Reflections of Tomorrow

シンガーソングライターを中心に、知られざる未CD化レコードを紹介していくページです

Paul Odette

2007-05-02 | SSW
■Paul Odette / Paul Odette■

 1977 年に発表された Paul Odette の唯一と思われるアルバムです。 Paul Odette に関しては、おそらくカナダのシンガーソングライターであるということ以外の詳細は分かりません。 優しい表情を浮かべるジャケットからはメロウで落ち着きのあるサウンドが想像できるのですが、このアルバム、まさにその通りの内容なのです。

 「All Hands On Board」は、なごみ系のワルツ。 この曲で Paul Odette の全貌がかなり予測できてしまいます。 「Rosalin」という女性へのラブソングに続く「Maritime Bold」はちょっとカリプソっぽいアレンジにジェントルなボーカルが重なる緩めの曲。 そもそも、Paul Odette のボーカルはMOR路線のシンガーにありがちなまろやかさが特徴なので、繊細な表現が得意とか情緒的に盛り上がるというタイプではありません。 これも実は三拍子という「Someone Will Love You Sometime」なんかを聴いていると、そもそもはカントリーの人なのかなと感じてしまいます。 「Thunder Dead Ahead」みたいなアップな曲を聴いていると、Paul Odette がそもそもカントリー系のミュージシャンだということが分かってきます。 ギターの弾き語りの「Midwinter’s Dream」は、リコーダーのソロが流れる中間部の流れが良く出来ています。 この曲だけをとってみれば、Michael Johnson 風に聴こえなくもありません。

 レコードを裏返します。 「Anywhere You Go」は彼にしてはアップなナンバー。 薄くかぶさるシンセのさりげなさにセンスを感じます。 続く「Song Of The Algonkian」は、物語調の曲。 ネットで調べて知ったのですが、オンタリオなど五大湖周辺はアルゴンキアン族という北米先住民が住んでいた地域のようです。 その「アルゴンキアン族の歌」ということで、かなり厳粛な内容に違いありません。 「Nothing You Could Say」は、アコギの弾き語りですが、Paul Odette の曲のなかでは、僕はこうした素朴な曲調が好きです。 「The Band Just Gets Louder Each Night」もしっとりとしたワルツで、どことなくトラッドの香りすら漂います。 ラストの「It’s Not In The Wind」も得意のワルツ。 これで 4 曲目でしょうか。 Paul Odette の十八番ともいえる曲調に慣れてくると、妙に体にフィットしてきます。 このラストの 3 曲はそうした不思議な引き込まれ感覚をかもし出しています。 卓越したセンスや、秀逸なメロディーがあるわけでもないのに、妙に納得してしまう。 そんなアルバムと言えるでしょう。

 しかし、この Paul Odette に関しては、ほとんどネットにひっかかりません。 自主制作盤というほどのマイナー感もないのに、ここまで存在が希薄なアルバムも珍しいですね。 実はこのアルバムは、先日、渋谷のディスクユニオンで 1,000 円くらいで買ったのですが、見かけたとしたらそのくらいの値段なのでしょう。 もう少し、自分の下に置いておきたいと思わせる、当たりでもないがハズレでもないアルバムです。

 

■Paul Odette / Paul Odette■

Side-1
All Hands On Board
Rosalin
Maritime Bold
Someone Will Love You Sometime
Thunder Dead Ahead
Midwinter’s Dream

Side-2
Anywhere You Go
Song Of The Algonkian
Nothing You Could Say
The Band Just Gets Louder Each Night
It’s Not In The Wind

Produced by David Stone and Paul Odette
All Songs written by Paul Odette

Paul Odette : vocals , 6&12 string guitar
David Stone : keyboards
Patrick Gene Chappelle : bass
Carson Morgan : drums and percussion
Nigel Russel : guitar and banjo
Nancy Secksteder : recorder

Parklane Records PR002