Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

James Ward

2009-05-03 | Christian Music
■James Ward / Himself■

   知られざるピアノ・マン James Ward が 1974 年に発表したデビュー・アルバム。 公式ページによると現在まで 11 枚ものアルバムを残しているようですが、彼がビジネスとしての音楽シーンの表舞台に立ったことは一度もありません。 このアルバムが公式ページのディスコグラフィーから除外されてしまっているのは、入手する手段が無いからだと思われますが、彼の音楽の原点はこのレコードにしっかりと刻み込まれています。
  表舞台という表現を使いましたが、James Ward は一貫してクリスチャン・ミュージックのフィールドで活動をしてきた人物。 従って、1974 年から 35 年もの間、ヒットとは無縁の世界を淡々と歩んできたに違いありません。

  しかし、このファースト・アルバムは、全編に渡って James Ward のピアノの弾き語りで占められており、Randy Newman に代表されるピアノ系 SSW が好きな方には、興味を惹かれるような作品に仕上がっています。曲名を見れば、クリスチャン系だということは一目瞭然ですが、サウンドはゴスペルのバック演奏みたいな気分なので特に身構えることなく James Ward の演奏と息使いに対峙することができるのです。 ここで聴けるピアノの音は、時には Tom Waits の初期の頃のような錆びれたアップライト感のする音色だったり、時には Dr. John 風のざらっとした肌触りだったりして、様々な表情を見せます。 そのバラエティさがこのアルバムの魅力と言えるでしょう。 しかし、欲を言えば、ハードなタッチの曲調が多く、メランコリックなミディアムやマイルドなバラードが少ないことがこのアルバムの最大の難点です。

  そんななか、ピアノ弾き語りの良さが顕著に現れているのは、A 面では一人ゴスペルといった趣の「Morning Sun」、アルバム唯一の名バラード「O Father」、リリカルなピアノの響きとキャッチーなメロディーの「Consider The Lilies」、Tom Waits 風の「I Will Follow You」でしょう。 偶然にも冒頭の 4 曲なのですが、アルバム全てがこの調子で順調に進んでくれれば良かったのに、という印象です。

  B 面は、個々の曲の出来があまり芳しくなく、ラストの「Psalm 90」が渋い余韻を残す程度となっています。 こうしてアルバムを振り返ってみると、勢いにまかせて一気に制作してしまった感は否めません。 James Ward は演奏のテクニックがあるだけに、一発録音で OK みたいなノリで進めていたような気がします。 そこが繊細さに欠ける雰囲気に繋がっているのでしょう。

  1970 年代のピアノ系 SSW にありがちな話ですが、James Ward は幼い頃からピアノの英才教育を受けていたのでしょう。 冒頭にも書きましたが、彼は現在も現役で活動しており、最も新しいアルバム「Life And Health And Peace」は 2000 年にリリースされていました。 商業的な成功を収めたとは思えない James Ward が 35 年にわたって活動し続けることができたのには、ピアノの演奏家としての腕に拠るところが大きかったのではないかと思っています。

 

■James Ward / Himself■

Side-1
Morning Sun
O Father
Consider The Lilies
I Will Follow You
Creation
Isaiah 53
He Shall Be Satisfied

Side-2
Speak To Me
I Wish That I Could Ask
Love Trilogy
Star In The East
Psalm 90

Produced by Bob MacKenzie
Cover Photo : Bill Grine
Studio : Lee Hazen Recording Studio, Nashville, Tennessee
Engineer : Lee Hazel

All Songs written by James Ward

Dharma Music DAR 1005-LP


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