Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Michael Gillotti

2008-04-05 | SSW
■Michael Gillotti / California■

  僕が出会った「California」というタイトルのアルバムには駄作はありません。 Harvey Williams の 1999 年のアルバム、Perry Blake の 2002 年のアルバムはリピート率の高い愛聴盤といなっています。 カリフォルニアという言葉の響きには、陽気さと切なさがいりまじった独特の情感を覚えてしまうのですが、イーグルスの「ホテル・カリフォルニア」をリアルタイムで聴いた世代に共通のものではないかと密かに思っています。

  さて、今日は最も最近出会った「California」を取り上げてみました。 イタリア系と思われる SSW の Michael Gillotti が 1981 年に発表した作品です。 彼は 2005 年と 2007 年に自主制作の CD-R を発表している現役のミュージシャン。 残念ながら公式サイトは発見できませんでしたが、それどころかこのアルバムについて言及しているサイトすら見つけられませんでした。 近年のサウンドは、「Folk Rock in the spirit of Bob Dylan, Joan Baez, Donovan」と評されている Michael Gillotti ですが、27 年前の音はどんなものだったのでしょうか。

 海辺で笑顔を見せるジャケットからメロウなプリ AOR 的なサウンドを予想したのですが、少しだけ当たっていました。 メロディや曲自体の特徴を活かしたアレンジと演奏は手堅いものがあります。 新鮮に響くのは、Irene Goodnight のバイオリンの音色です。 半分くらいの曲に参加していますが、カントリーのような味わいにはならないリード楽器として存在感を見せています。 Irene Goodnight でお気づきになった方もいるかと思いますが、彼女の名前は、Ry Cooder の十八番でもある「Goodnight, Irene」をひっくり返したものですね。 きっと Irene だけが本名なのでしょう。

  このアルバムのハイライトは「Pisces」と「Bad Times With The Good」の2曲です。 「うお座」という意味の「Pisces」は 7 分を超える大作。 その間、特に仰々しい展開をみせることもせずに、ひたすら抑制気味に歌われるバラードなのですが、スケール感あふれる作風に思わず引き込まれてしまいます。 「Bad Times With The Good」は、最もメロウな楽曲。 サビの繰り返しのコーラス隊がエモーショナルで素晴らしく、静かな高揚感が味わえます。 このアルバムの最高傑作でしょう。
  アルバムはいかにも 80 年代という古さを感じる「Robber Baron Blues」でスタートするので途惑いますが、「Song To My Sister」や「You Got Love」といったリズミカルな佳作が続き、一安心したところで「Pisces」を迎えます。 B 面は「Bad Times With The Good」が良すぎて他の曲はかすみがちですが、アコギの響きが美しい「Shirley’s Song」や淡々としたミディアム「Life After」はなかなかの楽曲です。 全 9 曲のアルバムですが、バラエティに富みながらも著しい違和感を感じる曲はありません。 カリフォルニアからは、Jon Tabakin や Joseph Nicoletti のようなユニークな作品が生み出されますが、この Michael Gillotti のアルバムはそれらのような個性はあまり感じませんが、良質なサウンド作りは高く評価することができるでしょう。
  
  さて、Michael Gillotti の近年の作品は、反戦フォークといった趣のようですが、この「California」にはそのようなメッセージ色は全く感じさせません。 当時のアメリカの政治経済が安定していた時期だったかは覚えていませんが、若き日の Michael Gillotti にとってアメリカは夢と希望に満ちていたのでしょう。 このアルバムの 3 年後に、ロスアンジェルス・オリンピックを迎えることになります。




■Michael Gillotti / California■

Side-1
Robber Baron Blues
Song To My Sister
You Got Love
Pisces

Side-2
Bad Times With The Good
California
I’m Always Here
Shirley’s Song
Life After

Produced by Michael Gillotti
All songs written by Michael Gillotti
Arrangements by Michael Gillotti with participating musicians

Michael Gillotti : vocals , acoustic & electric guitar , harmonica
Tom Donlinger : drums , tablas
Ray Scott : electric & acoustic guitar
Steve Evans : bass (side one)
Dallas Smith : tenor , alto & soprano saxophone , flute
Irene Goodnight : violin
Fran Carbonaro : background vocals
Stu Feldman : bass (side two)
Esther Clyman : background vocals on ‘Bad Times With The Good’

Metanoia Music PP133


最新の画像もっと見る

コメントを投稿