Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Jane Voss

2009-03-15 | Folk
■Jane Voss / An Album Of Songs■

  春の足音が近づいてきた午後には、こんな牧歌的なアルバムがよく似合います。
  1976 年に発表された Jane Voss のデビューアルバムは、アコースティックな肌触りに満ちた素朴な作品。 ほぼ全曲が彼女の弾き語りですが、彼女のボーカルは田舎娘のような朴訥さ、大らかさが特徴で、70 年代のメジャーな女性 SSW とは大きくかけ離れています。 もし、この歌声が苦手だとすれば、アルバム全曲を聴きとおすのは辛いかもしれません。

  アルバムは淡々と進行する全 12 曲収録。 うち彼女のオリジナルは 3 曲で、他の曲は Carter Family や Woody Guthrie のカバーです。 ごく一部の曲にフィドルやダルシマーが挿入される程度なので、延々と続く牧草地帯を走る車窓を眺めているかのように、変わらない風景が続いていくという印象です。 とくに、A 面はワルツ中心の単調さが気になり、個々の楽曲に対するコメントはないのですが、ラストの「Keep In Mind (That I Love You)」は、Scott Alarik が彼のファースト・アルバム「Stories」でカバーしている曲でした。 この曲については、2006 年10月にアップしたScott Alarikの記事でもコメントしたとおり、親しみやすいメロディーの曲です。 ちなみに、この曲はオリジナルの 1 曲で Jane Voss が 1972 年に作曲したものです。

  B面では、気になるオリジナル曲に出会いました。 ネットで検索していて発見したのですが、「Standing Behind A Man」が日本人によってカバーされていたのです。 その邦題は『男の陰に女あり』という妙訳なのですが、カバーしたのはミュージシャンというよりは音楽評論家として知られる中川五郎です。 彼は 28 年ぶりとなるソロ・アルバム「ぼくが死んでこの世を去る日」を 2004 年に発表したのですが、そこに『男の陰に女あり』が収録されていました。 もちろん(と言っては失礼ですが…)、僕はこのアルバムを持っていませんし、聴いたこともありませんが、「Standing Behind A Man」のカバーはどんなバージョンに仕上がっているのでしょうか。 特に対訳の名手でもある彼なので、その詞には興味があります。 と思って、調べてみたら、とあるブログに歌詞が引用されているのを発見。 この歌詞をみながら、オリジナルを聴くという贅沢な時間を過ごしてしまいました。 原曲は情緒あふれるフィドルを擁した素朴なワルツで、アルバムのなかでも抜群の存在感を示す出来となっています。

  せっかくなので、残り 1 曲のオリジナル「The Bus Stop Song」についても触れておきましょう。 こちらは弾き語りのワルツですが、タイトルからも伺えるとおり、路地裏の埃臭さを感じさせるクセのある仕上がりです。

  Jane Voss の公式サイトによると、彼女は 25 年以来のパートナーとなる Hoyle Osborne とともに音楽活動を続けています。 Janeがギター、Hoyle がラグタイム・ピアノという役割で 1989 年以降 6 枚のアルバムを発表。 この「An Album Of Songs」を含めた全作品が、CD でオンライン販売されています。 2004 年の最新作の「Beyond the Boundaries」には、あの Van Dyke Parks がこんなコメントを寄せていました。
“I had a grand time listening to your CDs in the car. All of it, a perfect antidote to road rage. Your work has great heart soul and incite.“

 

■Jane Voss / An Album Of Songs■

Side-1
Goodbye To My Stepstone
Clinch Mountain Home
Jim Blake’s Message
Bear Creek Blues
A Long Road To Travel alone
Keep In Mind (That I Love You)

Side-2
The Lover’s Return
The House Of The Rising Sun
Standing Behind A Man
The Bus Stop Song
Too Late
Going Home

Recorded at Mike Cogan at Bay Studios, California

Jane Voss
Harry Liedstrand : fiddle
Jeanie McLerie : autoharp, voice
Kate Brislin : voices
Valerie Mindel : voice
Holly Tannen : dulcimer
Gene Tortora : dobro,
Stuart Brotman : bass

Bay Records 207