Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Harbus

2007-06-23 | SSW
■Harbus / Harbus■

  いつ見ても聴きたいという気持ちにさせないジャケットにため息をついてしまうアルバム。 Harbus の唯一のアルバムは、こんなジャケットになってしまったことから、彼の真の姿をとらえた写真は一枚も知られていません。 この横顔からは、相当にしゃがれた声の持ち主かと思いますが、意外にもジェントルでマイルドな声の持ち主だから、レコードは聴いてみないとわかりません。 
  1973 年に Evolution からリリースされたこのアルバムは、スワンプなテイストを感じる場面もありますが、汗臭さのない同時代のシンガーソングライター達に近いものを感じます。 さっそく、アルバムを振り返って見ましょう。

  A 面は、可愛らしいフルートと重みのあるストリングスのコントラストが曲を盛り立てる「Gonna’ Make It This Time」で幕開け。  「While The Daylight Shines」ソウルフルな女性コーラスをバックにしたややファンキーな仕上がり。 音楽の都を渡り歩くタイトルの「Memphis To Nashville」は、カントリー風味。 「Hudson River」は、一気にニューヨークのハドソン河のことを歌った曲。 そもそもこのアルバムのレコーディング地が、ニューヨークというのも意外ですが、この曲はリズムトラックの入らないしっとりしたバラードです。  哀愁を帯びたボーカルが、肌寒そうなハドソン川岸をイメージさせる名曲です。 再び田舎に舞い戻った「Country Song」は、そのまんまのカントリー。 このちょっと曲順は考えものです。

 B 面に移りましょう。 1 曲目の「Songs For Singing」は少年っぽさの残る薫風のような曲。 プロデューサーでもあるNeil Portnow のベースを始めバックの演奏もなかなかです。 やや陰りのある「Bushes And Brambles」は、間奏部のフルートソロが印象的。 つづく「Arizona」は南部の匂いのするカントリー。 Memphis に Nashville に Hudson River ときて Arizona ですから、アメリカ横断ウルトラクイズみたいです。  つづく「Open The Door」は、Dan Fogelberg や Eric Andersen に通じるセンシティブな楽曲。  抑制の利いたストリングス・アレンジが気品あるサウンドに仕上げています。 ラストの「Brother Daniel」は中盤からファンキーさを増し、コーラスや荒削りなギターソロなどバラエティに富んだ展開を見せる曲ですが、ラストとしてはどうかなと思います。 このアルバムを通じて感じるのは、曲の並びが上手くないということです。 もう少しリスナーのことを考えて、バラード系、カントリー系、ファンク系をうまく並び替えたら、もう少し違った印象になったと思います。

  さて、今日の主人公、Neil Harbus のその後をたどってみようとインターネットを検索してみましたが、まったく分かりませんでした。 もちろん、本人の公式ページなどあるはずもなく、跡形もなく消え去ってしまったという印象です。 この Evolution というレーベルには、クラブ系 DJ に人気らしい Dorothea Joyce や、SSW の Stu Nunnery などのアルバムが知られていますが、この 2 人もたった 1 枚しかアルバムを残していません。 よっぽど不遇なミュージシャンが集まってしまったのか、レーベルの魔力が引き寄せた悪運なのかはわかりませんね。 「Evolution=進化」という言葉の響きがむなしく感じられる。 そんなレーベルです。



■Harbus / Harbus■

Side-1
Gonna’ Make It This Time
While The Daylight Shines
Memphis To Nashville
Hudson River
Country Song

Side-2
Songs For Singing
Bushes And Brambles
Arizona
Open The Door
Brother Daniel

All Selections by Neil Harbus
Produced by Neil Portnow & John Miller
Recorded at A&R Recording Studios , New York

Neil Harbus : acoustic guitar & vocals
Neil Portnow : bass
Jim Payne : drums
David Wolfert : acoustic & electric guitar
Marc Freeman : piano &organ
Hank DeVito : pedal steel guitar
Sid Cooper : flute on ‘Brother Daniel’
Jon Charles : vibes
Alexis Guevera : congas
John Miller : piano on ‘Brother Daniel’
Steven Nelson , Amy Hobish , Nina Tax : background vocals
Tasha Thomas , Carl Hall , J.R. Bailey : background vocals

Evolution 3018