Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Glenn Jenks

2009-03-04 | SSW
■Glenn Jenks / Antidote■

  ボストン出身のラグタイム・ピアノ奏者 Glenn Jenks のデビューアルバムをとりあげてみました。 彼の公式サイトのバイオグラフィーでは、1979 年にファースト・レコーディングを行ったことは書かれていますが、それがこのアルバムであることは明記されていません。 自主制作に近い作品であり、未 CD 化ということもあって、敢えて載せなかったのでしょう。 もしくは、内容がシンガーソングライター的な作品であり、現在の彼の芸風にそぐわないという理由だったかもしれません。 いすれにしても、彼の経歴から完全に消却してしまうには、惜しい作品だと思います。

  さっそく、アルバムをレビューして見ましょう。 オープニングの「Disco Antidote」は凡庸で能天気なポップソング。 タイトル曲ということで期待がたかかったのですが、初めて聴いたときにがっかりしたことを思い出します。 つづく「Optical Illusion」も特徴のないカントリー調。 実は、買った直後は、ここまでで針を上げてしまったことがあり、その先まで進むのに数年を要してしまいました。 ところが、ここからが彼の本領発揮だったのです。 とくに「Cry Away My Design」は A 面のハイライト。 厚みのあるコーラスとメリハリの利いた演奏が楽しめるミディアムですが、円熟味すら感じさせる仕上がりです。 つづく「The Black Preacher」は彼の真骨頂ともいえるラグタイム・ピアノのソロ。 流麗で心地よい演奏が楽しめます。 そして、「I Don’t Know Why (you’re Tuggin’ At The Strings Of My Heart)」では、Glenn Jenks のボーカルは Dr.John のような妖気を漂わせ、そこに合わせてホルンやクラリネットが紛れ込むことで、オールドタイムさを演出しています。

  B 面は、さらに大人びたサウンドが展開されます。 ピアノとストリングスだけの弾き語り「Nantucket Lady」は、悲壮感すら漂う渋いバラード。  つづく「Best Part Of A Deal」はスケール感のあるミディアムで、センスあふれるアレンジも魅力的です。  この名曲が終わると、意外にもギターのインスト「Hot Chestnuts」が登場します。  ギターは、クレジットにもあるので、Glenn Jenks の演奏なのでしょう。  だとしたら、このテクニックとセンスからして、Glenn Jenks は才能あふれるマルチ・プレイヤーだということになります。 おそらく幼少の頃から教育を受けてきたのでしょう。  「Somehow」は、リラックスしたフォーク調の楽曲。  エコーの効いたハープのソロから、田舎の夕暮れのような侘しさがじわっと伝わってきます。  アルバムは予想通り、アップテンポで雑多な感じの「In My Time」で幕を閉じます。  参加ミュージシャンが全員登場し、陽気にハモるといったシーンは、この時代のローカル・アルバムにありがちな気はしますが、そういった予定調和も憎めないところです。

  Glenn Jenks の公式サイトを見ると、メディアや評論家からの賛辞が寄せられています。 何かブログのネタでもないかと探していたところ、そのなかに、Scott Alarik, The Boston Globe と記載されているコメントを発見し、驚きました。  Scott Alarik という名前でピンと来る人は極めて稀だと思いますが、このブログの Swallowtail Records 特集で紹介した SSW と同一人物でしょう。 この特徴的な名前がそう沢山いるとは思えません。  みんなしぶとく生き抜いているんだなあと、変なところで感心してしまいました。

  

■Glenn Jenks / Antidote■

Side-1
Disco Antidote
Optical Illusion
Cry Away My Design
The Black Preacher
I Don’t Know Why (you’re Tuggin’ At The Strings Of My Heart)

Side-2
Nantucket Lady
Best Part Of A Deal
Hot Chestnuts
Somehow
In My Time

Arranged and produced by Glenn Jenks
Recorded at Intermedia Sound, Boston , Mass.

Glenn Jenks : guitar, keyboards, vocals
Bob Stuart : guitar, vocals
Nick Apollonio : guitar, banjo, fiddle, vocals
Chief Kubicek : drums
Klondike Koehler : bass
Dave Robinson : electric guitar, harp. Clarinet
Uncle Al Scheeren : trombone

Bonnie Banks BB 101