Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Nancy Grandquist

2010-10-11 | Christian Music
■Nancy Grandquist / Somebody Special■

  今も現役でパワフルなゴスペル・シンガーとして活躍している Nancy Grandquist が 1978 年にリリースしたファースト・アルバムを取り出してみました。 秋の夜長にはしっとりとした SSW もいいですが、彼女のような歌唱力のあるバラード・シンガーに浸ってみるのも悪くありません。 このレコードには、1970 年代後半のクリスチャン系音楽の典型的なスタイルを踏襲しつつも、艶やかなストリングス・アレンジにやさしく包まれたゴージャスなサウンドが収められています。 さっそくレビューしてみることにしましょう。

  アルバムは冒頭の「Can You Give A Little Of Yourself」からミディアム・スロウで始まります。 華美にならないように抑制されたアレンジの元でストングスやホーンが加わり、Nancy のボーカルを好サポートしている印象です。 つづく「You’ve Got To Tell It Everywhere」はキャッチーでポップなメロディが耳に残り、こちらを1曲目にしたほうがリスナーにとっては入りやすかったのではと余計なことを考えてしまいます。 スウィート・ソウルのような味わいの「Touch Me, Lord」はシルクのような肌触りですが、もう少し短めにまとめてほしかった気も。 流れを引き継いだ「When I Found True Love」はさらに奥行きをかんじさせるバラード。 包み込むようなストリングスも最高です。 A 面ラストの「It’s Gonna Be Worth It All」は意外にもフィリーソウルとディスコ・サウンドの中間みたいなサウンド。 時代を感じさせる楽曲でした。

  B 面の「Never Too Busy」もディスコっぽさが残る B 級サウンド。 途中の転調など青臭い展開に苦笑してしまいます。 つづく「Everytime That You Need Him (He’ll be There)」は一転して彼女の持ち味であるバラードに戻ります。 スロウすぎると感じるほどの「タメ」が彼女のボーカルの特徴でもありますが、ここではメロウなサックスの音色と相まって、アダルトでムーディーなアレンジはまさに媚薬のようです。 同じスロウをキープした「Nobody Knows」もそのまま昏睡してしまいそうなバラード。 Nancy Grandquist の真骨頂とも言える楽曲が続きます。 ややアップなフィーリー・ソウル調 「I’ll Be Thankful For All The Good Things」を挟んで、再びディープなバラードの世界へ。
「Let The Blessings Flow」は音数の少ないシンプルな演奏をバックにしたストイックなバラード。 情緒も演奏も華美になりすぎず、凛とした美しさを感じさせるところはアルバムのなかでも随一の出来栄えでしょう。 ストリングスがつながってラストの「Praise The Lord From Whom All Blessings Flow」へと流れていきます。 ここではバックコーラス全員による祈りとも言えるハーモニーを聴かせますが、けして歌い上げることはなく、あくまでも清楚で品のある世界観を保っていました。 このあたりは白人によるクリスチャン・ミュージックの典型的なスタイルとも言えるでしょう。
  
  こうしてアルバムを聴き終えて感じるのは Nancy Grandquist の優れた歌唱力です。 あれほどスロウなバラードを冗長にならずに歌いこなすのは相当なものだと感心させられます。 しかし 1970 年代の後半には、このような女性 CCM が多く存在したので、彼女の才能が頭角を表したり、アルバムからヒット曲が生まれたりということはありませんでした。 ちょうど、前年の 1977 年に Debbie Boone が「You Light Up My Life(恋するデビー)」を全米ナンバーワンに送り込んでいます。 当時は気がつきませんでしたが、この曲も CCM ど真ん中の楽曲なので、CCM が一部のリスナーのためだけのものではなかったこと表しています。 
  話は戻り、Nancy Grandquist のその後について触れておきましょう。 彼女は 1996 年に「I’ve Gotta Testify」というアルバムを発表。 現在も教会や施設で活発に音楽活動を続けています。 検索すると動画も出てきました。

■Nancy Grandquist / Somebody Special■

Side 1
Can You Give A Little Of Yourself
You’ve Got To Tell It Everywhere *
Touch Me, Lord
When I Found True Love
It’s Gonna Be Worth It All *

Side 2
Never Too Busy
Everytime That You Need Him (He’ll be There)
Nobody Knows
I’ll Be Thankful For All The Good Things *
Let The Blessings Flow
Praise The Lord From Whom All Blessings Flow

Produced by Dony McGuire
Rhythm and vocal tracks arrangements by Dony McGuirte
Strings and horn arrangements by Buddy Skipper

All songs written by Nancy Grandquist except * by Nancy Grandquist and Dony McGuire

Recorded as Sound Stage Studio, Nashbille, Tennessee & Mama Jo’s, North Hollywood, California

B.James Lowery : guitar
Fred Newell : guitar
Mike Leech : bass
Jeff Carton : bass
Dony McGuire : keyboards
Shane Keister : keyboards
Fred Satterfield : drums
Farrell Morris : percussion
Don Shefield : trumpet
Roger Bissel : trombone
Dennis Solee : woodwinds

Background vocals : Judy Breland, Jon McGuire, Dony McGuire, Greg Gordon, Joannie Christenson

Newpax Records NP 33064


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