Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Cymbal And Clinger

2010-11-24 | SSW
■Cymbal And Clinger / Cymbal And Clinger■

  前回取り上げた Sonoma を凌ぐ豪華セッション・ミュージシャンのクレジットが眩しい Cymbal And Clinger 名義の唯一のアルバムです。 1972 年に発表されたこの作品は、その時代から甘い A&M 風のソフトロックのようなイメージを持ちますが、男女の二人組というほどの対等性を感じることはなく、ほとんど男性である Johnny Cymbal のソロといっても差し支えのないアルバムです。 
  そもそもこの二人組の経歴に興味がわき、ネットで検索したところ、この Johnny Cymbal は 1960 年代から活躍していたティーンエイジ・アイドルだったのです。 この周辺には全く疎いのですが、1963 年のスマッシュヒット「Mr.Bassman」や素晴らしい邦題がつけられた「僕のマシュマロちゃん」などが代表曲のようです。 興味のある方はネットで検索すると動画もありますので、探ってみてください。
  さて、そんな Johnny Cymbal も音楽業界の荒波にもまれ、1970 年代に入って本物志向(語弊のある表現ですが)になったのでしょう。 活動の拠点をニューヨークから西海岸に移し、そこで恋に落ちた Peggy Clinger と意気投合し、二人の名義で心機一転の作品にとりかかりました。 こうして出来上がったのがセルフタイトルとなるこの作品です。 アルバムは The Rolling Stones の「Let It Bleed」のラストを飾る「You Can Always Get What You Want」を除いては全曲が Cymbal And Clinge rの手によるもの。 この辺りから彼らが、職業作家に頼らない姿勢、すなわちシンガーソングライター時代への適応を意図していたことが十二分に伝わってきます。 しかしここには、皮肉なことにここで初めてレコーディングされた彼らのオリジナルの「Rock Me Baby」がのちに、David Cassidy によりスマッシュヒットするという知られざるエピソードも隠されていました。

  アルバムは全体としてスワンプ色の濃い渋めの仕上がりとなっており、ジャケットとのイメージのギャップも感じられることから高い評価を受けたことは無いようです。 むしろ前述したセッション・ミュージシャンの骨太の演奏を楽しむくらいの軽い気持ちで接したほうが無難な作品だといえるでしょう。 たとえば、オープニングを飾る「Everyday Wants To Be Somebody」はメンフィス・ソウルを意識した曲調とアレンジですし、B-1 の「Nobody Knows」にも同じようなことが言えます。 前述の「You Can Always Get What You Want」をセレクトした理由もこうした曲を耳にするとすんなり理解できます。 しかし、個人的には、Peggy Clingerがリードをとる「Dreams Of You」、「A Little Bit No, A Little Bit Yes」、そして「For Ever And Ever」がお気に入りです。 とくに「For Ever And Ever」は Peggy Clinger と Johnny Cymnal とが交互にリードをとりあう温かみのあるミディアムで、当時の二人の愛情の深さが伝わってきます。

  この Cymbal And Clinger 名義のアルバムはこの作品のみとなってしまったのですが、二人の関係が崩れたあとの 1970 年代半ばに、Peggy Clinger がドラッグのオーバードースで死亡してしまいます。 この悲劇的な出来事に Johnny Cymbal はひどく落胆したようですが、1980 年代になってナッシュビルに活動拠点を移し、音楽活動を復帰します。 彼はそこで二度の結婚と離婚を経て、1993年に心臓発作で 48 歳の若さで亡くなります。 ジャケットの裏面に幸せそうな二人の写真が映っていますが、こんなストーリーを知ると、人生はどのように転がっていくかはまったくわからないということを痛切に実感してしまうのです。

■Cymbal And Clinger / Cymbal And Clinger■

Side-1
Everyday Wants To Be Somebody
You Can Always Get What You Want
Dreams Of You
Rock Me Baby
The Pool Shooter

Side-2
Nobody Knows
God Bless You Rock’n’Roll
A Little Bit No, A Little Bit Yes
For Ever And Ever
The Dying River

Produced by Wes Farrell for Coral Rock Productions
Rhythm tracks arranged by Wes Farrell
Strings and horns arranged by Mike Melvoin

Hal Blaine : drums
Jim Gordon : drums
Max Bennett : bass
Joe Osborne : bass
Larry Carlton : guitar
Dean Parks : guitar
Louie Sheldon : guitar
Mike Melvoin : keyboard
Mike Omartian : keyboard
Gary Coleman : percussion
Alan Estes : percussion
Ollie Mitchell : trumpet
Chuck Findley : trumpet
Slyde Hyde : trombone
Lew McCreary : trombone
Tom Scott : woodwinds
Jim Horn : woodwinds
Bob Hardaway : woodwinds

Chalsea Records CHE-1002



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