Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Benny Hester

2008-02-03 | SSW
■Benny Hester / Benny…■

 クリスチャン・ミュージックの世界で今も現役で活動している Benny Hester が1972 年に発表したファーストアルバムを取り上げてみました。 外面からは、Benny としか分からないので、このアルバムが Benny Hester というミュージシャンのものだということは買った後に判明しました。 このアルバム、ジャケットからはアシッド・フォークの匂いがしますが、サウンドはどちらかというとドリーミーなポップテイストの入ったフォークといったところです。 アルバムの曲名や内容からは、さほど宗教色は濃くないように感じますので、ジャンルは SSW にしています。 1978 年のセカンドは Sparrow からのリリースですので、ここからは明確にクリスチャン系に染まっているのでしょう。

 アルバムは Bubba Poythress の粘っこいギターソロから始まる「Give Your Love Forever」で幕を開けます。 Benny Hester のネコ声のハイトーンのせいでしょうか、1972 年という時代性だからでしょうか、John Lennon に影響されたサウンドといえます。 つづく「No The End Is Not Near」は、キャッチーなメロディーで覚えやすい曲。 シングルカット向きですが、彼のサウンドとしては代表的な楽曲ではなかったのでしょう。 「Love Never Dies」は、牧歌的なテイストのあるこじんまりしたワルツ。 地味な小曲「The Bridges」につづく「We All Know He’s Comin’」は、オープニングのコーラスからしてクリスチャン系のテイストを感じさせるアルバム唯一のドラマティックな大作。  コーラスに加え、Bubba のギターソロも入り、メリハリの利いたメロディーもあって盛り上がりを見せる曲です。 実はこの曲が 4 分を超える唯一の曲でした。

  B 面の「The Painter」は、ソフトロック風でメロディーの際立った曲。 シングルカット向きだと思ったら、実際にカットされていました。  つづく、「Malcombe」は、クラリネットやストリングスが異国情緒をかもし出す異色な曲。  「What’s Happened To My Friends」は、フルートなどが絡むアップテンポ。 短いながらもカッコよく引き締まっています。  地味なバラード「Please Let This Be So」はあまり印象に残りません。 ラストの「Genevieve」は締めくくりにふさわしく、彼の音楽性が凝縮された楽曲。  上手く表現できませんが、初期の Al Stewart のような幽玄性を感じます。

 こうしてアルバムは 27 分という異様な短さであっという間に終わってしまうのですが、内容としては充実したものだと思います。 このようなレコードが Las Vegas から生み出されたことが不思議でなりません。 そういえば、この Vegas Music International というレーベルも、僕はこのレコードでしか目にしたことがありません。 
 また、このアルバムで不思議なのは豪華なセッション・ミュージシャンの参加です。 このようなマイナーなアルバムに Joe OsbornJerry ScheffJames Burton といった名手が参加しているのです。 ほぼ数日でレコーディングしたのでしょうが、この多忙なメンバーをヴェガスまで連れて行くほど力を入れていたとは想像できないのです。 しかも、James Burton よりも無名の Bubba Poythress の方を重宝し、クレジットでもフィーチャーしているのです。 ここも謎な点ですが、僕はこの Bubba Poythress は偽名で、実は有名なギタリストが契約などの問題で偽名参加しているのではないかと推測しています。 それが誰かの見当がつかないのが弱いところですが。

 さて、Benny Hester は現在もなお活動しています。 Wikipedia によると昨年 16 年ぶりに「Reason To Be」という新作を発表したばかりですが、こうしたミュージシャンが息の長い活動をしているのは嬉しいことです。 

 しかし、今日は久しぶりの大雪でした。 子どもとソリ遊びをしてしまいました。



■Benny Hester / Benny…■

Side-1
Give Your Love Forever
No The End Is Not Near
Love Never Dies
The Bridges
We All Know He’s Comin’

Side-2
The Painter
Malcombe
What’s Happened To My Friends
Please Let This Be So
Genevieve

Produced by Brent Maher

Arranger : Ron Tutt / rhythm tracks , Larry Muhoberac / orchestra
All songs composed by Benny Hester with the exception ‘Malcombe’ co-writer Jim Stanton

Bubba Poythress : all electric guitar
Benny Hester : acoustic guitar
Ron Tutt : drums and percussion instruments
Larry Muhoberac : piano and other keyboard instruments
Glen Hardin : piano
Joe Osborn : bass
Jerry Scheff : bass
James Burton : guitar
Quitman Dennis : flute
Jim Horn : assorted reed instruments

Vegas Music International VMI72001