Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Overland Stage

2007-05-19 | Christian Music
■Overland Stage / Overland Stage■

 大手の Columbia から 1972 年に発表されたものの、まったく話題にされないまま、35 年も経過してしまったアルバム。 その責任の所在はこのアルバム自身の出来にあるといっては元も子もないので、今回取り上げてみました。
 Overland Stage はノースダコタ州ファーゴ出身の 6人組。 「ファーゴ」といえば、1996 年製作の同名の映画を思い出します。 この映画は、コーエン兄弟が監督した作品の代表作のひとつ。 実際に起こった話に基づいているとか、それ自体ウソであるとかいろんな論評が飛び交っている作品でもあります。

 そんな彼らがレコーディングにやってきたのはお隣ミネソタでもなく、シカゴでもなく西海岸でした。 アルバムは、「To The Park」(シカゴ録音)以外全部が San Francisco の Columbia Studio なのですが、メンバーは荒涼とした故郷の空気感とはずいぶん異なったものを感じたのではないでしょうか。
 アルバムの裏面には「Six Jesus freaks playing rock and roll」で始まる簡単なバンド紹介が記されています。 従って、分類はクリスチャン・ミュージックとしましたが、サウンド的にはスワンプ色の薄い SSW 系フォーク・ロックとなっています。 スワンプ色が薄い理由はギターのあっさり感じとボーカルやコーラスの清涼感によるものでしょう。 また、コンガやフルートが効果的に使用され、時折ユニークなリズムが使用されるなど、一風変わった感触があります。 
乾いたコーラスと叫ぶようなフルートが砂漠をイメージさせる「Cherokee」や、アコースティックなグルーヴ感とフルートがマッチした「It’s Just Life」のような曲が彼らの得意のスタイルだと思いますが、「She Will Leave Me」のようなバラードでは、クリスチャン系ならではの癒しテイストが込められています。

 最もシングル向きと思うのは、メロウな繰り返しが気持ちいい「Don’t You Believe」でしょうか。 とはいえ、ヒットする可能性を微塵も感じないところは、セールスの結果を知っているからだけではありません。 どこをどう切り取っても、売れるファクターが見当たらないのです。 こうした田舎のバンドを、どのような意図をもってメジャー・レーベルが契約し、西海岸にまで連れてレコーディングしたのでしょうか。 その謎を解くべく、プロデューサーの Bob Destocki で検索してみました。 ところが、この人物もあまり多くの作品を手がけていないことがわかりました。 最も有名なところが、人気が下火になっていた(というよりも 1980 年代にアルバムがあったのか、という感じですが) Grand Funk Railroad の 1981 年のライブアルバムという程度です。 少なくとも売れっ子プロデューサーではないことは確信しました。

 そのようなマイナーな風が荒涼とした大地を吹き抜けていくこのアルバム。 もしかして、もう二度と聴かないのかも、と思いながらもレコード棚に戻してしまうのです。

 

■Overland Stage / Overland Stage■

Side-1
Salvation
Cherokee
She Will Leave Me
I’m Beginning To Feel It
Brother Moses

Side-2
To The Park
After You Leave Me
Don’t You Believe
It’s Just Life
Indian

Produced by Bob Destocki

Julian Elofson : congas , vocals
Dave Hanson : drums , vocals
Jim Flint : organ , piano
Steve Babbs : bass
Don Miller : lead guitar
Rick Johnsgard : guitar , flute , vocals

Columbia KE31319