Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Suni McGrath

2009-03-12 | Christian Music
■Suni McGrath / Childgrove■

  珍しく仕事が早く終わって、少しばかり自分の時間ができた夜に、聴きたくなるようなアルバムです。 部屋の灯りを少し落として、熱いコーヒーを入れておけば、準備万端。あとは、レコードの溝を針がゆっくりとトレースするのを眺めるだけです。 しばらくすると、ここに刻まれた繊細なギターの音色が、癒しとかリラックスといった領域を超えて、スピリチャルな響きに聴こえてくるはずです。

  今日取り上げたのは、クリスチャン・ミュージックにおける 12 弦ギターの名手 Suni McGrath が Adelphi に残した 3 枚のアルバムのうち、ラストとなる作品です。 Suni McGrath のことを知ったのは、比較的最近のことなので、彼のアルバムはこの作品しか聴いたことがありませんが、最近まで知らなかったことを後悔してしまうほど、素晴らしい内容です。 とはいえ、アコースティック・ギターのインストゥルメンタルなので、苦手な人には退屈に感じられるかもしれません。 

  このアルバムは Suni McGrath 名義ですが、もう一人のギタリスト Jack Denlinger の貢献度が非常に高いのが特徴です。 左に Jack、右に Suni が映っているジャケットに、その関係性が良く表れており、二人の共作名義でも発表されていたとしても違和感はありません。 B 面を占める大作「The Lions Of Judah」では、Jack Denlinger がリードをとり、Suni McGrath はセカンド・ギターにまわるといった主役交代が起きているほどです。 さっそくアルバムを振り返ってみることにしましょう。
  アルバムはブリティッシュ・トラッドの「The Star Of Country Down / Childgrove」で幕開け。 Suni のリード、Jack のセカンドによるオーソドックスな演奏が楽しめますが、逆に個性はあまり感じられません。 つづく 2 曲はオリジナル。 「Love Abides」はバロック音楽のような古典的な香りのする気品ある楽曲なのに対し、「Zoe」はリズム感の強調されたポップな仕上がりです。 Gary Davis なる人物の曲「Lo, I’ll Be With You Always」は、ギターの教則本の課題曲のようなメロディとコード進行ですが、リラックスしたムードは満点です。 オリジナルの「The Harvest」は変拍子の難解な楽曲。 つづく「(Jesus Said) I Am The Resurrection」は、このブログでも取り上げたことのある Ray Repp の作品。 訳すと「私は生まれ変わりである」というタイトルが強烈ですが、緩急のある奥深いギターサウンドが堪能できる楽曲となっています。
  B 面はさきほど軽く触れたとおり、22 分の「The Lions Of Judah」1 曲が収録されています。 この曲は、Suni と Jack の夢幻の邂逅とでもいうべきサウンドで、アルバム最大の聴き所と言えるでしょう。 二人のギターの演奏は、見事に息のあったものというわけではなく、たどたどしい一発録りのような危うさをはらんでいますが、そこがかえって魅力となっています。  中盤と後半で 2 箇所ほど Ellen Matthews なる女性のつぶやきにも似たボーカルが挿入され、冗長にならないような工夫が施されているのも評価できるところです。 このような長尺のギター・サウンドは、今ふうに言えば、「チルアウト」なのでしょうが、まさに、その類の音楽の元祖ともいえるアルバムと言えるかもしれません。

  Suni McGrath は、1972 年にこのアルバムを発表した後、長い沈黙に入りました。 その間、何をしていたのかは不明ですが、彼が沈黙から目覚めたのは 2004 年のことです。 32 年のブランクの割にはコンピレーション盤に 1 曲参加しただけというさりげない復活でしたが、翌 2005 年には 7 inch 盤を 1 枚発表しているようです。 この 7 inch 盤というフォーマットに彼の意志を感じたのは僕だけでしょうか。 近い将来、彼の新作が CD ではなく、アナログ盤オンリーで届けられる日が来ることを期待してしまうのです。

 

■Suni McGrath / Childgrove■

Side-1
The Star Of Country Down / Childgrove
Love Abides
Zoe
Lo, I’ll Be With You Always
The Harvest
(Jesus Said) I Am The Resurrection

Side-2
The Lions Of Judah

Produced by Gene Rosenthal for Black Dog Productions
Recorded in March, 1972 at Adelphi Studios

Suni McGrath plays solo six and twelve-string guitar on all pieces, with exceptions of ‘The Star Of Country Down / Childgrove’, where he is joined by Jack Denlinger on
2nd guitar, and ‘The Lions Of Judah’ , on which Jack plays lead, Suni plays 2nd guitar and Ellen Matthews contributes the vocals.

Adelphi Records AD1022