Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Sonoma

2010-11-10 | SSW
■Sonoma / Sonoma■

  名門 ABC 傘下 Dunhill からのリリースにも関わらず、あまり語られることのなかった Sonoma の唯一のアルバムです。 このアルバムを語るには、あまりにも豪華な参加ミュージシャンのことを避けて通るわけにはいきません。 Carole King や James Taylor といった SSW が世の中を席巻していた 1973 年の西海岸を代表するセッションマンの面々を見ると、Dunhill の力というものを感じざるを得ません。 個々についてコメントはしませんが、逆に Dean Parks がいないほうが不思議というような見方をしたほうが面白いかもしれませんね。

  さて、この Sonom aは男女混成の 4 人組のコーラスグループ。 ただ一人楽器を操るのは、リーダー的な存在である Charlie Merriamで、他のメンバーは歌唱のみということになります。 Charlie Merriam は収録曲の過半数を作曲しており、それ以外の楽曲はカバーとなっています。 さっそく楽曲のレビューに入っていきましょう。

  オープニングを飾る「Rock & Roll Circus」は Sonoma のサウンドを凝縮したかのようなアレンジで、全員が代わる代わるボーカルを務める名刺代わりの楽曲となっています。 ちなみに、この曲はカナダ出身でパワーポップの世界では裏番長的な存在の Bob Segarini の作曲です。 つづく「To See About You」も流れを感じさせるアップで情熱的なナンバー。 この 2 曲は直球勝負なので嫌な予感がありますが、つづく「Don’t Apologize」でほっとさせられます。 この情感あふれるバラードは、Sonoma の代表曲にしたいほどで、清々しさを感じさせるコーラスと木漏れ日の様なストリングスが魅力です。 「Love For You」は Kathy か Tricia のいずれかの女性ボーカルがリードをとるソフトロック的なナンバー。 少し舌足らずで甘いところが A&M 的です。 つづく「Try To Reach Her」Steve Adler と思われる高音の男声ボーカルがリードをとるポップな佳作。 「Thank You Just The Same」も流れを汲んだ陽気なポップナンバー。 僕には、少し幼稚ではしゃぎすぎに聴こえてしまうので辛口な採点になっていまいますが。

  B 面は Bob Dylan のカバー「Don’t Think Twice, It’s All Right」でスタート。 意外な選曲ですが、ポップなアレンジが施され、サウンドの整合感は維持できているものの、特筆すべき仕上がりとは言えません。 つづく「Waiting For You」はオーソドックスなバラード。 二人の女性による清楚なコーラスは咲き誇るコスモスのような爽やかさを運んでくれます。 男の声に戻ってがっかりという感じの「Good Time」はやや凡庸な出来ですが、再度甘い女声に戻った「What Am I Gonna Do」はA&Mのソフトロックのような展開。 この曲は Carole King と Toni Stern の楽曲ですが、Carole King 自身による演奏は無いのではないかと思っています。 ご存知の方は教えてください。 アルバムの終盤は MOR 的なムード満点の「No Way Of Knowing」と進み、ラストの「Shake A Hand」へ。 この曲は、Carol Carmichael の手による陽気なナンバーで、いったん終わったと思ったら終わらない、この手のアルバムのラストにありがちなネバーエンディング感に包まれてフェードアウトを迎えます。

  こうしてアルバムを聴き直すと、1970 年代前半の良質な音楽のエッセンスが散りばめられて、制作する側としては狙い通りのクオリティの作品となっていたのだろうと思います。 欠点を見つけるのは難しいのですが、逆に言うと必殺のシングル楽曲の不在、決定的な個性の欠如、差別化しきれていないコンセプト、といったものが浮き彫りになってきます。 たしかに他に聴くべきアルバムは山のようにあるとは思うのですが、こうして埋没していく運命のアルバムを時々は思い出してあげる必要があるように思います。

■Sonoma / Sonoma■

Side-1
Rock & Roll Circus
To See About You
Don’t Apologize
Love For You
Try To Reach Her
Thank You Just The Same

Side-2
Don’t Think Twice. It’s All Right
Waiting For You
Good Times
What Am I Gonna Do
No Way Of Knowing
Shake A Hand

Produced by Bob Monaco and Charlie Merriam
Vocal arrangement by Charlie Merriam

Sonoma : Kathy Ward, Charlie Merriam, Tricia Johns, Steve Adler

Larry Carlton : electric, acoustic &12-string guitar
Wilton Felder : bass
Joe Osborn : bass
Jim Gordon : drums & percussion
John Raines : drums & percussion
Michael Omartian : piano, arp, organ, clavinette, Fender Rhodes electric piano
Charlie Merriam : acoustic guitar , RMI electric piano
Ernie watts : tenor sax solos
Tommy Morgan : harmonica
Allan Estes : vibes, percussion
Ed Greene : drums
David Cohen : electric guitar
Rick Kellis : baritone sax
Sid Sharp : concert master
Ollie Mitchell : horn conductor
Handclaps ‘The Clapettes’ – John Dixon, Sandy Horn, Jeff Lyman

Dunhill Records DSX-50156


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