイザースプーンの「オールド・ディキシー・・・」懐かしかったです。
ニック・デカロのサントラってあるんでしょうか?
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